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住宅不動産の考え方と取り扱いの転換

わが国では、明治以来、民法では土地と建築物をそれぞれ独立した不動産とみなし、不動産登記法においても、独立した不動産とみなして取り扱ってきた。さらに、1965年から始まった住宅建設計画法時代になって、住宅を償却資産とする扱いが始まった。住宅政策もまたGDP最大化を実現する国の経済政策に一翼を担い、居住水準の向上を実現するための建て替え(スクラップ・アンド・ビルド)政策を実施することになった。

都市は、低密度利用から高密度利用へと土地利用を更新し続けるものとする経済優先の考え方が、住宅不動産を取り壊すことを当然視する考え方を導き出した。アレックス・カー著「鬼と犬」(講談社刊)に明らかにされたとおり、第2次世界大戦の戦火を免れた日本の歴史文化を担った都市と住宅と建築とが、経済主義の下に破壊されてきた。

その背景には、日本の都市計画学及び都市計画法において、土地の高層高密度開発をする経済主義を肯定する思想が、都市計画及び土地利用規制の中で、歴史文化を大切にする人文科学的考え方を圧倒し、軽視してきたことがある。しかし、人文科学的にも、社会科学的にも、建築物は土地に定着して、初めてその歴史文化を育て、効用を発揮することが出来るものであることの重さは、否定できない。

同じ土地でも、その土地に建築された建築物により、土地自体の歴史文化の担われ方も、土地の発揮できる効用も変化する。例えば、同じ土地でも、再開発(建て替え)前の土地と再開発後の土地とは、その土地にとっても、その周辺の都市環境にとっても、全く別の文化的、社会経済的な効用を発揮することになる。

このように土地と建築物とは、不可分一体のものであって、土地と建築物とをそれぞれ独立した不動産として扱うことに、社会科学的合理性はない。それであるにも拘らず、わが国の法律制度は、土地と建築物を独立した不動産と扱うことをしてきたため、多くの矛盾が土地と建築物をめぐって発生している。

住宅は土地の加工部分としての非償却資産

さらに、住宅不動産は、土地と一体不可分の関係にあると言うことで、土地自体消滅せず非償却資産であって、償却資産とする科学的な根拠はない。仮に、会計法上又は税法上償却資産という扱いをすることがあったとしても、それは会計法上又は税法上の便法に過ぎず、住宅不動産自体の社会科学的な性格を変えるものではない。

減価償却理論は、割り増し償却理論に象徴されるとおり、対象物の物理的性格に根拠を置くものではなく、もっぱら経営的な投資金額の償却を扱う会計法上、又は、税法上の取り扱いであって、自然科学的な物理的な滅失に繋がる耐久性を扱ってはいない。

住宅の効用は、その住宅に使用されている建材や住宅設備の物理的耐用年数の有限性を考慮して、計画的に維持管理及び修繕をすることにより、永久に維持される。住宅は、社会環境や、生活文化的環境の変化に対して、居住者が必要とされるリモデリングを繰り返すことで、現実の500年も1000年も使われている例はいくらでもある。

住宅の不動産価値は、その不動産の収益性とそれを反映した取引市場を反映して決められるものであって、住宅の価値を、償却理論を使って計算した残存価値とする合理的根拠はない。

その上、日本以外の工業先進国では、建築物は土地と一体の不動産として登記されて、都市施設の一部とされている。そのため個人の資産であっても、無条件で個人が勝手な管理をすることは許されず、改築、増築はもとより修繕や塗装など維持管理に関しても社会的な証人を必要とする場合が多い。

欧米では...

そして、不動産事業は、日本のように「建設サービス業」ではなくて、土地という不動産の加工業としての「不動産製造業」として社会科学的合理的に扱われている。

先生のおっしゃる「建築サービス業」ではなく「不動産製造業」という考えは、これからの日本社会の豊かさを底上げしていく上で非常に有益な考え方であると思います。今回の震災を受け、日本の各当局はこの方向に法整備や補助金等の政策転換を行っていくと考えられます。私どもハイアス・アンド・カンパニーも、このパラダイム転換の方向性を見極め、皆様にとって価値のある情報や具体的な戦略事業をご提案してまいりたいと思います。

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