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ドイツでは、最新の高断熱住宅情報を収集するために、シュトゥットガルトの会社を訪問し、日本ではまだメジャーではないウッドファイバー断熱材の製造工場を見学しました。
ドイツ国内の断熱材市場においてウッドファイバーのシェアは5%程度ですが、新築木造住宅に限定すると約30%がウッドファイバー断熱材を使用しているそうです。
ウッドファイバーの特徴としては以下が挙げられます。
難燃性については、難燃剤を入れた断熱材よりも数値的には劣りますが、今回の訪欧の直前にあったロンドンでの構造マンション火災で被害を大きくした一因である、一度火がつくと燃え広がり方が予想できない石油系の断熱材に対して、ウッドファイバーは火がついても表面が炭化するだけで延焼しにくく、その燃え方も予測可能であることが特徴です。
加えて、同社で強調していた点は、ウッドファイバーの製造を持続可能な工程で行っており、地域経済、CO2の削減への貢献も大きいということでした。
訪問した工場は元々製材所として創業し、主要事業は住宅用の構造材の製造で、2011年よりウッドファイバー断熱材の製造を始めたそうです。使う木材は、工場の周辺50km圏内で生産されるトウヒ。ここから、構造材と断熱材、そして電気を作りだします。使用する原料の産地の範囲は、工場での生産規模とトウヒ林の再生速度を計算の上、持続可能なバランスを設定しています。ウッドファイバー断熱材は構造材をカットする時の端材からつくり、さらに細かいおが屑はバイオマス燃料に使用します。発電施設は8メガワットの発電力があ20,000人分の電力を供給することができるそうです。またバイオマスのボイラーで発生する水蒸気が、ウッドファイバーをつくる際に端材を柔らかくする時や断熱材をパネル状に固める時にも用いられるほか、発電機関の排熱も、暖房や給湯に利用し、広大な工場の敷地内は完全なオフグリッド状態(敷地内でエネルギーの自給自足ができている状態)となっていて、ドイツ国内でも画期的なメーカーと言われているということでした。持続可能な環境に優しい製造所として一つの完成形を見た思いがしました。
ウッドファイバーは性能と機能は申し分ないですが、日本での普及に向けてはコスト面の改善がポイントとなります。ドイツのように製品の性能に加え、環境に配慮した生産プロセスも国や市民からの評価の対象となることが、一般化への近道なのかもしれません。