シリーズ調査を読む#009
需要者の意識、行動から考えるリフォーム市場の行方

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2.住宅リフォームへの不安

つぎに、リフォーム需要者が住宅リフォームを進めるにあたって不安に思うことを聞いた調査結果を示します(図表2)。

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複数回答の結果、抜き出た2つは「見積りの相場や適正価格がわからない」ついで「施工が適正に行われるか」となっています。いずれも業者の行為に対する不安と読みとれますが、これ以外の回答選択肢でも、「業者選び」そのものの基準を持てない、あるいはそこからくる不安を示す選択肢が続いています。つまり、リフォーム需要者の不安の背景、根本にあるのは「リフォーム業者選びの不安」であるといえそうです。

少し細かな点ですが結果の中で注目したことは、マンションリフォーム需要者の回答です。特に全体、戸建てリフォーム需要者との比較で相対的に高い回答割合が示されたのは、業者選び・手続きが面倒そうや業者特性を比較しにくい、デザインが気に入ったものになるか、そして専門知識がなくても業者とうまくコミュニケーションが取れるか、という回答選択肢です。ここでは詳細は示していませんが、この背景を戸建てリフォーム需要者、マンションリフォーム需要者のプロフィールの差で説明できないかを確認してみました。年代、職業、家族構成などに大きな差がなく、唯一大きな差があった点が、人口500万人以上の「都市エリア」の居住者が戸建てリフォーム需要者では回答者(n=771)の55%に対して、マンションリフォーム需要者では回答者(n=229)の80%超となっている点でした。

ここからは推測ですが、おそらく都市部ではインターネット、チラシや広告誌をはじめ、業者を選択するための情報が多様な内容や切り口で溢れる環境、いいかえれば情報過多状況にあるがゆえに、かえって選べない、あるいは情報の整理が出来ない状況にある結果ではないかと考えられます。

3.リフォーム業者を選ぶ際の重視点

2章では、リフォーム業者を選ぶ判断基準を持てないことでリフォーム需要者に不安が生じていることが示されましたが、この章ではそのように不安を抱える需要者が、不安を解消するためにどのような点を重視してリフォームを依頼する業者を選ぼうとしているのかを聞いた結果です。

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これによれば、もっとも高い回答割合は「工事の質・技術」、「工事価格」の二つが突出して高くなっています。これは2章で示した調査結果にある「見積りの相場、適正価格の不安」、「施工が適正に行われるか」を裏付ける結果であり、はやり、費用の明示と施工品質と性能を以下に分かり易くリフォーム需要者に伝えるかが問われていることを示しています。費用の明示については、チラシなどで「モノ」の単価が示されていることを考えると、工事に関わる費用の不明瞭さが課題として浮上しそうです。その意味で、施工の品質と性能を示す事がやはり重要となると考えられます。

ところで品質と性能とはどういうことかを改めて確認しますと、品質については「明示的あるいは暗示的なニーズを満たす能力のある製品・サービスの特徴や特性を統合したもの」であって、「売り手の製品・サービスが顧客の期待に応える、あるいは期待を上回るとき、売り手は“ 品質”を提供したということができる」(米国品質協会ASQ)という見解があります。一方で、“ 性能”は「スペックなど優劣が判断できるものであり、つまり物理的に測定可能な事柄」とされています。

以上のような見方を参考に考えると、工事の質・技術を重視する需要者に対して示すべきは、意匠のような期待の場合は少々難しくなりそうですが、断熱など性能として変化を示すことができるような場合は、ビフォーアフターをきちんと説明するなどの取組が重要な取組になるのではないでしょうか。

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