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佐世保市は長崎市ほどではないにしろ、市街中心部まで山地が迫っている坂の多い街である。当該敷地も、敷地を縫うように南から西にかけて大きなカーブを描く坂道に面する土地に位置している。よって街からの標高は高く、普段見上げるビル群や街並みを見下ろすことができる特性があった。この敷地の特性を生かす必要があった。それは敷地と敷地外だけにとどまらず、もっとその先にある街並みにまでデザインの思考を飛ばす必要があった。この特性をより生かすように、生活の主スペースであるリビングや、ダイニングなどを2階に配置するプランとし、常に眼下の街並みが生活に飛び込んでくるようなシーンをこの住宅にトレースした。また雨の多い佐世保において、深い軒は適度に風景を切り取り、時に雨の日においては風景を情緒的に見せてくれる効果をもたらしている。
デザインは関係性の美学である。いわば関係性の取り方によって様態であるデザインは変わっていく。今回は遠く眼下に広がる街並みに標準を合わせ、高い解像度で生活と関係付けさせる試みである。これは慣例的な日常の中に違う回路を組み込むことで生活に新しい感情のリズムをつくりだすことに繋がる。これら一連の思考も「デザイン」である。