平成20年5月に省庁横断で出された「業種別生産性向上プログラム」というレポートより 建設・住宅・不動産業の生産性向上と付加価値について

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1. はじめに
課題として指摘されていた生産性と付加価値

平成20年5月に省庁横断で出された「業種別生産性向上プログラム」というレポートにおいて、生産性向上が課題となる産業・業種として8つの重点業種が指摘されています。実は、本誌読者の多くが属する建設・住宅・不動産業も対象として列記されています。※1

レポートでは、建設業の生産性の低さはマクロ視点で建設投資の急激な減少によるものとしているとともに、多重下請け構造など企業単位・産業単位の業界にある独特な非効率が影響していると指摘しています。また、住宅産業に関しては、主力の供給の担い手が地域産業であることから生産の合理化や技術力向上といった課題が指摘されています。不動産業もほぼ同じように、事業領域が多様でかつ事業者の規模も様々である中で、とりわけ情報の収集・分析コストの低減が必要であるとされています。

以上のような平成20年当時の状況認識と課題設定に対して、当時の政策取組として、

(1)入札契約制度改革の推進
(2)建設生産システムのICT化・合理化の推進
(3)経営力の強化
(4)人材の確保・育成
(5)地域における住宅生産の合理化
(6)不動産流通の活性化・効率化

という6点が示されています。地域産業である住宅・不動産の事業者向という視点で、特に関係の深い取組と考えられるのは(3)、(5)、(6)の3点であると考えます。その3点それぞれの具体的な施策テーマとして、③経営力強化では経営改善・コストダウン、経営統合・企業間連携、新分野進出などが挙げられています。(5)の地域における住宅生産の合理化については、地域の関連事業者が共同で行う供給体制の整備、担い手育成、企画開発等の取組支援を図ると記されています。最後の(6)不動産流通の活性化・効率化では、業界全体での不動産情報規格の標準化や情報共有のための連携強化、個社の情報検索能力や市場分析能力の向上等が必要である、といった方向性が示されています。

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2. 生産性と付加価値とは

ここで、改めて生産性と付加価値とは何かを確認しておきます。

まずは生産性について。生産性とは、人員や設備、時間などを投入した割合に対して、どれだけ多くの物やサービスを創りだし「成果」を挙げることができたかという見方です。成果とする数値としては、生産したモノの数量や売上高、そこから得られた利益など様々ありますが、企業自ら生み出した価値である付加価値を成果として用いることが多いようです。では、付加価値とは何でしょうか。付加価値は次のように求められます。

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このように数式として表すと、簡潔に売上から費用を差し引いたものとなるわけですが、付加価値の本質的な性格を表す別の表現があります。それは「付加価値とは生産者が提示した価格によって創られるのではなく、買う値段を判断する消費者が決める」という見方です。例えば、いくら生産者側が良い性能や良い品質だから高い価値の商品・サービスだと考えて設定した値段も、値下げをしなければ売れないということが発生するとしたら、値下げした値段がその商品の現実的な価値であって、それによって生み出された付加価値が本当の付加価値であるということです。

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