総論賛成、各論反対の「こども保険」、さて財源はどうする?

今日は最近話題の「こども保険」についてです。賛否両論あるようですね。

 

■小泉進次郎氏が旗振り役の「こども保険」とは?

政府は「こども保険」の創設に向けて本腰を入れるようです。
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<教育財源に「こども保険」明記 骨太方針の素案公表>
(2017年6月2日付 日本経済新聞)
『政府は2日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案を公表した。幼児教育を早期に無償化すると明記し、「こども保険」の創設を含めた「人材への投資」を柱に据えた。』

「こども保険」とは、子供が生まれた後にかかる教育費や幼稚園などの子育てにかかる様々な費用を国が負担して、早期に無償化を目指そうというものです。

子供を持つ親に支給されている児童手当の額を増やして、幼児の教育や保育の費用に回してもらうことを想定しています。政府は今回の「骨太の方針」に折り込んで、早ければ来年度の予算に入れ込みたいと考えているようです。

この「こども保険」が注目の集めた理由のひとつは、旗振り役が自民党の小泉進次郎議員であったこともあるかもしれません。「社会全体で未来の日本の担う子供たちを支えていこう」と話す小泉議員は確かにスマートに見えますね。

 

■なぜ「こども保険」が検討されるのか?

「こども保険」の趣旨は、子供を社会全体で育てていこうというものですね。少子化対策であり、子供の格差をなくすための貧困対策でもあります。

周知のとおり、日本は少子化と高齢化が同時に、しかもすごい勢いで進んでいます。
2016年に生まれた子供の数は97万6979人と100万人を割り込みました。これは1899年に統計をとり始めてから初めてのことだそうです。
内閣府の「最悪のシナリオ」によると、2050年には日本の人口は現在の1億2,600万人から8,000万人になるかもしれない。しかもそのうちの4割、約3,000万人以上が65歳以上の高齢者です。その時の現役世代は4000万人あまり・・・。日本は現役世代が高齢者の社会保障や年金を支える「世代間負担方式」をとっていますが、もし本当に内閣府のシナリオ通りなら一人の若者が一人の老人を支えることになりますね。

そうすると、まず年金制度は確実に今の水準を維持することはできません。支給額が減少するだけでなく、支給開始年齢も遅くなっていかざるを得ないでしょう。医療や介護も今のような手厚い制度ではなくなっていると思います。

「子供がいない世帯や子育てが終わっている世代にまで負担させるのか?」という批判がありますが、子供を増やして、支えていくことは、日本の社会制度を維持するためには必要不可欠なことでしょう。少子化は社会全体で向き合っていねばならない課題ですね。

しかし、「日本は本当に少子化に向き合っているのか?」というとまだまだ全然です。
世界に目を向けると、少子化対策に成功しているフランスは、GDPの3%以上の予算を子育て支援に充てているのは有名ですね。日本はなんとGDPのたった0.8%。これは先進国最低レベルです。先進国でもっとも少子・高齢化が進んでいる国にもかかわらず・・・。

 

■さて財源は?

「子供が必要な保育や教育を受けられないリスクを社会全体で支える制度を作り、安心して子供を生み育てていける国にしましょう」ということには世間的にも概ね理解され、広く賛同も得られていると思います。
しかし、報道などを見ていますと、この「こども保険」には反対する人が多いですね。「総論賛成、各論反対」の様相です。

「保険というのに受益者がいない。保険の仕組みではない。」とか「教育は国の仕事ではなく、地方の仕事だ」とか。一番多い批判は、「こども保険は保険といっても実質増税ではないか」というものです。

幼児教育無償化だけでもおよそ1.2兆円の財源が必要とされていますが、その財源をどうするのか、ということですね。民主党政権の目玉政策だった「こども手当」が尻すぼみになったのも、結局のところ財源問題でしたからね。財源は大事です。

議論されている財源確保案は大きく3つです。

1)社会保険料の上乗せ(←これが政府案)
2)教育国債を出す
3)国民負担を増やさずに、今の予算配分を変える

1)社会保険料の上乗せは政府案です。
試案によると、「上乗せされる料率は0.1%くらいから始めて、最終的には0.5%まで上げる。これで1兆7,000億円の財源確保ができる」とのこと。金額的には月200円~500円のくらいの負担なので確かに知れているといえば知れています。しかし、この社会保険料上乗せ案への反対が多いのは、「社会全体で支えると言いながら、結局社会保険料を負担している現役世代の負担が増えるだけではないか」ということです。社会保険料を財源とするなら多くの高齢者は負担から除外されます。つまり、高齢者(受益)と若者(負担)の世代間格差がさらに広がることになりますね。

2)教育国債は、政府内で反対がありました。
「国債は将来必ず償還しないといけないので、これは結局未来の子供たちにツケを回しているだけだ」ということですね。子供からしてみれば、将来自分の税金で返済する教育ローンを押し付けられたようなものですからね。ただ、教育ほど確実なリターンが計算できるものもない、というのは事実です。子供は納税者になるし、年金制度の担い手にもなってくれます。国債利回りよりも投資効率が高いのは間違いないでしょう。しかし、それでもすでに1,000兆円を超えている国債をさらに増やすという政策はかなり難易度が高い。というか、ほぼ無理でしょうね。

3)予算配分を変えることが一番よく見えます。国民の追加負担がないですからね。でもこれも現実的には無理でしょうね。「ではどこの予算を削るのか?」という話になって、各省庁入り乱れて・・・、もうとてもではないですが収拾がつかないでしょうね。

 

■日本の将来のために広く皆で負担するという合意が必要

日本は、なぜフランスのように少子化対策や教育への財政支出が出来ないのでしょうか?
それは、すでに日本の総債務残高がGDP比で230%にまで拡大している上に、さらに今後も医療費や介護費などの高齢化にともなって社会保障関連の費用が増え続けるからです。誤解を恐れずに言うと、高齢者にお金がかかりすぎているのです。そこまで高齢化が進んでいるということです。財政的にはとても子供にお金をかける余裕がないのです。

高齢者に対する今の社会保障関連のコストを削減することは現実にはとても難しいことです。こんなことを決断して主導できる政治家はまずいないでしょう。選挙で不利になりますからね。しかし、これ以上現役世代に負担をかけることができないのも現実。
未来の子供たちを、恒久的に、すべての国民全員で支えていこうというのなら、最終的に行き着くところは消費税財源しかないということになるのではないでしょうか。

10%への増税が予定されている消費税の行き先はすでに決まっている、といいますが「医療以外で優先順位が高いのは子育てと教育である」、という国民的合意を取って分配を見直すのが良いのではないかと思います。

個人的には「子供たちにもっとお金を回さないと日本の未来はない」と考えているので、「子育て・教育に使う」ということをはっきりさせるのならさらなる消費増税もやむなしと思っています。

私はもう約半世紀生きていますのでどちらかというと高齢者側に近いのですが、これから高齢者になる世代でも「この先、現役世代だけに負担はさせるのは無理がある」と思っている人は結構多いのではないかな、と思いますけどね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

2017年6月6日 火曜日 16:11 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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