ハイアス総研

ハイアス総研レポートNo.17
「競合に勝てる会社」になるために、
覚えておきたいキーワードCX(カスタマー・エクスペリエンス:顧客経験価値)

なぜCXがキーワードなのか
それは、数字競争「だけ」では差別化が難しい時代になるから

一般的に、機能・性能・価格といった数値で比較可能かつ合理的な価値はコモディティ化(同質化)しやすいと言われます。例えば、住宅性能表示という基準では一般的な分譲住宅も高級な注文住宅も消費者には「性能の等級は同じ」としか見えません。事実その基準においては両方とも満たしていると考えられてしまいます。また、家電製品や自動車にあるように、調理機能の多さ、エンジンの馬力など数値で示されるものは競争相手にベンチマーキングされ、すぐに上回られてしまう場面は読者の皆様もご存知の通りです。

もちろん、機能・性能・価格はお客様にとって大事な判断材料であることは間違いないですし、国が決めた最低基準のクリアではなく、より高水準な基準を上回る良品の供給は大事なことです。しかし消費者からどう見えるか? を考えると、「それ(機能・性能・価格)だけ」では自社の特徴を出したり他社と差別化したりすることが難しい現実もあるということです。

差別化が難しいどころか
CXが低いと同じ商品でも「選ばれなくなる」時代に

図表1は、既に獲得している市場シェアに応じた競争戦略の提唱など、様々な企業の競争戦略理論で有名なコトラー氏が定義した「顧客の受取価値」という考えをざっくりと表したものです。

「顧客の受取価値」は、商品やサービスが本来提供している機能・性能・価格などで表される価値と商品サービスを提供する過程で顧客が体験した(する)「感情的な価値」、例えば

• 商談の場の雰囲気や匂いや色合いなどを通じて感じる
 心地よさなどの「感覚的な価値」
• 細やかで気が利いている対応がもたらす
 嬉しいとか安心といった「情緒的な価値」
• (この人のおかげで)勉強できた、
 知らないことがわかってよかったといった「知的な価値」

など様々な体験を通じた「感情的な価値」に大きさによって、商品やサービスを受け取る時に得る総合的な価値、すなわち「顧客の受取価値」が上りも下りもするということを示しています。

HyAS View 2020年9月18日 金曜日 10:03

ハイアス総研レポートNo.16
今後はオンライン商談が主流に

5月25日にようやく全都道府県の緊急事態宣言が解除されました。しかしながら依然予断を許さない状況であり、本誌読者の皆様方も、この後の事業推進において慎重かつ適切な対応を行いながら、いかに成果を上げるかを日々お考えではないでしょうか。

このレポートでは、弊社が先般実施した、地域の業況やこの先3ヶ月から半年の見通しに対する対応策や不安の実態などについて調べた「新型コロナウイルスによる事業影響と今後に向けた対応策実施に関する調査」から、「新しい生活様式」ならぬ「新しい“仕事様式”」をふまえた営業活動のヒントを探ります。

HyAS View 2020年7月8日 水曜日 17:47

次世代に残す住宅ストック形成、国民の健康な暮らしの実現には「半歩後退」
説明義務化による賢い消費者の登場をチャンス
〜「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」(社会資本整備審議会 建築分科会建築環境部会)による省エネ基準適合義務化の方向転換をうけて〜

「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」
のポイント

「20年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」という方針がかわり、住宅が大半をしめる小規模建物(300m²未満の小規模住宅・建築物)については「省エネルギー基準への適合を義務化せず」、「建築士が建築主に対し、省エネ基準への適合可否などの説明を義務付ける」と示されました。
その根拠には、「適合している住宅をいまだに60%前後しか提供できていない」、「いまだに基準への適合に対応できない事業者が多数存在」することが挙げられています。

大事なことはルールの有無ではなく「お客様のためにやる」こと

2011(平成23)年に成立した法律をうけ、2020年を待たず自社の省エネルギー基準への適合義務化に対して真面目に取り組んできた事業者にとっては、省エネ基準適合の義務化が見送られたことに失望の声もあるようです。
国が掲げる方針として省エネや国民の健康に関係する基準がないことは問題ではありますが、事業者として「建築主様の財産としての住まい、健康を守る空間としての住まい」を提供することは、適合義務化ルールがあってもなくても変わらない、と私たちハイアス・アンド・カンパニーは考えています。

説明義務により「賢い消費者」は確実に増える高性能住宅がもたらす価値とメリットの「説明力」と「実現力」が求められる

説明が義務となることは、これまで真面目に取り組んでいなかった事業者にとって実は一層苦しくなることが考えられます。「省エネ基準に適合しているかどうか」を必ず説明しなくてはいけないわけですから、これまで以上に住まいの性能次第でランニングコスト、快適性、そしてなにより健康に影響が出ると知っている、高性能な省エネ住宅に関する「知識」と「強い要望」を持った「賢い消費者」が増えます。

一方説明をする側は、設計時の省エネ計算は必須です。していなければ説明できません。国土交通省の資料にある(公社)日本建築士会連合会が実施した建築士へのアンケートでは、建築士の20%程度が「対応が難しい」と答えています(図表2)。別の団体の調査では、中小工務店でも省エネ計算ができない会社が半数近いという調査結果もあります。

ランニングコスト、快適性、そしてなにより健康をもたらすより高性能な商品を準備して勝ち残りを図るべき

国の住宅政策の方針転換があろうとなかろうと、事業者はこれまで通り住まい手に価値と利益をもたらす家づくりのための省エネ性能向上を実現する取り組みを着実に継続するだけです。
住まい手に価値と利益をもたらす家づくりのための省エネ性能向上を実現する取り組みを着実に継続するだけです。住まい手にとって価値と利益をもたらす家づくりを実現するため、省エネ基準やZEH基準の適合クリアレベルではなく、HEAT20が示すG1、G2ほどの高性能な家づくりを実践してきたはずです。もちろん快適性のための気密性能向上も必須です。

(ハイアス総研 矢部)

HyAS View 2019年3月11日 月曜日 13:33

「住宅購入者調査(ハイアス・アンド・カンパニー、2018.06実施)」から
マーケティングの時代へ
住宅産業は本当に消費者の要望に応えられているのか?

調査トピックス)注文住宅も建売住宅も、従来のサービス提供ではお客様の課題感や不安を解決していない

注目1

注文住宅の購入・検討理由は「間取りや内装など、自分の理想が実現できる」が最多、次いで「自分の納得できる家にすることができる」「自分の予算に合わせられる」が続きます。しかし、注文住宅を購入・検討する上での課題として「自由に設計するので金額が高くなる・なりそう」を筆頭に、「決めることが多く、手間がかかる」「知識がないので自分に合った家作りが出来るか自信がない」と続きます。

注目2

建売住宅の購入・検討理由では「価格が明示されている」が最多、次いで「間取りや内装が決まっていることで住んだ際のイメージがわく」「打ち合わせが少なく簡単」が続きます。しかし、建売住宅を購入・検討する上での課題は「間取りや内装が決められており、自分で決められない」「外観が似ている」「できることが少ない」が上位に挙げられます。

縮小の時代だからこそ問われるマーケティング

消費税増税の見込みから起こっている駆け込み後の反動や住宅需要世代の人口減少、年収問題など、この先の住宅建設市場を取り巻く環境は楽観できるものではありません。厳しい環境のもとで将来にわたって勝ち残るためには、顧客をよく見る、よく知る、つまりマーケティングの重要性がクローズアップされる時代に入ることをよく理解しておくことが大切です。
2018年6月から7月にかけて弊社が実施した「住宅購入者調査」の結果を見ると、住宅業界はまだまだマーケティング視点で自らの提供サービスや提供価値を高め ているとは言い難い実態が浮かび上がりました。逆に言えば、消費者が欲しいと思うコト、モノを欲しいように提供するために何ができるか?を考え、変えてゆくことで商売のチャンスを拡大できる状況だということだと考えられます。このレポートが読者の皆様のこの先の提供価値を考え直す契機になれば幸いです。

注目3

すべての住宅購入者に聞いた「大変だったフロー」では、「資金計画」「ローン手続き」「物件探し」「土地探し」が上位に挙がりました。注文住宅購入者に絞って聞くと全体で上位に入った「土地探し」に加え、「間取りや内装の選択」「住宅会社との家作りのための打ち合わせ時間の調整」を挙げています。一方、建売住宅購入者では「物件探し(価格・間取り・デザイン等)」が特に大変だったと感じられているようです。

マーケティングの集積こそが「ブランド構築」
消費者の要望に応える住宅企業であり続けることこそ生き残りの王道

人口や経済規模が右肩上がりの時代には、「良いもの」を創れればそれが評価され特段のプロモーションをしなくても購入者側が選択をしてくれました。しかし時代は変わりました。それだけでも従来のやり方は変えなくてはならないはずなのに、さらに今回の調査のように十分良いサービスが提供できていると思っていたのに、実は消費者はまだ不安に思っているという事実があります。
真のマーケティング発想で事業を進めるには、消費者が望むことを正しく捉え、人材確保や研究開発のための投資制約の中でいかに消費者の望みを叶える事業運営を実現する、そのための経営者の革新的な取り組みと工夫が必須です。そして、消費者の声を聞く姿勢とその声に応える続ける姿勢を持ち、そうした活動を具体的に発信する企業であることで、初めて「ブランド」は構築されます。これから始まる厳しい市場環境のもとで将来にわたって勝ち残るために、地域で確固たるブランドを築きましょう。ハイアスは今後も「そのためのお手伝い」をしてまいります。
調査概要は下記参照。
https://www.hyas.co.jp/corporate/news.php

(ハイアス総研 矢部)

*真のマーケティング発想を実現する住宅会社になるための具体策として、今号ではR+houseとADMをご紹介しています。詳しくは次ページを。

HyAS View 2018年11月30日 金曜日 16:14

欧州の「工務店が取り組む生産性向上」、「CLT×木造建築」の可能性を学び電子政府による「市民ファーストの未来社会」を垣間見る
〜経営研究会特別補講2018 ドイツ・スイス・スウェーデン・エストニア〜

はじめに

弊社が開催する経営研究会では、日頃なかなか得ることのできない新たな知見やこれからの市場において自社を成長に導くヒントを得ることを目的として、海外の現地を視察する「特別補講」を年2回開催しています。
今回2018年7月の視察は、経営研究会修了生を中心に全国から集まった22名とともに、ドイツ・スイス・スウェーデン・エストニアを訪問しました。工務店の生産性向上のための取り組み、最新のCLT・集成材と木造建築の可能性を学ぶとともに、最近各所で注目されているエストニアを訪ね電子政府と呼ばれる「情報のデジタル化とネットワーク形成」による未来型の市民サービスを視察してきました。7月3日から8日間の旅程でお伝えしたい情報は盛り沢山ですが、誌面の限りもありますので今回は3つのトピックスをお伝えします。

視察レポート1
工務店の生産性向上と最新のCLT・集成材事情。

チューリッヒ

今回訪問したのはチューリッヒ南西部ホーホドルフ(Hochdorf)にある工務店、TSCHOOP社のパネル工場 です。同社は雇用90名、見習い14名の100名規模の工務店で、主に大型木造建築のフレームとパネルを作っているそうです。
今回の視察で目を引いたことの一つは、接着剤を使わない集成パネルの製造です。木製のボルト(直径20mm、長さ600mmの棒)で板材を繋ぎパネル化します。そのパネルは木造建築の外壁材などに利用されるそうです。接着剤=化学合成物質を使わない環境配慮型の建材が普及モデルとして利用されていることは注目です。
もう一つのポイントは、TSCHOOP社のパネル工場で導入されていたパネルや構造材等を高精度で製造する設備です。難しい形状の加工を要する多品種・複雑な形状の製造において、掘削/切断/ねじれ加工/ビス打ちなど多様な工程をデータ入力通りに行うMC(マシニングセンター)です。設備の導入で自社の受けた工事に必要なパネルや部材の供給における生産性を高める点は、今後日本の地域工務店でも導入の検討が避けられない規格型住宅を想定した場合、大変参考になる視察でした。

視察レポート2
木造高層住宅の視察

チューリッヒ、ストックホルム

元々はチューリッヒ市街地の工業団地として使われていた地区にあった巨大な物流倉庫跡地を住宅地に用途転換(再開発)したエリアに建てられた木造高層住宅。プロジェクトの特徴は木造大型建築を中心に再開発された点です。階段室だけは避難経路確保の観点から「PCの筒」構造ですがそれ以外はすべて木軸+木製パネルを使った高層住宅です。外観から見える構造はパターン化されていますが、部屋タイプや住戸の大きさは多様な提供をしているそうです。またパッシブ発想で住棟前の自転車置き場をグリーンカーテンの役割を兼ねさせるなど団地内の緑化も特徴的でした。

ストックホルムでも木造中高層住宅を視察しました。ボクヘルム社という木造中高層建物しか建てないというディベロッパーによる8F建ての集合賃貸住宅で、構造材、壁パネルは全てCLT(そのCLTもスウェーデン唯一のCLT製造メーカー・マーティンソンズ社の建材)を用いて建てられています。1990年半ばの法改正で木造中高層の建築が可能になったことでこのようなプロジェクトが増え始めたそうです。建築コストは単純費用ではRC造の方が安いが、壁材パネルなど「プレハブ化」が進み現場打ちのRC造に比べて工期が短かく、回収開始の早期化、その結果として回収総額が上がるという点が加味されRC造と木造の建築コストはイコールである、という考え方で木造大型建築の普及が進んでいるそうです。

視察レポート3
電子政府による市民ファーストの未来型行政サービス。

エストニア

1918年に独立後、旧ソ連やドイツに統治され1991年に再び独立を果たしたエストニア。1997年に城壁内 エリアが世界遺産登録を受け、観光資源として外貨を稼ぎながら、官民様々な主体が持つ情報のデジタル化を推進、さらに2001年からはX-roadというインフラでデジタル化された情報を連携・連結させ、社会生活上の恩恵やビジネス上の利益を市民に与える電子政府(e-Government)が特徴の国です。ちなみにX-roadで は900の政府機関の情報が連結できる状態になっていて、それを52,000の民間組織が利用できる状態で、今 では行政提供するサービスの99%の手続きはonlineで完結できる状態だそうです。
その前提となる国民の電子IDは日常生活に組み込まれ、例えばEU内での旅行ではパスポートを代替する機能を持ち、運転免許証としても使われ、あるいは本人許可があれば病院での健診履歴や投薬情報を他の病院が事前に見ることも可能になるとか、もっと身近な例ではスーパーでの買い物ポイントもこのカードに付与記録されるそうです。
日本でも未来のいつかのタイミングで書類やわざわざ出かけなくても取引が進む市場が生まれるかもしれません。そういう時代の変化を見据えてその時自分の会社の将来像を考える意味でも今回の視察は有意義な機会となりました。

(矢部)

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HyAS View 2018年9月6日 木曜日 9:50

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