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米国の不動産流通においては、業務の流れが日本とは大きく異なり、専門家や第三者による分業体制にすることで、確実で安全な取引が行われるシステムになっています(図3)。
物件を売りたい時、売主はセラーズエージェントを任命して、MLS に物件情報を登録します。この時、設定される価格は周辺のマーケットプライスを参考につけられます。MLSに登録された物件情報は全てのエージェントが等しく閲覧することができるため、情報を見たバイヤーズエージェントは、自分のクライアント(買主)に物件を紹介し、必要に応じて物件案内を行って、購入の意思を確認します。その後、売主・買主双方のエージェントが条件交渉を行い、条件が合致した時に売買契約を締結します。
契約後、各種契約書類をもって、エスクロー(Escrow:売主と買主の間に入り、不動産売買の実務を行う民間の第三者機関)に申し込むことで、具体的な決済の手続きがスタートします。これが「エスクローのオープン」です。
エスクローが開かれると、タイトルカンパニーによる権原調査が行われ、売買物件にかかる権原のレポートが発行されます。そのレポートの内容を保全するため、万一その物件に隠れた権原が付与されていた場合の損害を補てんする役割を持つタイトルインシュアランスを付与します。
並行して、買主負担でインスペクション(Inspection:建物検査)が行われ、躯体及び設備の安全性・稼働状況・耐用年数等を調べ、瑕疵が発見された場合は修理費用をどちらが負担するかを交渉して決めます。
同じく並行して、モゲージブローカー(mortgagebroker:住宅ローン専門会社)を介して住宅ローンの申し込みを行い、買主の費用負担でアプレイザル(Appraisal:不動産鑑定)を行い、物件が住宅購入価格に値するかどうか評価してOKが出た時に住宅ローンが実行されます。
エスクローの役割は、売買契約書ならびにこれらの情報を一堂に集め、その中に記載通りの条件にて、決済ならびに登記(Recording)を行い、不動産の売買を完了させます。これが「エスクローのクローズ」です。この決済業務をエスクロー会社、つまり中立的な第三者が行うために、売主と買主双方が安心できる取引が可能となるのです。