シリーズ調査を読む#015
「第3回くらしと生活設計に関する調査(一般財団法人ゆうちょ財団)」から
持ち家を持つ4割が自宅の将来資産価値を悲観?

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住宅資産価値の維持向上に貢献するための
住宅不動産業者の役割を考える

今回紹介する調査は、「くらしと生活設計に関する調査」です。この調査の目的は、個人の生活設計や暮らしむきに関する考え方を調査することにより、個人金融に関する調査・研究に役立てることを目的と記されています。調査項目には消費生活について、クレジットカードの利用について、預貯金やNISAについてなど様々な金融に関する質問がある中で、「住居」について尋ねる項目も入っています。住居に関する質問には、借入額や住居の大きさや取得時期など基本的な質問の他に、「現在のお住まいについて、3年後のその資産価値はどうなると思いますか?」という設問があります。今回はその回答に着目して、個人の最大資産である住宅資産価値の維持向上に貢献するために住宅不動産業者が果たすことのできる役割を考えてみたいと思います。

持ち家の3年後の資産価値予測
~36.5%は下落と考えている~

調査報告書によれば、今回の調査では対象者の居住地域区分や年齢、世帯構成などその属性に偏りは見られない、つまり取り立てて不動産価格が下がりやすい地域の回答が多いというわけではない中で、実に4割近い回答者が今の持ち家の資産価値は「下がる」と回答しています。(図表1)対して「上がる」と回答した割合はわずか1.7%となっています。つまり、持ち家を持つ個人の多くは大切な資産の価値に対してかなり悲観的な見方をしていることが伺えます。

「平成28年度の都道府県地価調査」にある「上昇・横ばい・下落の地点数」の推移(図表2)を見ると、確かにまだ下落地点数が多数であるものの、上昇あるいは横ばいの地点数がここ3年で伸びている結果と比べると、調査に於ける「実感値」と違いを感じます。

自宅の資産価値がわからない。
~資産でありながらその価値を測る術がない?~

図表1の中で、もう一つ注目すべき点があります。それは、「わからない」という回答です。回答割合は実に36.1%となっていて、持ち家所有者の多くは自宅の資産価値について不透明な状態に置かれていることもわかります。

これは筆者の推測ですが、持ち家を取得する際、多くの方は「終の住処」として考えていることが一つの原因となっていることが背景にありそうです。つまり、最後まで自分とその家族が使う前提で、自分以外に売ったり貸したりすることを考える必要を日常から考えていないということです。これは米国などで見られるように、自宅が値上がりしたら売却してさらに良い家に住む、という発想とは真逆です。また、情報の開示という観点でも、最近の売却価格の動向がオープンで誰でもアクセスできる環境があるかないかという差もありそうです。

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