省エネルギー基準見直し案の概要について

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住宅の省エネ基準適合義務化に向けて、国土交通省・経済産業省の合同審議会は8月21日、省エネルギー基準の見直し原案を提示しました。見直し案には軸となる2つのポイントがありますが、まずは断熱性能の評価を従来の熱損失係数=Q値(W/㎡・K)ではなく、外皮平均熱貫流率=平均U値(W/㎡・K)を指標として行うことです。求められる断熱性能については、これまでと変わらず据え置きになりました。2つ目のポイントは、住宅内の設備も含めた一次エネルギー消費量も省エネ性能評価の対象としたことです。細かく見ていきますと、省エネ対策として「太陽光発電やコージェネ発電」「日射遮蔽と取得」「通風利用」「躯体蓄熱」「熱交換換気」等も考慮する方針があることと、日射遮蔽係数μ値の基準適用エリアから、寒冷地域(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ地域)が外されるという改善もなされています。これらの内容からは、住宅をより総合的に評価しようという動きが見られます。

外皮平均熱貫流率(平均U値)について

さて、単なる表現方法の見直しとも言われている断熱性能の評価指標ですが、これについて少し考察してみたいと思います。現行のQ 値は、換気による熱損失を含めた建物から逃げる熱総量(W/K)を延べ床面積(㎡)で割った値です。一方、見直し案の平均U 値は換気による熱損失を含まない、建物から逃げる熱総量(W/K)を、外皮総面積(㎡)で割った値になります。

どちらも建物の断熱性能を表す指標には間違いないのですが、その結果にはどのような違いが表れるのでしょうか。違いに影響する要素1つ目として、換気による熱損失考慮の有無があります。考慮するQ値評価のときは、熱交換率の良い換気システムを導入すると、Q値が下がるので、第三種換気システムを導入したときと比べて、あたかも断熱性能のよい家のような評価になります。一方、U値評価ですと換気による影響を受けないので、どんなに高効率な換気システムをいれようと、U値の計算結果には響きません。躯体の断熱性能をより正当に評価しているのはU値であることがわかると思います。

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