少子化問題への提言

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親との同居と出生率との相関

図3は、北欧・西欧・南欧から主要な5ヶ国を選び、若者(25〜34歳)の親との同居率とその国の合計特殊出生率の相関を示したグラフです。

一目で分かるのは、地域として見事なまでに共通した傾向を見せる北欧諸国と南欧諸国、そしてその両グループが見せる強いコントラストです。

南欧諸国では、なぜこのように共通した特徴が見られるのでしょうか。個人主義が徹底している北欧・西欧諸国に比べ、これら地中海沿岸国家は、家族の結びつきを大切にし、家庭内での男女の役割など、伝統的な価値観が色濃く残っている地域でもあります。

加えて、イタリアやスペインなどは持家率が約8割と高く(つまり借家が少ない)にも関わらず、必ずしも住宅ローンへのアクセス性が良くないこと等から、若年層の親との同居率が高くなっていると推測されます。

一方日本はどうでしょうか。図4は、親と同居している若年未婚者の割合を示したものです。調査対象の年齢層が若干異なる(日本は20〜34 歳、EUは25〜34歳)ものの、同居率・出生率とも、南欧諸国と同一クラスターを形成できる程、似通った傾向を示しています。

親と同居している若年(20~34歳)未婚者率の推移

これらのデータが意味するのは一体どういったことでしょうか。「結婚していてもおかしくない年齢でありながら、未婚で親と同居している人の割合が高いのだから、そういう国の出生率は低くて当然ではないか」と思われる方もいるかもしれません。

では出生率の高い北欧諸国は、若くして世帯を形成している(⇒ だから親と住んでいない)のかといえば、決してそうではありません。スウェーデンは男性約34歳、女性約32歳と、世界で最も初婚年齢が高い国です。

従って、一定の年齢になった若者が、親元から離れ、「居住の自立」(+経済的自立)を獲得できている……そういった若者の割合が多い国では、やがて結婚(世帯の形成)に向かい、それに従って子どもをもうけるといった流れに乗りやすく、結果的に高い出生率を実現・維持できている——このような仮説(姿)を想定することができます。

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