住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 ビジョナリー経営

時代と社会に必要とされる企業を目指して 山口県・安成工務店

時代と社会に必要とされる企業を目指して
あるべき社会を建設会社の立場で実現するために

株式会社安成工務店
代表取締役社長 安成 信次 様

公共工事は仕事の出来栄えが50点でも100点でも評価は同じ。むしろ政治的な思惑で指名すら影響を受ける。地域でTOP企業であった安成工務店は、政治的な迫害を受け、指名業者から意図的に排除される経験を35年前に受けた。「こんな世界では生きていけない。実力で評価される民間の世界で生きて行く。」と決意し、昭和59年から、建設業として民間分野で生きると決め、本社を下関市に移転し、再スタートを切った。

当時の安成工務店は、一生懸命、真面目にいい仕事をする。それ以外は何もない会社だったと安成社長は振り返る。
「あそこに依頼したい。安成で建てたい。あそこが一番いい建物を建ててくれる」というブランドをいかにつくるか。そのためのブランド戦略をどう位置づけるか?自社の技術力、設計力、そしてお客様に満足を頂き、社会から必要とされるにはどうするか?
企画・開発・設計・施工の一貫体制を目指す建設会社としての再スタートから現在までの35年間を安成社長に振り返っていただきました。

「環境共生住宅」との出会いと商品化の道のり、ぶれない思い

民間で生きると決め、自社設計施工による民間工事での確立を目指したものの、その「思い」以外には何もなく、一生懸命良い仕事をします。私たちにお任せください。と営業しながら、輸入ツーバイフォー住宅を手掛けたり、大手ハウスメーカーの地域ディーラーにチャレンジしたりと「フラフラ」していました。

その状況を一気に変えたのがOMソーラーハウスを考案された東京芸大名誉教授の奥村先生との出会いでした。事業説明会に参加し、最初の1時間でその魅力に確信を見出し、休憩時間には加盟を決意し申し込みをしたことを覚えています。まさに電光石火です。出会いの縁とチャンスをつかむ絶妙なタイミングだったといえます。まさにこの奥村先生から教えられた「環境共生思想」との出会いが、現在のデコス事業や林産地連携の家づくりにつながる安成工務店の「尖った」独自ポジションを作った礎であると思っています。

最初の設計社員が入社した昭和58年から35年経った現在、153名の社員のうち33名が設計、工事管理が47名、合わせて80名、53%が技術社員という社員構成となりました。注文住宅では100%、一般建築でも95%が自社設計で、目指していたアーキテクト・ビルダー(コンストラクター)に一歩近づいたのではないか?と自負しています。
建築の分野ではこれまで医院・病院で111件、介護福祉施設で45件と、特に医療介護施設で大きな実績を誇っています。
また、呼吸する木の家の良さを学術的に追及するたに、九州大学の農学部と建築学部の2か所で2つの共同研究を進めています。すべては、蔑ろにされがちな、自然素材で家を作ること、手作りで家をつくることの価値を追求するライフワークでもあります。

理想の地域の暮らし、住まい方、営みを再構築したい。という思い

現在は、全国どこでも同じような家が建ち並び、同じような郊外店舗の街並みを見かけます。戦後、日本は高度成長を遂げ、人々の暮らしもすべてにおいて様変わりました。アメリカナイズされた嗜好のもとで、無秩序な看板、外観の材質、色など地域の特徴のない美しくない街並みが形成されました。
いつから地域の個性を失った街並みだらけになったのでしょうか?材料も技術も乏しかったひと昔前の集落のほうが美しいと感じるのはなぜでしょうか?材料は画一化したが、デザインに一貫性が無いからかもしれません。

建築を志す会社として、目指すべきは美しい街並づくりであり、そこに住む人たちのコミュニティの再生であると考えます。もし、これから50年のちに、地方都市の町並みが再構築され、美しくコミュニティ溢れた姿を取り戻すとするならば、そこに大きく中心的にかかわる安成工務店でありたいのです。
今年取りまとめた、CSVレポート2016(共有価値の創造)にある安成工務店の環境活動や社会活動もそこに根っこがあるのです。

具体的な取り組みの一つとしてエコタウン開発

一つ一つの家づくりだけではなく、チャンスがあれば数戸から数十戸の集住開発にチャレンジしています。平成18年に40区画のエコタウン計画がスタートしました。山口県がNEDOの採択を受け、木質ペレットの製造から利活用までの一貫したプロジェクトの一部に参加し、ペレットを燃料とした地域集中冷暖房にチャレンジしました。建築・環境協定を締結し、雨水利用やコミュニティ作りとしての「エコ畑」やシンボルツリーを配置し、街路に開かれたオープンな外構計画に統一することで一定の評価を受けることが出来ました。
来年計画している22区画の「綾羅木エコタウン」では同様の外構計画に加え、建物躯体の性能を上げ、屋根に一定の太陽光発電を搭載することで、エネルギー自給エコタウンにチャレンジします。
これからも、チャンスを得ながら真に良質な開発を行っていく予定です。

職人や建設業が「評価される」時代をつくりたい。安成社長が描く新・建設業

建設業は3Kという言葉に表されるように、汚く、勤務環境も厳しく、将来の夢も持ちにくい、もっと言えば尊敬されることの少ない業種とされています。当然、そんな産業に入る若い担い手は少なく、厳しい産業構造の中、悪循環が続きます。悪循環を断ち切り、「評価される建設産業」に戻らなくてはならないと考えています。ものを作る職人が評価される時代に戻らなくてはならないのです。

私は常々「新・建設業」という言葉を使って、地域と共生する建設産業の在り方について社員間の共有をしています。私が言う「新・建設業」は、単なる請負業態を脱却し、技術を磨き、企画・開発・設計・施工・管理までのすべての業態を一貫して目指す新たな建設業です。
新・建設業たる企業は、より良い社会を建設の立場から形作るために、大義を掲げ、社会の構造改革にチャレンジしなくてなりません。
あるべき暮らし、家づくりを追い求め、お客様を幸せにすることに全力を傾け、地域の街並みが美しくなることを目指し、お客様のビジネスの成功に総合的に知恵をだす。そんな仕事を高い次元で実行することで、働き甲斐、生きがいを社員や協力業者が共有でき、結果、尊敬される建設業人となる。「規模」と「成長」はチャンス掴む要素でもあります。今後もCSV(共有価値の創造)を目指して経営をして行きたいと考えています。

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