HyAS住宅不動産業経営戦略コラム

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住宅・不動産会社の経営と相続

「相続相談」を切り口に自社顧客から潜在案件を発掘

連載でお送りしている本コラム。今回は、賃貸管理部門で「相続」を切り口にオーナーとの付き合い方を変えることで、潜在していた案件の発掘につなげている会社の実例を紹介します。

埼玉県にあるT社は、歴史の長い地域密着の会社で、メインの賃貸管理業では管理戸数が2000を超えるほか、住宅の新築や売買仲介も自社で幅広く手掛けています。オーナーとのつながりを大事にしていて、賃貸管理部門では、定期的なオーナー通信の発行や季節ごとのオーナーを招いたイベントなども長らく行っていました。しかし「相続相談」を前面に出して賃貸管理部門でのオーナーとのかかわり方を変えることで、それまでは出てこなかったような相談が生まれ、リフォームや売買、土地活用などにもつながるようになりました。

同社で始めたこと、変えたことは、主に、

・自社講師で「相続勉強会」を始めた
・相談に来るオーナーには「現状の整理」を提案するようにした
・成果の測り方を変えた

というようなことです。

実は同社の賃貸管理部門では、オーナー向けの勉強会も以前から開催していました。オーナーとの関係を絶やさず、自社での管理を続けていくためです。そしてオーナーに対しては、新しいサービスやアパートのリフォームを提案し、賃貸管理部門には管理戸数の維持とともに付加収入の獲得が求められていました。しかし、勉強会に参加するのはお馴染みのオーナーが多く、また、勉強会はいつも外部の講師を招いて開催していたので、お客様も何か困りごとがあり相談したいときは、その講師のほうに相談します。参加者から「勉強になった」と上々の反応を得られてはいたものの、自社のねらう次のステップへとつなげるには、結局オーナーに対して個別に一から提案しなければなりませんでした。

同社では豊富な顧客資産を活かしてビジネスを拡大するために、賃貸管理部門でのオーナーとの付き合いかたを変えたいと思い、自社講師での「相続勉強会」を始めました。相続について、それまでもオーナーから聞かれることはあったものの、対応の仕方もわからず、深い相談に乗ることはなく、すぐに税理士や弁護士につないで終えてしまっていました。しかし、相続について知識を得て、自社の担当者が講師を務めるようにすると、オーナーは担当者のことを「先生」としたって相談してきてくれるようになりました。

この「先生」という関わり方をできることが大きなポイントです。オーナーからの見られ方は全く変わります。

ただし、相談に来てくれたからと言って、すぐ今までのように自社利益だけを考えたリフォーム提案などをすると、「先生」のイメージは一瞬にして崩れ、すぐに一営業マンのイメージに逆戻りです。

このあと、T社の担当が意識的に変えたのは、提案の内容です。ともすると物売り営業になりがちな個別案件の提案ではなく、まずはオーナーの「現状の整理」を提案するようにしました。オーナーからの相談に対してしっかりと話を聞く場を設け、何に問題を感じているのか、家族の意見はどうなのか、客観的に見た不動産の評価や市場はどうなのかということを整理することを提案します。現状の整理がつき、理想とのギャップがわかると、オーナー自身、何をすべきかが自ずと見えてきます。担当者は相続計画のコーディネーターとなって税理士や弁護士と連携しながらオーナーの悩みに答えていくのです。そうすると、リフォームのほかにも建て替え、土地活用、売却など幅広い案件につながるようになり、確かな手ごたえを感じられるようになりました。

ここまで来て、同社が一番大きく変えたことは、成果の測り方です。今まで賃貸管理部門では管理戸数の維持と付加収入の獲得を求めていましたが、相続相談で一度家族の事情に深く入り込み、コーディネーターとして信頼をされると、オーナーのためを考えて提案した計画はその時が来れば高確率で複数の案件となることを実感しました。新たに求めるようにしたのは、このような「強い信頼関係があり、将来案件につながるオーナー」をいかに増やすかです。

これはまさに顧客資産にもとづいたストックビジネスへの転換です。相続は不動産が動くタイミングなので、不動産のオーナーとしっかり信頼関係を築けていれば、そこから多様な案件が自然と生まれてくることになります。賃貸管理業ではベースとする顧客資産がありますし、オーナーとの距離が比較的近いので、かかわり方を変えさえすればこのビジネスの転換は比較的容易なのではないかと思います。

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