契約棟数を上げるためには、「まだ先客」から契約を取る/創刊号 2009/7

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見込み客が減少する中、営業マンの数を増やすことなく、戸建住宅の販売棟数を順調に伸ばしている工務店(A社)があります。A社の営業マンの分析をしてみると、大半の営業マンの契約率が上がっているということがわかりました。さらに詳細を分析すると、初回面談からのアポ取得率が倍増していました。A社の取締役営業部長に、「他社ではただでさえ見込み客が減っている中、競合が増えて契約率も下がってしまい、たいへんだという話をよく聞きますが」と問いかけをしたところ、競合はむしろ減っているとのことでした。
この取締役営業部長の話をきちんと分析すると、以下のようになります。
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図の見込み客ランクマトリックスの説明からになりますが、競合が排除され、建築意欲が高まっている状態の「ゾーン(3)」のお客様が最も自社で契約になるお客様ということになります。「ゾーン(4)」は建築意欲は高いが競合に負けている状態なので、短期で他決となる可能性が高いお客様です。「ゾーン(1)」「ゾーン(2)」は建築意欲が高くないので、通常「まだ先客」や、心ない営業マンによっては「冷やかし客」と呼ばれている層で、このゾーンのお客様はどの工務店も真剣に追いかけていません。
まず、「見込み客が減っている」と言われている最近の状況をこのマトリックスで言うと、(1)(2)のゾーンに入るお客様の比率が高まり、(3)(4)のお客様の数が少なくなっているという状態です。各工務店の営業マンは少なくなった(3)(4)のお客様を少しでも(4)に持ち込み、自社の契約に繋げようと努力します。ここに激しい競合が生まれるのです。そもそも(3)(4)に上がってくるお客様の数自体が減っているわけですから、当然契約数は落ち込みを示すことになりますし、契約率も上がりません。

さて、A社の営業マンはどういった営業をしているのでしょうか?

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このマトリックスで言うと、そのまま従来の接客をしていたら(1)(2)のゾーンに止まってしまうお客様を、高確率で(3)のゾーンに引き上げるということをやっています。具体的に言うと、初回の面談で、高確率でアポを取って、競合が入り込む前に建築意欲を醸成しつつ、相談役として自分自身のファンを作っていくことで、その後競合が入ってきても有利に折衝を進め、競合負けも最小限に抑えるという流れになります。
この方法はもともとA社の取締役営業部長が以前からやってきた手法で、これを全体の営業マンができるように、システム化し教育訓練することで、精鋭部隊を作り上げられました。A社の取締役営業部長が言うには、「他社が捨てているお客様が一番おいしいんですよ」とのことです。確かに、多くの工務店では、実際に本気で追客しているのは入手した顧客リストのほんの一部のお客様で、ある程度、自発的あるいは他社の働きかけによって建築意欲が高まっているお客様だけなのではないでしょうか。

一般的な営業マンは、自社の住宅商品を説明し、うまくアンケートを書かせ、個人情報を収集し、ヒアリングという名のもと、強引な聞き込みをし、敷地調査・プラン提案や土地提案のアポを取ろうと一生懸命になっています。建築意欲の高くないお客様が多いという前提で考えた時に、このような接客はどういった効果をもたらすでしょうか?結果は明らかで、売り込みを怖がって、お客様はどんどんその会社を避けることになります。この状態を見極めという表現で、「まだ先客」「中長期客」と分類してしまうのです。
そして、初回の面談の段階で、きちんとランクアップできなかったお客様に対し、営業マンは優先順位を下げてしまいます。いざ困ったときに、机の中からアンケートを取りだしてきて、「中長期客フォロー」という掛け声の下、適当な接触を図っても、そう簡単に成果が出るものではありません。

さて、それでは、「中長期客」「まだ先客」と言われているお客様の本当の気持ちはどうなのでしょうか?

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