戸建賃貸の成功・失敗と、今後の戸建賃貸戦略/創刊号 2009/7

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これだけでも市場成長の裏付けとしては十分で、見込み客となる土地所有者の数が多く、かつ、“入居者の立場から見た需給ギャップ”が見込み客への有効な説得材料になることがわかります。ここにコストコントロールがなされた商品をうまく投入することで、有望事業として立ち上がるのです。しかも、注文住宅の分野では、常に数社、場合によっては、10社近くの競合が付いて回りますが、戸建賃貸の場合は、ほとんど競合することなく、受注することができます。同エリアで注文住宅をやっている工務店の数は何百社もあり、そして各工務店やコンサルタントが何十年も注文住宅の営業方法について研究をし続けてきました。それに対して戸建賃貸を展開している会社は片手で数えるほどしかないわけですから、競合が少ないのも当然のことなのです。
まだ成長期の初期ということもあって数は多くはありませんが、上記のような理由で、新しい後発の戸建賃貸ネットワークが立ち上がったり、全国各地で戸建賃貸分野へ参入する企業が見受けられるようになってきました。
では、そのような参入企業の受注実績はどうでしょうか。残念ながら、本当の意味で成果を出している企業はごくわずかで、あまり実績が出ていないというのが実態です。この状況を見て、戸建賃貸市場に対して疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしながら、市場性は上記のとおりたいへん魅力的です。市場性の問題ではなく、実績が上がらない会社には、実績が上がらなかった理由があるということなのです。

最も多い失敗事例の1つとして、住宅事業と同じような感覚で事業を展開してしまっているケースが挙げられます。モデルハウスを作り、チラシを打って集客し、展示場接客をして追客をするといった方法です。戸建賃貸分野はまだ立ち上がったばかりなので、夢のマイホームを夢見て、展示場に見に行こうと思っている層はそれほど多くありません。チラシでモデルハウスに呼び込むこと自体、住宅と比較すると難しさがあります。また、注文住宅のモデルハウスは、来場した潜在客に夢を持たせて、「こんな家を建てたいなあ」と感情的な刺激を与えるような仕掛けが数多くありますが、戸建賃貸のモデルハウスは別の目的で使われており、「この戸建賃貸欲しいなあ」と思わせるような仕掛けにはなっていません。賃貸の場合は、建物を欲しがるわけではありませんので、当然ながら接客も、従来の注文住宅の営業のようなやり方ではうまくいかないわけです。
また、もう1つの失敗事例としては、従来の賃貸事業と同じような感覚で事業を展開しているケースです。従来の賃貸営業は、空地調査をし、地主の自宅に飛び込んで顔と名前を売り、長時間掛けて、時には畑仕事を手伝って人間関係を作りながら、建築していただくのを待つという手法が中心です。しかしながら、弊社のこれまでの成功事例・失敗事例を分析すると、戸建賃貸事業を飛び込み営業で成功させること自体が簡単ではないと言えます。その理由は、まず、ターゲットの違いです。戸建賃貸のメインのターゲットは、40代~50代で、決して農家や大地主というわけではないということです。そう考えると、飛び込みではこのターゲットに会う確率が極めて低いと言えます。契約率からの逆算で必要となる面談数を維持しようと思うと、膨大な飛び込み訪問の数が要求されます。

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