ハイアス総研report

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今回注目した調査結果〜「安さだけ」はすでに過去の価値観?〜

「生活者1万人アンケート」において注目した調査結果に、「基本的な消費価値観の推移」という結果があります(図表1)。特徴的な選択肢の変化を抽出すると、「とにかく安いものを買う」という回答率は2000年には50.2%でしたが、その後は調査実施ごとに下がり続け、2012 年には41.2% と、10年で10ポイント近く低下していることがわかります。あるいはまた、「多少値段が高くても、品質の良いものを買う」という回答率をみると2000 年には40.0% でしたが、その後は徐々に上昇し続け、2012年では46.4% に達しています。これ以外にも、「ライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」、「できるだけ長く使えるものを買う」、「安全性に配慮して商品を買う」、といった傾向が強まっていると言えます。

長らく続いてきたデフレの時代、供給者側の理屈としては、とにかく安くすることで販売数量の指標を達成させ、事業規模を維持拡大したいという意図が強かったと思います。しかしそのような意図とは対照的に、生活者の消費価値観は安ければ良いという志向から、自分らしくあるいは品質の良いモノであればそうした価値に見合う対価を払う、という傾向がみて取れます。つまり生活者側の消費価値観は事業者側よりも先にデフレ発想を超えていたのです。

未来の市場への反射〜住宅市場で起こる未来に備える〜

人口構造の変化や、世帯数との比較において過剰な住宅数の存在を考えると、従来水準の着工数が見込める市場は期待しにくいでしょう。その中で「安ければ良い」という商品サービスを供給し続けることは、市場規模縮小を加速させる側面を持つといえなくもありません。現実として消費者は安さを望んでいる、という声も聞こえてきそうですが、前項で紹介したように、生活者の消費価値観は「ただ安ければ良い」という傾向から、価値に見合うもの、自分に合うモノを買うことを重視する傾向に変化しています。これはまさに「すでに起こった変化」であり、ここから先の仕事のやり方を考える起点だと捉え、従来のやり方でよいかを自問する時期に入ったといえます。

従来の住宅事業者と消費者の関係を振り返ると、事業者が選び提示した商品を消費者はただ受けとるだけという一方通行的な関係性だったと言えます。言い換えれば事業者目線で売りやすい(例えば、安価で品質程度もそれ相応な)商材を提示し消費者と深い対話をせずに商売が成立してきたということでもあります。

しかし、“ 私らしい”“ 価値に見合った” モノであると理解すれば多少高くても消費する、という消費価値観を持った生活者を相手に商売をして行くことを考えるとき、高い品質の価値ある商材を揃え、その価値をきちんと伝えることができる準備(体制、スキルや機会の準備)を整えることは必須です。この準備をいち早く終えることで、安値でしか商売が成り立たないと思っていた市場から抜け出し、提供するサービスに見合った対価をきちんと頂ける市場を創造でき、かつその市場で競争優位に立つことが可能になるでしょう。

(矢部)

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