金融円滑化法終了はアベノミクスを阻むのか?

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・金融機関の役割として個々の借り手の状況をきめ細かく把握して、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきということは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わるものではない。
・金融庁としては、円滑化法の期限到来後も、貸し渋り・貸し剥がしの発生や倒産の増加といった事態が生じないよう監視する。
・金融検査マニュアル等で決められている、中小企業向け融資にあたって、貸付条件の変更等を行っても不良債権とならないための要件(※注)は恒久措置であり、円滑化法の期限到来後も不良債権の定義は変わらない。

要するに、金融庁は金融機関に対して、「円滑化法が終わっても、何も変わらないし、貸し渋りとかしたら怒りますよ」と言っています。

不良債権の定義についても(※注)のところの『貸付条件変更となっても不良債権とならない要件』とは、「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みがある場合」や「5年以内(最長10年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」とされています。

「10年以内に経営再建がされる計画」って…要はなんでもいいってことですよね。

銀行にしてみれば、不良債権と認定されないのなら、引当金を積む必要もないわけですから、何も変える必要がありません。「3月危機」などが起きることはなさそうです。

融資からファンドへ移し替えの施策も

実態として、不良債権になりそうなのはどれくらいかというと、円滑化法適用を受けている30万社くらいの中で、もう経営改善実態がなくて返済猶予を繰り返している「真の不良債権予備軍」は5万〜6万社くらいだそうで、債権額にすると総貸出額の1%にも満たないようです。

これで金融庁は「円滑化法終了の影響は小さい。ソフトランディングで行こう」となったのではないでしょうか。

一応施策も打ち出しています。

<中小向け出融資枠 1兆円 政府、円滑化法終了で対策 資金回収を監視も>(平成25年2月4日付 日本経済新聞夕刊)

『中小企業の借金返済を猶予する中小企業金融円滑化法が3月末に期限が切れるため、政府は激変緩和の支援に乗り出す。中小企業の再生を支援する公的機関の出融資枠を2013年度に3倍の1兆円に拡大するほか、総額で2000億円規模の再生ファンドを育てる。強引な資金回収がないか監視も強める。公的支援を拡充し、中小企業経営の軟着陸を目指す。』要するに、銀行が融資を続けたくない場合には、政府出資のファンドがその債権を買い取ります、ということですね。今まで大企業向けにあったそういう「不良債権のハコ」を中小企業向けに作り替えて、政府出資をこれまでの3000億円から1兆円規模まで増やすようです。

そういう「官制ファンド」を全国でどんどん作っていって総額2000億円程度の規模まで持っていく、と。そして、全国に窓口を設けて中小企業の意見や苦情を吸い上げ、強引な資金回収をするような金融機関がないかと監視までする、とのことです。

もともと誰もやりたくなかった金融モラトリアム。最後は、「政府が尻拭いをします」ということで幕を下ろすことになったということですね。

金融円滑化法の教訓

今、景気の緩やかな回復に伴って銀行の業績は良くなりつつあります。全国の銀行貸出金は16 ヶ月連続で前年同月末比増加しています。中小企業もアベノミクスの恩恵を受けて業績を立ち直らせるところも今後増えていくでしょう。

そうなってきたから円滑化法がソフトランディングできるわけでもあり、金融関係者はほっと胸をなでおろしているんじゃないかなと想像します。軟着陸できるならそれに越したことはありませんが、金融機関の原則をねじ曲げた金融円滑化法が悪法であったことは皆が認めるところであり、今後の教訓にしたいものです。

確かに経営不振企業を切り捨てるだけでは地域経済は疲弊してしまいますが、時代に遅れ役割を終えたような企業を延命させるのはむしろ地域経済の足を引っ張ります。そういう企業へ市場からの退場を促したり、もしくは再建に向けて業種転換やM&Aなどの再編を促進したりする企業支援も銀行の役割だと思うのです。

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