米国の不動産流通を支える仕組み

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マネジメントブローカー(Keller Williams)

米国の不動産エージェントは個人事業主の場合が多く、各個人がブローカーに所属して営業活動を行っています。ブローカーの役割は、エージェントの採用と教育、オフィス環境の提供、契約書のレビュー、ブランディング等であり、ブローカーはエージェントの売上の一部を収入源として会社経営していますので、エージェントが契約を獲得するためのあらゆる支援を行っています。

参考事例として、エージェントの目標管理方法を紹介します。まずエージェントが希望する収入額と必要経費から、それを実現するために必要な手数料の額を逆算し、それを達成するための工数(主体工数、附帯工数)を計算します。この計算結果をもとに、ブローカーに所属するチームリーダーがレビューを行い、スキルが不足している場合は研修への参加を促し、行動や時間の使い方に問題がある場合は改善方法について指導します。多いところで、1 拠点に200 人のエージェントが所属していますので、その適切な管理によりブローカー経営が成り立つ仕組みです。研修体系を含めて非常に緻密なマネジメントがなされており、大変感心させられました。

アプレイザル(The Hagar Institute)

アプレイザルとは不動産鑑定のことで、主に銀行が物件の担保価値を評価する時に行われます。査定方法は日本と同じで、1原価法、2取引事例比較法、3収益還元法の3 つですが、日本との決定的な違いがあるとすれば、マーケットデータ(実際の売買履歴)に基づいて補正・算定されているという点でしょう。建物の減価償却の考え方は、米国でも同様にありますが、日本のように法定耐用年数をもとに一律に減価償却されるのではなく、減価償却期間を建替えの周期として計算した上で、その間に得られたロケーション価値の高まりを、取引事例をもとに評価して計算されます。これにリモデルや建て替えによる価値の増分を加えて最終価格が決定するという手順です。

この評価手法が成立する理由は、周辺の取引事例がMLS にデータとして格納されているからであり、データの量が多く、正確であればあるほど、適切な鑑定ができるとの話でした。MLS によるマーケットデータの蓄積がここにも活用されていることが理解できました。

まとめ

今回の訪米では、米国の不動産流通の最新情報をセミナーや視察を通して確認しました。上記で報告させていただいた内容はその全体像の中のほんの一部ではありますが、情報の開示と流通の仕組みの整備・改善により、顧客が安心・納得して不動産売買を行える環境を
整えることが可能になると実感しました。

弊社では、AMS(エージェント・マスター・サービス)による不動産物件情報の透明化(日本向けの代替MLS)と、( 財) 不動産流通支援機構(RESA) が国土交通省に提案する地域業者間連携により不動産流通の活性化に取り組んでいきたいと考えています。

これらの取り組みを実現するためには、業界全体の協力が必要になってまいります。一人でも多くの賛同者が増えることを切に願っております。(鵜飼)

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