適正発注価格を知ることで利益を創出する
~CMS(コスト・マネジメント・システム)活用による粗利率向上の実例~

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はじめに

新設住宅着工戸数の減少は不可避な状況を迎えつつある住宅業界で、本年より一気に工務店・ビルダーから注目されている粗利率向上の仕組みがCMS(コスト・マネジメント・システム)です。CMSは『原価管理、削減のための管理ツール』としてリリースされ、積算、原価集計、発注・支払い管理などの機能を実装することから「積算ソフト」と間違われることもありましたが、その本質は全く異なります。

2015年のシステムリリース以降、「原価管理水準の向上」と「購買価格の低減」を現在の人材と体制でも実現できるよう、導入企業に向けて研修を重ねてきました。今回は、CMSを導入することで適正原価の把握とそれに見合った改善を実現し利益率を改善した事例をご紹介します。

床面積減少時代の原価見直し

2000年以降、新築住宅の床面積は減少の一途をたどっています。核家族化に代表される家族構成の変化、世帯所得の減少による取得住宅の狭小化などが要因として考えられますが、床面積が減少した分だけ工事原価が下がるかといえばそうではありません。住宅会社は受注価格が低下する分だけコストダウンを業者に要請しますが、業者からこれ以上の値引きは受け入れられないとはね付けられることも多くなっています。そこで住宅会社としては、適正な原価を実現するために図表1の様に材工の分解を適切に行うことで、各工種の床面積ごとの適正発注価格を把握する必要があるのです。

見積もり方法を変えることで適正原価を把握

現在、多くの住宅会社の見積もり方法は、例えば電気工事だと「コンセント1か所 ○○○円」というように一つの作業に必要な部材と工賃を合算した算出方法になっています。適正原価を把握するためには、そこを分解し『各工種に必要な標準的な材料費と手間賃(人工数×人工単価)を算出』、各業者からもその方法で見積もりを提出させることが必要です。この手順を踏むことで自社の標準単価を設定することで、各工種原価が適切であるか判定し、高い工事については材工分離の視点で根拠をもって業者と交渉を進めていくことができ、発注価格を引き下げることが出来るようになるのです。

CMSによるコストダウンの実現

こうした手順を研修という形でお伝えしてるのがCMSです。つまり、CMSは単なるシステムではなく、ノウハウなのです。CMSによる成果創出(コストダウン)の具体的な手順は、

(1)現状の実行予算精度・原価とのかい離の見える化
(2)コストダウンすべき項目の抽出
(3)コストダウンの折衝
(4)下がった価格を標準単価として登録
(5)現状の発注価格が適正価格であるか一定期間ごとに検証

となります。

(1)ではCMSのシステムに物件の原価までを登録することで自社の現在の原価管理水準が見える化されます。(初期研修(1)の内容)

(2)(3)の手法は「初期研修(2)」という2回目の研修で習得いただいています。

(4)(5)については弊社サポート担当者によるフォロー活動や初期研修後の定期研修会の中で、各社の積算・予算承認・発注・原価確認の業務フロー見直しまでサポートいたします。図表2は(2)を実施する際のワークシートですが研修参加者には自社の現状を確認しながら「今までの常識は非常識」という観点で今までの慣習にメスを入れていただいています。

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