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2012年の日本の平均寿命は、男性79.94歳、女性86.41歳(厚生労働省発表)。1960年の同指標は男性65.32歳、女性70.19歳であり、伸び率は徐々に鈍化しつつも、この50余年で15歳も伸びました。
2012年の日本の平均寿命は、男性79.94歳、女性86.41歳(厚生労働省発表)。1960年の同指標は男性65.32歳、女性70.19歳であり、伸び率は徐々に鈍化しつつも、この50余年で15歳も伸びました。
合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)は2005年の1.26を底に反転傾向にあり、2012年は1.41と、16年ぶりに1.4超となりました。ただ、出生数自体は最少記録を更新し続けていることや人口置換水準(人口の均衡が保たれる出生率)とされる2.07に遠く及ばないことから、状況はなお深刻です。本稿では、住宅政策の観点からこの問題を考えてみたいと思います。
昨今、少子化対策について、マスコミなどを通じて、我々に漏れ聞こえてくる政策は、待機児童をゼロにした横浜方式の他自治体への横展開や、不妊治療に対する助成、育児休業の3年への延長等々。それぞれ女性の社会参画の促進や、暮らしやすい社会の実現といった点で、価値のある取組みです。
子育てしやすい環境を整えれば、「もう一人子どもをもうけようか」と思うご夫婦もいるでしょうから、少子化にとっても決してムダな施策ではありません。しかし、これが少子化問題の抜本的な解決・解消につながる効果性(優先度)の高い政策かといえば、そうではないと我々は考えます。
私たちは、1.26(2005 年)とか1.41(2012 年)といった数字を見ると、「ああ、一人しか子どもを生まない女性が多いんだな」と勘違いしてしまいがちです。しかしそれは「平均」という概念が生む錯覚です。
図1は、数年ごとに国立社会保障・人口問題研究所によって調査・公表される出生動向基本調査から、15〜19年もの期間、婚姻を継続した夫婦を対象にして何人の子どもをもうけているかを示したものです。
注目すべきは、回を重ねるごとに、3人以上子どもをもうけるケースは減ってはいるものの、「2人」というケースは53〜58%と、35年以上に亘ってほとんど変わっていないことです。直近の第14 回調査においても、「2人」は「1人」という夫婦の3倍を優に超えています。
そして図2は、この1980年から2010年までの30年間で晩婚化・非婚化がいかに急激に進んだかを表すデータです。図1・図2から導かれる答えは明らかです。
国や自治体が、国民や住民がより幸福に暮らせるように行う行政サービスとしては、現在俎上に載っているテーマは、確かに取り組むに値するものです。
しかし少子化そのものに対しては、もう少し異なるアプローチが必要ではないでしょうか。つまり、本人が望みながらも、経済的な要因等により結婚(世帯の形成)まで辿り着くことができない、そういった状況・境遇にある若者をいかに支援していくか——難易度が高く長い道のりが予想されますが、これこそが、まさに日本が取り組むべき課題であると考えます。
上に述べた、世帯の形成に向けた若者のサポート……その重要性は、既に多くの方が認識されています。それ故、農家に嫁ぐ女性を募る企画や、近年であれば「街コン」と呼ばれる地元の飲食事業の活性化を兼ねたイベントなど、行政やコミュニティにおいて、地域特性を活かした様々な取組みがなされており、中には成果を挙げているものもあるといいます。
我々としては、そういったものとは別に、自分たちの領分である住宅分野に関連した角度からの施策を提案したいと思います。