ソエナ-平成26年12月12日(金)

不動産対策は一長一短
収益性、将来性…プロと一緒に考えて

不動産はとてもやっかいな相続財産であるものの、73ページで説明したように、現金よりも相続税を抑えるメリットがあるのも事実。不動産をめぐる相続トラブルは、分割方法も含め事前に何の対策もしていなかったことが原因になるので、元気なうちに対策を考えよう。

ただし、不動産の相続相談コンサルタンティング会社「ハイアス・アンド・カンパニー」顧問の山本嘉人さんは「土地を何に使えばいいのかはケース・バイ・ケース。よかれと思って行った不動産活用が家族崩壊につながったケースもあります」と警鐘を鳴らす。主な不動産対策を紹介するが、実行する前はプロに相談し、熟慮を忘れずに。

 ■ノリスケに土地を貸す

   ○メリット

    土地を子孫に残せる
    相続税対策になる

   ×デメリット

    収益性が無い
    分割対策にならない

相続に向けて考えられる対策のひとつが人に土地を貸してしまうこと。路線価には借地割合があり、相続税の評価額を計算する際、人に貸していると路線価よりも低く評価できる。借地権割合は路線価図の評価額の後ろにアルファベットで示されている。

78ページの磯野家の路線価図を例に見ると、「480C」との記載のCの部分が借地権割合。この場合の借地権割合は60%になる。土地を貸している場合の相続税評価額は、路線価×面積×(1-0.6)で計算する。例えば、この土地をノリスケに貸して、そこにノリスケが家を建てたとすると、磯野家の土地の評価額は約4900万円になる。

このように、相続税のことだけを考えれば土地を貸すことは有効。しかし、土地の権利は残っても磯野家は住む場所を失う。

土地の貸し借りは当事者間の合意で決まるもので、ノリスケが地代として月に30万円も払ってくれれば、そのカネで新たなマンションでも借りればいい。しかし、そんなことは常識的に考えればあり得なさそう。また、相続時の分割問題は手つかずのまま残る。

 ■売却してタワマン購入

   ○メリット

    相続税対策になる
    複数物件購入で分割対策

   ×デメリット

    土地がなくなる
    将来が見通しにくい

最近、積極的に宣伝されているのが、自宅を売却してタワーマンションを購入する方法。複数人で所有するマンションは、それぞれの所有者に「持分割合」が設定されている。持分割合は登記薄謄本などで確認できる。

マンションの場合、相続税評価額は、土地の評価額や建物の評価額に持分割合をかけて計算する。つまり、持分割合が小さければ小さいほど、言い換えれば、建物が高ければ高いほど土地の持分割合は小さくなるので、相続税評価額は低くなる。

また、タワーマンションは人気が高く、中古になっても価格はさほど落ちないうえに、賃貸に回しても空室リスクが少ないとされている。安定した資産としてはもってこいというわけだ。

磯野家でみてみると、1次相続で波兵の全資産を相続したフネが自宅を1億8000万円で売却。これを原資に、タワーマンションの6000万円の部屋3部屋を購入し、1部屋でカツオ、ワカメと暮らし、1部屋をサザエに貸し、残りの1部屋を一般賃貸に回したとする。

こうすれば、フネには2部屋分の賃貸収入があり生活は安定。さらに、フネが死亡した際はサザエ、カツオ、ワカメが1部屋ずつ相続すれば分割問題も解決する。

結構うまい手なのだが、問題はこの先もタワーマンションの人気が続くか誰にも分からないことだ。マンションを所有すれば固定資産税などの税金がかかるほか、共益費や修繕積立金も払わなければならない。これに見合った資産価値を持ち続けていられるかは、神のみぞ知る―。

■賃貸経営

  ○メリット

   相続税対策になる
   収益性が高い

  ×デメリット

   将来が見通しにくい
   分割対策にならない

土地を残したまま運用する手がアパート・マンション経営。賃貸物件を建てた場合、借地権のほかに借家権も設定されるので、マイホームを建てているよりも相続税評価額を抑えられる。固定資産税と都市計画税も低くなる。家賃収入も見込める。土地を売ってマンションの部屋を購入するのと違い、土地を子孫に残せるのも魅力だ。

ただ、問題もある。賃貸物件の建設費をどうやって捻出するか。ある税理士は「手元の資金が少なく、多額の借り入れをしなければならないようなら、賃貸経営はお勧めできません」と話す。

なぜ自己資金が少ないと勧められないかといえば、空室リスクがある。机上の空論で家賃収入を計算しても、実際に入居者がいるかは別問題。「東京23区内でも、駅から徒歩10分以上の場所だと入居者を探すのが難しくなります」(不動産専門家)というように、入居者の確保は立地に左右される。さらに、人口減少時代を迎えている日本で、入居者が安定的に確保できるという保証はどこにもない。

このように不動産対策はどれも一長一短。山本さんは「不動産は持っているだけでも固定資産税などがかかり、有効活用をしないと税負担ばかり重くなってしまうこともあります。売ってしまうのもひとつの手なので、さまざまなケースを想定して考えてください」と話している。

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