コスト・マネジメント・システムの真価は 「課題理解と修正実践のパッケージ」
~CMS研修講師・古原氏に聞く「本当の原価管理とは」~

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正しい原価管理の成果
~できているはずを見える化し、正しい手順で改善した事例~

正しい原価管理の手順  ステップ1
ツールによる「できているはず」の見える化

導入例として、地域密着工務店A社(年間10棟程度の施工実績)のケースをお話いただきました。

A社の社長は、自社の粗利率は25%程度出ているという認識をお持ちでしたが、原価が適正であるかという疑問も持っていました。また市場が大きく変化していく中、今のような原価管理の精度や体質で勝ち残っていけるのか漠然とした不安を持っていました。

そのような背景でCMSをご導入いただきましたが、第1回目の研修前に、これまでの施工物件を案件毎・工種毎に営業段階の見積り原価、実行予算、工事原価を入力し、原価構造の現状を「見える化」することから始めていただきました。その結果が図表1です。

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入力をしてみると、全棟平均の最終粗利(G工事粗利率)は感覚値と近い25%程度を確保できていましたが、物件ごとには契約時(見積)、実行予算・工事原価のかい離があり、さらにそのかい離の程度が違うことが浮かび上がりました。つまり、「出来ている」と思っていたのは1年を通しての全体ひとまとめにした場合の結果で、物件ごとの粗利創出にはまだ出来ることがある、という気付きを発見していただけました。

正しい原価管理の手順  ステップ2
見える化した結果からの分析

ここまではツールを使って課題を発見・見える化をするという過程でしたが、つぎに物件ごとに契約時(見積)、実行予算・工事原価のかい離があること、しかも物件ごとにそのかい離の程度がちがうという背景には何があるのか、という「分析」をする必要があります。この分析こそ、正しい原価管理の第一歩なのです。

分析してみると、A社では各業者から提出される見積を元に実行予算を作成、着工2-3日前に予算が確定されていました。しかし、提出された見積もりを元に原価が適正か検証することは難しく、また一部の業者からは「一式」で見積もりが提出されており、適正な原価であるかの判断は難しい状態でした。また、この誌面では詳細な数値はありませんが、CMS導入後、さらに自社の過去物件の原価を工事・工種ごとに検証・分析してみると、契約時の見積もり・実行予算・工事原価の間で一番金額の“ズレ“ が大きかった工事は「木工事」、次いで「外壁工事」だと分かりました。さらに工種では、「給排水」、「電気工事」が明らかに原価(取り決め単価)の高い項目として浮き彫りになってきました。また、見積り詳細の分析を進めると「プレカット」の取り決め単価が非常に高くなっていることにも気づくことができました。他にも見積りや実行予算に対して工事原価がアップしている項目に「仮設」「塗装」等が出ており、敷地調査や図面精度の改善、引渡し前の補修の見積り反映等、社内での取り決めが必要な項目が浮かび上がってきました。

正しい原価管理の手順  ステップ3
研修での気づきと学びを実践活動へ装着

A社では研修後、さっそく各業者との打ち合わせを実施されたそうです。実行予算と工事原価のかい離が生じる理由、また取り決め単価が市場価格、近隣相場に照らして適正であるかについて協議を進め、現場ごとの人工数についても実際の人工数、1人工当たり単価データをもとに価格設定の見直しを図りました。この結果、材工それぞれの無駄を排除し、実行予算と工事原価のかい離を無くしていくと共に、着工前の実行予算段階の粗利率より最終精算終了後の工事原価ベースの粗利率が低下する状況は改善され、さらに契約時(営業)見積もりの精度を高めていっています。

このように具体的な行動をすぐに起こしたことで、実行予算=工事原価という本来あるべき姿が実現、各段階のかい離により逸失していた利益を、想定通りに得ることが出来るようになったのです。

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