若手営業マンを一変させた「ハイアーFP」導入

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はじめに

消費税増税を控え、住宅不動産業界にとっておそらく最後になるであろう好調な波が押し寄せています。新築着工戸数は、2012年度の89.3万戸から、2013年度については90万戸超まで伸びるのではないかといわれています。問題は来年以降の住宅市場がどうなるか…それが多くの住宅関連企業の関心事ではないでしょうか。

「2016 年度には60万戸台まで着工が落ち込む」と推測するシンクタンクがあるように、今後の住宅市場の動向については決して楽観視できません。むしろ市場が大きく縮小することを前提にした事業活動が必要になるでしょう。

販売戸数の減少だけではありません。購買層についても、収入は下げ止まりつつあるものの、税金や電気代などの家計負担も増えることから、住宅購入に際しての予算確保も厳しくなり、結果的に住宅購入予算を減らさざるを得ない。つまり今後、販売価格の低下により一層拍車がかかる可能性が高いでしょう。

マーケット全体の趨勢としては、販売戸数や販売価格の減少・低下が進んだとしても、全ての会社がそうなるとは限りません。いつの時代にも、市場の規模の変化だけではなく、質……つまり顧客ニーズの変化に敏感に対応することで業績を伸ばす企業が存在します。今回のレポートでは、今後想定される逆風に立ち向かう際に参考になるであろう、集客だけに依存することなく契約の確率を高めることで実績を挙げられている不動産会社の事例をご紹介したいと思います。

業績は伸び続けていたものの・・・

愛知県名古屋市にある不動産の売買仲介をメインに行っているF社は、社長が10年前に創業。現在の従業員は6名、内営業マンは2名です。業績は創業時から順調に伸びてきたものの、社長は自社の成長ぶりに決して満足しているわけではありませんでした。特に問題意識を感じていたのは、反響数…つまりお問合せいただくなどの形で、新規の顧客・案件の発掘は一定数確保できているものの、それが最終的な契約になかなか結びついていないということでした。「本質的な課題は一体何なのか……それが明確にならなければ、当社がこれ以上売上を伸ばしていくのは難しい」。社長はそのように感じていたといいます。

案件の歩留りから見えてきた営業活動の課題

社長が最初に取り組んだのは、営業活動データの採取・管理でした。

2012年10月から、2名の営業マンについて、「反響数」「物件案内数」「契約数」という3つの指標、およびそれらの比率を時系列で明確化していきました。

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それまでは感覚的に営業活動状況を評価していたものの、データを採取することで、大きく2つの課題が見えてきたといいます(図1)。

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まず、F社の反響数は全社で月間平均30〜40件ですが、指標Y、つまり物件案内まで進展する確率が、実際には想定していたより低かったこと。そして2点目として、入社6年目のA課長と入社2年目のB氏という2名の営業マンの間には、反響案内率(Y)についてはほとんど差がなく、指標Z、つまり物件案内の段階から契約へとステップアップさせる確率の違いによって、両者の営業実績の差が生まれているということが明らかになりました。

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