地域工務店が生き残る道は-現状の技術レベルで安心できるか?

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地域工務店が生き残る道は~現状の技術レベルで安心できるか?

高気密高断熱住宅だけでは差別化できない

新設着工戸数に占める長期優良住宅の割合は、2010年9月は25.9%となりました。実に4棟に1棟は長期優良住宅です。単なる高気密・高断熱住宅では、差別化できない時代となりました。

「住宅エコポイント」や「フラット35S(優良住宅取得支援制度)」などが長期優良住宅の着工を促進したと考えてよいでしょう。次の潮流を掴むには、国の住宅政策の行方をしっかりと見極めることが必要です。

国は、家庭部門でのCO2削減効果が大きい住宅に注目しており、「住宅・建築物省CO2先導事業」や「環境省エコハウスモデル事業」を推進しています。住宅全体のレベルアップのためには、地域工務店の底上げも必要なため、「GEOパワーシステム」や「OMソーラー」など地域工務店を束ねているグループも選定されています。

住宅に求められている技術は、近年格段にレベルアップしており、地域工務店が単独でノウハウを蓄積するのは困難になっています。市場の成長の方向性は国の政策と密接に関わりあっているので、今後の生き残りには国の政策を踏まえた技術を吸収できるようなグループに参加することが必要でしょう。

数値だけの追及は無意味

省CO2も、数値だけにこだわるのであれば、太陽光発電やCOP(Coefficient Of Performance=成績係数のことで、消費電力に対しての冷却や暖房の能力を示す値)の値が高いエアコンなどを使って達成することもできます。しかし、家の器としての性能が低ければ、室内温度のバラつきが大きく、エアコンの不快な気流を感じるような家となってしまいます。

そもそも太陽光発電やCOPの値が高いエアコンの使用などは他社にも容易にできることなので、差別化にはなりません。地域工務店が差別化できる分野で、省CO2を考える必要があります。そのためにはランニングコストではなく、家の快適性能に焦点を当てるべきです。

「地域の気候」と「家の中の空気の流れ」を考えた設計手法を取り入れれば、省CO2と快適性能を両立させることができるのです。例えば、OMソーラーでは気象庁のアメダスのデータや風配図(ある場所の風向の頻度と平均風速を示したもの)を設計時に活かす手法を確立しています。

地域の気候データを読み込み、屋根の向きや庇の長さを決め、室内の空気の流れを考えて吹抜けなどを設けたプランニングを行います。これにより、夏は室内への日射を防ぎ、春・秋は室内に風を通し、冬は室内へ日射を取り込む、その地域にあった快適な住まいを作ることが可能になります。

将来を見据えると、「快適」から一歩進めて「健康」という観点で住宅を考えることが必要になっています。背景には、国民医療費のGNPに占める割合は1990年頃より急激に上がっていることがあります。国交省はすでに 「健康維持増進住宅研究委員会」を発足させ、この分野の研究を進めています。

室内の健康問題では、特に温度差が問題になります。ISO7730では「上下温度差」がプラスマイナス3度以内が推奨されていますが、暖かい空気は天井付近にたまってしまうため、対流方式の暖房方法ではなかなか達成できません。

そこで注目されているのが、床暖房です。輻射熱を利用した暖房方法であるため、陽だまりにいるような暖かさを実感でき、上下の温度差の問題も解消できます。しかし、快適さや健康では優れている床暖房ですが、ランニングコストが高いことが問題でした。この解決にもOMソーラーがヒントになります。OMソーラーでは、太陽熱で空気を暖めた空気を床下に送り、床暖房に用いるので、ランニングコストが下げられるのです。

まとめ

時代の流れに沿った技術を吸収することは必須ですが、他社の追随や大手の模倣では縮小する住宅市場で生き残ることはできません。消費者に求められるものを、地域工務店の特性が活かせる分野で、他社に先駆けて取り組んでいかなければならないでしょう。

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