シリーズ調査を読む#010
住宅の性能に対する消費者意識について考える

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「平成27年 住生活に関する世論調査(内閣府)」と
「2015年注文住宅動向・トレンド調査(リクルート住まいカンパニー)」を参考にして

世の中には様々な団体や組織によって市場動向の調査リリースが行われています。この企画は溢れる様々な市場調査から「HyAS View」読者の皆様にとって関心の高い、あるいは有益と思われる調査結果から参考となるトピックの紹介・解説、事業運営の参考となる情報提供ができればと考えています。

今回の「調査を読む」では、『平成27年 住生活に関する世論調査(内閣府)』の調査結果発表資料から「高品質住宅を形成するための対策」に関する回答と、『2015年注文住宅動向・トレンド調査(リクルート住まいカンパニー)』の調査結果発表資料から、住宅(建物)の性能に関する回答を注視して、住宅の性能に対する消費者の理解、意識の程度やこれからの可能性について考えてみたいと思います。

住宅を手に入れる際の優先条件は、
まず環境(立地)、次に空間(住宅)

図表1は『住生活に関する世論調査』にある“ 住宅、立地・周辺環境で最も重視すること”という質問への回答です。回答総数の結果内訳では、最も高い回答割合を示したのが「立地の利便性(通勤・通学に便利な立地や、公共交通機関、医療・介護・福祉施設、日常的な買い物施設等へのアクセスの良さ)」の46.5%で突出しています。ついで、「住宅の広さ・間取り」の16.5%、「立地の安全性(地震・台風などの自然災害に対する安全性、犯罪・交通事故などに対する安全性など)」の14.6%が高い回答割合を示しています。この傾向は男女別、年齢別で詳細に見ても、大きな傾向としては変わりませんでした。

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当たり前のことかもしれませんが、住まいはクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を高めるための手段であり、そう考えれば利便性を重視した「どこで暮らすか」が重視されることは当然と言えます。利便性を含めた立地の優先の度合いは、「立地の安全性」14.6%+「立地の快適性」8.0%を合わせて69.1%と実に7割近くが重視していることが改めてわかります。一方で、建物を重視するという回答割合は「住宅の広さ・間取り」16.5%+「住宅の性能」8.2%などを合わせて28.4%で、立地に求める重視からすると建物に求めるものは相対的に低く、建物に対する重視度の中でも性能についてはさらに劣位であるという調査結果が確認できます。

次に、同調査にある“ 高品質住宅を形成するための対策”についての回答(図表2)を見てゆきます。ちなみに調査票に提示されている「住宅の質」の内容、“ 現在、政府では、住宅をより長く使っていくために、質の高い住宅(耐震性や断熱性に優れた住宅や、高齢者や障害者に配慮したバリアフリー設備のある住宅)の形成を推進しています。”にあるように、耐久性・省エネ性の高い住宅を指しています。

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回答総数の内訳から、「すでに対策を講じている」+「自主的に取り組みたい」と回答した群を質の高い住宅について” 導入積極派”、「行政からの支援があれば前向きに考えたい」と回答した群を” 条件付き導入派”、それ以外(※借家に住んでいるため自分の思うようにできない、を除く)を” 導入消極派”と分けると、積極派が18.0%、条件付き導入派が40.7% 、消極派が36.1%と分けられます。この3区分の場合は高品質住宅の積極的な導入需要はまだ18%ですが、条件付きを含めれば6割近くが高い品質の住宅を求めていることになります。

このように住宅の性能を単体のテーマとして切り出して聞けば、高い品質の住宅が欲しいと回答するのですが、立地を含めた住宅取得するという総合的な選択行動の中では、立地に関わる条件が優先されるという傾向が改めて確認できました。

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