長期優良住宅の資産価値とは

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住宅の資産価値がアップする構造

上述したことを図式化してまとめたものが図1です。横軸は時間の経過、縦軸は資産価値を示します。まず底辺より、土地が一定の資産価値を保有しています。土地の資産価値は物価変動により多少上昇すると考えられます。そして、資産価値が右肩上がりに膨らんでいる部分が、「アメニティ」と称される部分です。上述の「周辺の生活利便施設やサービス環境」がこれに当たる部分です。この「アメニティ」こそが、住宅の資産価値を時間の経過に従って押し上げる要因となっています。

住宅の資産価値について~図1~

日本ではまったく異なった意味合いで使用されている言葉ですが、ここでいう「アメニティ」とはイギリスの都市計画の中心的な概念を指します。イギリスでいう「都市計画」とは、まちづくりそのものと言っていいほど幅広く、厳格なルールに基づく制度です。

イギリスの都市計画にはまず、その都市を形成するための長期的なマスタープラン(基本計画)があります。そしてそれを確実に実現するためのアーキテクチュラル・ガイド・ライン(建築設計指針)が設定されます。このガイド・ラインは都市全体の住民が支持する都市計画法にのっとった強制権(計画公権)を背景として、この都市における建築・開発に関するすべての行為を行政的に厳しく監督します。その主体は自治体であり自治会となります。

例えば前述の通り、街区ごとに外壁が明確に統一されており必ず既定の外壁でなければならない、といった規制や、部屋を一つ増やす場合には周囲の景観に影響を与えないか審査を受けなければならない(プランニングパーミッション)、という義務が課せられるほどです。土地も建物も個人の所有物ではありながら、外観の変更等により周辺エリアとの調和を乱すことは絶対に認められないため、マスタープランで描かれた景観がしっかり守られているのです。

マスタープランに沿った景観

都市の形成時に設定されたマスタープランに忠実に準拠した街ができること、そしてそのプランに賛同した人々が集まる事で街が成長し熟成していくことで、住宅の資産価値が上昇していくわけです。

つまり、住宅を所有することは長期的な預金をするよりも確実に個人の資産を守ってくれるため、その住宅をいざというときの資産と考えることができる体制が整っているのです。

人々が購入するものは、物質的には住宅不動産ではありますが、その住宅不動産と不可分な関係にあるのが住環境です。人々が享受しているものは、購入した住宅に限定される閉じた空間ではなく、その住宅を生活の拠点として享受できる生活環境であるといえます。

イギリスでは、住宅はメンテナンスする事で資産価値がアップするという認識のもと、誰もがすすんで家の手入れを行っています。そうして大切に受け継がれているため、築100年近い住宅も多く見られます。

今回訪問させて頂いたイギリス人夫妻の住宅は23年前に購入された中古住宅でした。1937年に建てられたという事なので、現在築73年という物件です。こちらの購入時の価格は17万5千ポンドだったのですが、現在では70万ポンドにまで不動産価値が大きく上昇しているということでした。(図2参照)

住宅の資産価値は上昇する~図2~

長きにわたって快適に居住することができる住宅は、きちんとメンテナンスをすることで、何倍にもその価値がアップします。それが実現する体制が整っているからこそ、厳しい規制のもとでも気持ちよく快適に生活する事ができ、長期優良住宅が当然のごとく根付いているのです。これからの日本が参考とすべき重要なポイントがそこにあるのではないかと思います。

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