P.F.ドラッカーの言う「すでに起こった未来」を観る

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住宅は製品でなく不動産

昨今「ビルダー経営とは何でしょうか?」との質問をしばしば受けることがあります。一度は「ハウスメーカー経営」と「ビルダー経営」の違いを考えてみた方も多いのではないでしょうか。ハウスメーカーはアパレル産業で言うところの「ブランドメーカー」であって、分かりやすく言うと今やアパレル業界で一人勝ちの「ユニクロ」なのです。ブランドメーカーは多くの先端ノウハウやデザインを集約して製品を供給します。量産ということもあり生産性も高い。「文化や流行」もデザインできる。それと同様のことを行っているのがハウスメーカーといって良いでしょう。

顧客がビルダーに対し期待する本質は、腕に自信のあるメンバーの「設計施工技術」なのです。ただし、住設などの新しい技術の目利きもできなくてはなりません。そして、地元での信用を勝ち取っていく地道なメンテ活動。ここまでは当たり前ですが、おそらく見落としているのは「住宅という不動産を使い、町を熟成させていく視点」ではないかと考えています。

現在、その考えを阻害している要因は3つあります。1番目は「建物と土地の分離登記とそれを前提とした業界組織の編成」です。

土地利用の一形態が住宅なのだから一体登記は当然です。用途地域はそのためにあるわけで、この考え方は欧米先進国では常識となっています。2番目は「重層下請け構造と部材の長い販路」です。生産性の改善を阻害している主原因であり、結果的に住宅を高いものにしてしまっています。そして、3番目は、「ポリシーある都市計画」「町の美化方針に合致した建築基準」「街ごとの価値維持を推進する自治会活動」が不十分ということです。

港区白金台の目黒通り 沿いの歩道東京都港区白金台の目黒通り沿いの歩道は、アスファルトからレンガ畳への置き換えが進んでいます(写真)。

欧州の石畳の多くは近年にアスファルトから移行したものが多いということを皆さんはご存知でしょうか?これらは住民の行政参加という民主主義の熟成と共に当然のごとく起こる自治の事象なのです。

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