シリーズ調査を読む#010
住宅の性能に対する消費者意識について考える

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建物(住宅)づくりにおける重視条件

先の調査で見たように、住宅を取得する際の総合的な条件の中では立地重視となるのですが、『2015年 注文住宅動向・トレンド調査(リクルート住まいカンパニー)』で建物(住まい空間)を作る際に絞り込んだ調査結果がリリースされています。

同調査によれば、住宅購入検討者が“ 家づくりに置いて重視する条件(図表3)”は、1位「耐震性に優れていること」、2位「間取り・プランが良いこと」、3位「断熱性・気密性に優れていること」、4位「耐久性に優れていること(住宅の寿命が長い)」、5位「収納が充実していること」と続いています。前述の内閣府の調査でも推察されたように、住宅空間のことだけを切り出して尋ねると住宅の性能を重視する傾向があることが、この調査結果でも見えてきます。

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ところで、全部で38項目ある選択肢で、エネルギーに関連する選択肢の回答割合のランキングは、「省エネルギー性能が優れている」が11位と“中位”にあり、さほど優先順位が高い条件となっていません。また「太陽光電池を搭載する」とか「蓄電池を搭載する」「HEMSを搭載する」といったエネルギー性能に関連する具体的な選択肢も、真ん中から下のポジションにあり、ここからもエネルギーに関連する条件の重視度は決して高くないと見えます。

省エネルギー性能に関する理解と認知

現在の住宅検討者にとって、この先スマートハウスやZEHを推進する上で必要な要素となる太陽光・蓄電池・HEMSの搭載といった条件は、さほど重視度が高くないことが読み取れましたが、ではその認知や中身の理解が進んでいないのでしょうか。

図表4は同調査にあるスマートハウス/ZEHの認知率です。図表5にある解説を示した上で回答者に「内容まで知っている」「名前だけは知っている」「名前も知らない」という3段階で尋ねたところ、認知(内容を知っている+名前を知っている)計は、太陽光発電・太陽光パネルで93.8%、スマートハウスで87.3%、HEMSで68.4%、ZEHで56.8%と何も過半数を超える結果となっており、特にZEHは2014年調査と比べても7ポイント以上回答割合が上昇しています。

誌面の都合で詳細は省きますが、同調査では住宅を建築したユーザーにスマートハウス、ZEH導入検討のきっかけを尋ねている質問がありますが、それによれば2014年と2015年の回答の違いで特徴的なことは、「売電、省エネなど経済的なメリット」や「節電、震災を契機にエネルギーを自宅でまかなう意識」といった回答が2014年比で減少する一方、「CMや新聞雑誌でスマートハウスに興味を持っていたから」が大きく伸びていることです。つまり認知の背景には情報の発信・受信頻度の高まりがあったと考えられるのです。

まとめ

今号では異なる二つの調査を組み合わせて読むことで、住宅の省エネルギー性能に対する、消費者の需要の強さを考えてみました。大きな需要動向として土地偏重が消えないことは、どんな暮らしをしたいかを考える上で避けては通れないものの、建物単体についてその性能とりわけ省エネルギーへの意識や認知は、関連するキーワードへの認知の変化から見ても、これからの住宅ニーズを掴む上で重要な要素となることは間違いないでしょう。

本誌読者はすでにご存知の通り、2020年までにすべての新築住宅を対象に省エネ新基準への適合の義務付けが決定されています。泣いても笑ってもいずれ対応を余儀なくされるわけですが、今回見たように消費者の認知の変化を考えるとき、「環境変化について行く」のではなく「環境変化をリードして行く」という姿勢を持ち、性能について自ら積極的に発信することで、需要をつかみビジネスチャンスをつかむことにつながると考えます。

(ハイアス総研 矢部)

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今回引用した調査(1)
『平成27年 住生活に関する世論調査(内閣府)』

http://survey.gov-online.go.jp/h27/h27-juuseikatsu/2-1.html

調査対象: 全国20歳以上の日本国籍を有する者 3,000人
有効回収数: 1,736人(回収率57.9%)
調査時期: 平成27年10月1日~10月11日(調査員による個別面接聴取)
調査目的: 住生活に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする。
調査項目: 住宅についての意識、空き家についての意識、近隣住民や地域との交
      流・つながりについての意識、高齢期の住宅、居住地についての意向

今回引用した調査(2)
『2015年 注文住宅動向・トレンド調査(リクルート住まいカンパニー)』

http://www.recruit-sumai.co.jp/data/151208_customhome_trend2015.pdf

調査対象: 下記条件を満たすマクロミルモニターの男女個人(全国)
  【 建築者】 1年以内に一戸建て(新築・建て替え注文住宅)を竣工した人
  【 検討者】 今後2年以内に一戸建て(新築・建て替え注文住宅)の購入を
        検討している人
有効回収数: 3,401サンプル(全国)
調査時期: 2015年9月5日(土)~9月25日(金)
調査目的: 注文住宅の建築者/検討者(建築予定者)の意識や行動の把握

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