購入後に価格が上がる家の条件とは

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省エネルギー対策とこれからの街づくり

一定の省エネルギー基準をクリアした住宅に与えられる住宅エコポイント制度は、今年の7月末に当初の計画の5か月前倒しで終了しました。このことは、「環境対応住宅の普及」という本制度の目的が予測よりも早期に達成されたことを意味しています。また、平成23年度木のいえ整備促進事業(長期優良住宅普及促進事業)の第2回補助金交付申請受付も9月末をもって終了しました。多くの住宅会社では、この制度の後押しを受けて、自社住宅商品の長期優良住宅対応が大幅に進んだものと考えられます。

消費者の観点でみてみますと、9月19日の日経新聞の記事に、『省エネルギー基準を守って住宅を建築すると、コストが通常より1割前後高くなるため、基準を満たす新築住宅は全体の4割弱にとどまる』との調査結果が報道されました。このことは、住宅購入者の環境に対する関心は高まったものの、まだコスト面や性能面での課題があるため、十分には普及していないという現状があらわれていると言えるでしょう。

このような環境のもと、国土交通省は、住宅を含むすべての新築建築物に対し、省エネルギー基準を満たすことを義務づける方針を打ち出しました。省エネ基準を定める省エネ法を2013年中にも改正する方針で、まずは税制などの優遇から始め、段階を経て2020年頃までに義務化を開始するという計画を発表しています。我が国の省エネルギー基準は、欧米と比較すると基準が緩いため、今回の改正は、大変注目されるところです。

環境先進国であるEU各国では、将来にわたるエネルギー消費量の目標基準値が段階的に定められており、例えば寒冷地に位置する国では、2021年までに全ての新築建築物がその値をゼロにすること=「ゼロ・エネルギー建物」の実現が求められています。

私たちが、本当に持続可能な低炭素循環型社会を実現しようとするならば、更に一歩踏み込んだ取り組みが必要と言えそうです。

エネルギーパス

ドイツやヨーロッパの省エネルギー対策といいますと、EUで導入されている『エネルギーパス』について、HyAS View vol.4号にて紹介しておりますが、ここでもう一度、別の角度から見ておきたいと思います。

EUの『エネルギーパス』とは、冷暖房・除湿・給湯・照明に必要なエネルギーの消費量を、一次エネルギー量及びCO2発生量で測るもので、建物の燃費を見える化したツールのことです。

例えばドイツでは、不動産売買や賃貸の取引をする場合、売主や貸主は建築物のエネルギーパスを売主や借主に示すことが義務付けられています。建物の燃費が不動産の流通価格に影響を与えているというわけです。

日本では、2010年に石川県の県庁舎建設の際に、国内初めてのエネルギーパスが発行された事例があります。そして今年、「日本版エネルギーパス」を発行する機関として、一般社団法人エネルギーパス協会が設立され、最初の取り組みとして、公庫仕様とドイツ基準仕様の2種類の実験住宅にエネルギーパスが発行されたところです。

ちなみに現在の「日本版エネルギーパス」で評価されるものは、室内を一定温度(夏期27℃、冬季18℃)に保つために必要となる冷暖房エネルギーの量となっています。これは建物外皮の性能によって算定された値となります。

エネルギーパス以外では、建築物の性能と持続可能性を査定する制度として、CASBEEという認証基準があります。エネルギーパスに比べるとこちらはご存じの方も多いことと思いますが、グリーンビルディング認証プログラムと言われる評価システムのひとつで、アジア・ヨーロッパ各国でそれぞれに独自の制度が設けられています。

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