イギリス、ドイツ住宅不動産視察の報告

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サーベイヤー(Surveyor)による建物評価と検査

サーベイヤーとは、買主の依頼を受けて物件調査と不動産評価を行う専門職のことです。報告書(サーベイヤーレポート)には、価格査定と建物の状態や構造上の問題、周辺環境や修繕を要する場合の費用やアドバイス等に関する項目が含まれます。買い手は、この中立的な第三者の情報をもとに、不動産購入の判断や値段交渉の材料とします。この仕組みも、安心して納得性のある不動産取引に貢献しています。

サーベイヤーによる報告書の作成にかかる費用は450~550ポンドくらいです。買い手が物件を購入する際の重要な判断基準となりますので、ほとんどのケースで採用されているそうです。

不動産取引の日・英・米比較

ここで、不動産取引に関わる専門家の役割を日本、イギリス、アメリカで比較した資料を下の表に示します。

日本では、不動産会社にその役割のほとんどが集中していますが、イギリス、アメリカでは専門家による役割分担・分業の様子がわかります。

仲介プロセスを見てみますと、アメリカではMLSという物件情報が網羅されたデータベースがあり、全てのエージェントが平等に情報を扱えることに対して、日本とイギリスでは地域の不動産会社に物件情報が集まり、それに対して顧客をマッチングするという点に関し
て、似通っている印象を受けます。また、ホームインスペクションや不動産鑑定の領域ではそれぞれの専門家による評価・報告が不動産売買プロセスに組み込まれているイギリスとアメリカは、日本と比較して先進的な取り組みといえるでしょう。

このように、不動産流通が活性化しているイギリス、アメリカと日本の仕組みを比較してみると、各国の国民性や法制度に則って形成されたという事情を差し引いても、参考にすべきポイントは多いと考えられます。特にイギリスの不動産流通システムは、日本とアメリカの中間に位置するモデルとも考えることができ、今後の取り組みに活用できるヒントが多々あることを今回の視察で実感しました。

イギリスの住宅地経営事例(レッチワース)

イギリスの住宅地において、美しい街並みが形成され資産価値が維持・向上しているエリアの特徴としては、住宅地が経営管理されているかどうかがポイントである【日・英・米比較】不動産取引に関わる専門家の役割売といわれています。

今回訪問したレッチワースは、1900 年代初期にエベネザー・ハワードが周辺の土地の所有を法人化し、マスタープラン(基本計画)およびアーキテクチャルガイドライン(建築設計指針)、CC&Rs(規約)をもとに、財団(土地の法人所有者)が経営管理して成功した住宅地です。

当初は近隣のコルセット工場に通う労働者向けの住宅地として、職住接近を目指したことから開発が始まり、現在では鉄道も整備されて、ロンドンに通うサラリーマンのベッドタウンとしても機能しています。レンガと漆喰の外壁による統一感のある街並みと、財団により隅々まで管理されている景観が特徴的です。

住宅価格はロンドンから離れていることもあり20万ポンド前後とのことですが、10年前から安定した需給状況とのことでした。

また、レッチワースの一角に新興住宅街として、これまでの景観とは異なるモダンかつ太陽光を利用したエコ住宅街が形成されており、現在販売中でしたが、この新しい取り組みも住宅の資産価値形成にどのような影響をもたらすのか非常に興味深いところです。

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