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3-1 経済状況
「国生活基礎調査(厚生労働省、平成24年)」から、全世帯平均と高齢者世帯平均の総所得を比較するとは548.2万円と303.6万円となり格差が多いように見えます。これを平均世帯人員で除した一人当たり所得を比較すると、208.3万円と195.1万円となり、大きな差がないという結果になります。もちろん、世帯当たりの絶対額が小さいことには変わりはないのですが、一般的に食費など家計支出が低下する傾向があることを考えれば、平均値で見る限り、高齢者世の経済状況が特に厳しいということはなさそうです。
次に世帯あたりの貯蓄について「家計調査(二人以上の世帯)(総務省、平成24年)」から引用します(図表8)。調査によれば、全世帯平均の現在貯蓄高と世帯主が65 歳以上の世帯平均の残高を比較すると、それぞれ1,658 万円と2,209万円となっており、高齢者が世帯主の世帯のほうが1.3倍の残高を持っていることがわかります。さらに、現在貯蓄残高階級別で詳細にみると、高齢世帯主の世帯では4,000 万円以上の残高を持つ構成比は全世帯で10.4%であるのに対し、高齢者世帯主の世帯では16.5%と高水準であることがわかります。
3-2 暮らし向き
3-1でみたように、「お金」の面では比較的ゆとりがある(もちろん、平均値で見る限りではありますが)ように見える高齢者世帯。では、その生活実感はどうなのでしょう。それを理解するうえで「暮らし向き」についてたずねた調査が「高齢者の経済生活に関する意識調査(内閣府、平成23年)」です。この結果によれば、暮らし向きに心配ない(まったく心配ない+ それほど心配ない、の計)という回答割合が全体で71.0%となっており、とりわけ80歳以上の回答者では80%が心配ないと答えています(図表9)。
3-3 お金に関する備え
「高齢期に向けた「備え」に関する意識調査(内閣府、平成25年)」の中では、経済的な備えの程度を聞いています(図表10)。備えはある(十分だと思う+ 最低限はあると思う、の計)とした回答は23.3%にとどまる一方で、足りない(少し足りない+かなり足りないと思う、の計)は66.9%と大きな差として現れています。
この調査では結果の背景まで言及していないが、人が不安に感じるのは、その背景にあるものが見えない状況にあるときが多いのではないでしょうか。この場合でいえば、「健康に長生きできる」見立てが立たないことが大きい要素といえそうです。
ここまでみてきたことを大まかにつなげて考えると、「平均としてみる高齢者“ 像” は、現状の居住環境についておおむね満足しており、その場所をまさに終の棲家となるまで使い続けたいと考えている。ただし、少々の自覚症状がありながらも身体が動かせるうちは改築に踏み切らず、また、当面の暮らし向きには心配はしてないものの将来の経済的な不安が消せないので、実際に何かあった時に手を打てばよいと考えている」…このようなイメージが浮かんできます。
冒頭において、住まいながらのリフォームビジネスを考えるにあたって、事業者が注力すべき「生活提案」というキーワードが見えてくる、と記しましたが、前述したような「将来が見えないことに起因する不安」を理解、認識、受容し、それを払拭するための考え方即ち“ 健康”を大切にする、ということが提案の根本にあることが重要だということではないでしょうか。(ハイアス総研 矢部)