2020年8月

バイデン氏有利で進む米大統領選

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回はアメリカ大統領選挙についてです。
共和党トランプ大統領の政策と民主党バイデン氏の政策、果たしてどちらが支持されるのでしょう。

 

■バイデン有利で進む米大統領選

2020年11月にアメリカ大統領選が行われます。
現職のトランプ大統領に挑むのは、民主党のジョー・バイデン氏です。
現時点では、「バイデン氏がトランプ大統領に対して優位に立っている」
というようなアメリカの世論調査を報じるニュースが目立ちますね。
日経新聞は「バイデン氏完勝か」というような記事を出しました。
↓↓↓

<「バイデン完勝」起きるか>
(2020年8月1日付 日本経済新聞)
『投票日まで3カ月というのに満場の選挙集会も支持者の熱狂も消えた米大統領選挙で、民主党の候補指名を確実にしたジョー・バイデン前副大統領の優勢が続く。(中略)
敵失に乗じたバイデン氏の圧勝か、終盤の猛烈な追い上げで大接戦をトランプ氏が制するか。荒っぽい予想だが、大統領選はこのどちらかに転ぶのではないか。』

バイデン氏の人気が高い、というよりは、トランプ大統領の人気が下がっていると言った方がいいでしょう。
トランプ大統領の最近の支持率は限りなく30%台に近づいていますが、
ここまで人気が下がった理由は、まずは新型コロナに対する対応が杜撰で、国内で感染を拡大させてしまったこと。そして黒人差別に対する抗議デモに対して手荒く対応したことが人気低下に拍車をかけているように見えます。

これが日経新聞記事のいうところの『敵失に乗じたバイデン氏の圧勝』となるわけですね。

 

■バイデン氏の基本政策は?

さて、もしバイデン氏が大統領になったらアメリカはどうなるでしょう。

まず共和党(トランプ大統領)と民主党(バイデン氏)の大きな政策の違いからいきます。
共和党が「小さな政府」を志向して、企業や富裕層を重視するのに対して、民主党は「大きな政府」を志向して、労働者や中・低所得者層を重視した政策を取ります。
なかでもバイデン氏は、「中道左派」といわれています。民主党候補で若者に人気のあったサンダース議員ほど左派的な政策は取らないものの、企業や富裕層への課税を強化して社会保障の充実や環境対策に力を入れるとしています。

バイデン氏はオバマ大統領の時の副大統領です。
ですからその政策はオバマ政権時のものに近いですね。基本的にはトランプ政権によってひっくり返されたオバマ政権時の政策に、ふたたび戻すことを基本理念にしていると言われています。

例えば税制改革です。
バイデン氏は民主党候補として「大きな政府」を志向していますので、
基本的に増税路線です。
法人税は、トランプ氏が35%だったものを21%に下げたのですが、それをまずは28%まで引き上げます。
所得税の最高税率は現在の37%から39.6%に、そして株式などのキャピタルゲイン税は現在の20%から39.6%に引き上げます。
総額で4兆ドル近い増税を行うとしています。

これは経済的にはブレーキをかけることになります。
これまで好調だったアメリカの株価も下落するのではという見る向きも多くあります。

トランプ大統領は、「バイデンが大統領になると景気は悪くなる」として、ここを攻めどころとしています。
バイデン氏とは逆にトランプ大統領は、「キャピタルゲイン税の最高税率を今の20%からさらに15%に引き下げる」として市場からの支持を得ようとしています。

 

■バイデンが大統領になると景気は悪くなるか?

トランプ大統領は、その言動やふるまいから大統領としての資質を問われることが多いのですが、経済政策に関してはまずまずの成果を上げてきたと思います。
法人減税や金融規制の緩和、「アメリカンファースト」として自国調達を徹底させるなど、アメリカ経済のためになりふりかまわず邁進してきた印象です。
結果、トランプ大統領が就任してからの4年間でアメリカの平均株価(ダウ)は10,000ドル近く上昇しました。

では、「株式市場にネガティブな影響を与えるだろう」と見られている
バイデン大統領の誕生が現実味を帯びてきた現在、株式市場は下落し始めているのか、というと・・・・、それほどでもないですよね。

これは、バイデン氏が左派といっても経済も重視する中道路線である、
という安心感があるためだと思います。

増税路線ではありますが、同時に景気刺激策も打ち出しています。
「バイアメリカン構想」といって、米企業から政府が調達をする予算として
4年間で約4,000億ドルもの巨費を投じるとしています。同時に製造業雇用の創出にも巨額の予算を充てる予定です。

また、バイデン氏が掲げる「国際協調路線」も好感されているようです。
例えば、対中政策。
バイデン氏も中国には厳しく対応するとはしていますが、その中身はだいぶ違います。
トランプ大統領が高い関税で脅したり、ハイテク企業を強制排除したりしているのに対して、バイデン氏は、不公正な取引は是正するものの基本的には協調路線です。中国との貿易戦争では、実はアメリカ経済も小さくない打撃を受けました。例えば製造業では、中国からの安価な素材や部品が入ってこなくなったことでサプライチェーンが分断されて、結果的に製造コストが上昇しました。中国製の日用品や衣料品なども値上がりしました。
これらのツケを払っていたのは実はアメリカの消費者だったりします。

「自国第一主義で強いアメリカ」から、「国際社会と協調していくアメリカ」となることで、他国との無用な摩擦が減ることが期待されているのだと思います。

さらに、新型コロナです。
これだけコロナで経済が大打撃を受けている中、もし、バイデン氏が自らが掲げる増税路線を先送りしたり、凍結させたとしても民主党支持層はそれほど失望したり反発したりしないのではないかと思います。もし、バイデンが増税政策を凍結したりしたら、「バイデン・サプライズ」として株高になるでしょうね。

 

■トランプ大統領と180度異なるバイデン氏の環境政策を評価する

日本にとっては「国際協調路線」を取るバイデン氏はやりやすいでしょう。安全保障面でも経済面でも、日本には良い影響はあってもそれほど悪い変化は起きないと思います。

私が個人的に歓迎したいのは、バイデン氏の環境対策です。
バイデン氏は、地球温暖化対策などに4年間で約2兆ドルを投じるとしています。
再生可能エネルギーへの投資を拡大する「クリーンエネルギー革命」を掲げ、2035年までに電力部門からの温暖化ガス排出量をゼロに抑えることを目標としています。
これら環境問題に対する姿勢はトランプ大統領とは180度異なりますね。
トランプ大統領は「地球温暖化はデマだ」として、パリ協定からも離脱して、自国の化石燃料関連産業界からの支持を得ていました。

もし、バイデン氏が大統領になったら、石油やガスなどの化石燃料関連銘柄は少なくない打撃を受けるでしょう。一方で、ESG投資(環境・社会・ガバナンスなどの要素を考慮した投資のこと)などは加速するかもしれません。

さて、これから大統領選は佳境を迎えます。
コロナの影響で熱狂的ではなく、静かな選挙戦になるかもしれませんが、
その分、両者の政策をじっくりと判断できるかもしれません。

トランプvsバイデン、さてどちらになるでしょうか。
しっかり見ていきたいと思います。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年8月18日 火曜日 18:09 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

セブン&アイ、米コンビニを2兆円買収、市場の評価は?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回は、セブン&アイ・ホールディングスのM&Aについてです。
なんかドラマがありそうな買収ですね。

 

■セブン&アイ社、アメリカで2兆円規模の買収

コロナ禍で企業活動が縮小している中、セブン&アイ・ホールディングスの積極的な事業戦略展開が話題です。2兆円超の買収額は直近では世界最大規模です。
↓↓↓

<セブン&アイ、米コンビニを2.2兆円で買収>
(2020年8月3日付 日本経済新聞)
『セブン&アイ・ホールディングスは3日、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を買収すると発表した。買収額は210億ドル(約2兆2000億円)。
今春の独占交渉では価格面で折り合わず断念したが、業績不振に陥ったマラソン側が実施した入札に改めて応じ競り勝った。』

セブン&アイ社は、北米市場でのコンビニエンスストア事業を『グループ全体の重要な成長ドライバー』と位置付けています。今回の買収はその一環ですね。

現在、アメリカのセブンイレブンは全米に約9,000店を展開していて、店舗数で全米1位です。今回買収する「スピードウェイ」は店舗数で3位の約4,000店。単純合計で約13,000店舗となり、2位の「アリメンテーション・カウチタード」(カナダ、約5,900店舗)を大きく引き離すことになります。

セブン&アイ社は、

『本件取引によって、7-Eleven,Inc.は米国の人口の多い50の都心部のうち47の地域に店舗網を保有し、成長ポテンシャルの大きい北米コンビニエンスストア市場において明確に業界リーダーとしての地位を確立することとなります。』(2020年8月3日付 ニュースリリースより)

としています。

 

■念願の買収成功にも関わらず市場の評価は・・・

今回のM&Aは復活案件です。2020年に入った頃に「両社が交渉に入った」という報道がありましたが、その後、どうやら買収価格で折り合わずセブン&アイ社が断念していました。

これが第一報の記事→
<セブン&アイ、米コンビニ買収へ独占交渉 1万3千店規模へ>
(2020年2月20日付 日本経済新聞)

これが破談の記事→
<セブン&アイ買収断念 店舗拡大戦略、高値が阻む>
(2020年3月6日付 日本経済新聞)

それが、新型コロナウイルスの拡大や原油安などの環境変化もあったのだろうと思いますが、最終的に当初提示額の220億ドルから210億ドルと、10億ドルも下がった額で合意できました。
まさに「念願の買収合意」だったのではないかと思います。

しかし、市場の評価はいまひとつです。
ニュースが流れた昨日(8月3日)のセブン&アイ社の株価は、前日比-4.8%も下落。年初来安値を更新しました。日経平均が2.2%も上昇する基調の日でしたので非常に目立ちましたね。

全米トップを実現する大型買収なのに、なぜ評価されないのでしょう?

 

■市場の評価は「割高」?

今回の買収案件を活かしてセブン&アイ社が描いている今後の事業戦略を市場は懐疑的に見ている、要するに、「期待するリターンに見合わない高い買い物だ」と見ている向きが多いということだと思います。

周知のとおり、日本国内のコンビニ市場がすでに飽和状態です。
これまでの出店拡大戦略では今後の成長は見込めません。
だからコンビニチェーンなどの流通大手各社は、EC(デジタル商取引)分野への対応とか、ファミリーマートのような伊藤忠商事による垂直統合とか様々な手を打ち始めています。

そんな中で、セブン&アイ社は、米国大手のライバルの買収という従来型のマーケット規模を追求する戦略に多額の投資をしました。この戦略は、自社の独自資源やノウハウを買収先につぎ込んで効率的に規模を拡大していくという、これまで大手小売事業者がM&Aでやってきたことの延長線上にあります。

既存の事業モデルはすでに終焉を迎えていて、もはや規模を追求する時代ではないと言われている小売事業界で、「日本が飽和したからアメリカ?」という感じです。

しかも、買収先の「スピードウェイ」は、「コンビニ併設型のガソリンスタンドチェーン」です。
どちらかというとガソリンスタンドが「主」でコンビニが「従」です。
これまた周知のとおり、ハイブリッド車による燃費向上やEV(電気自動車)の普及にともなって、すでにガソリンスタンドの店舗網はレガシー(過去の遺物)化すると見られています。

テスラがトヨタの時価総額を超える時代です。そんな時代に、ガソリンスタンドとコンビニ事業のチェーンで全米店舗網トップになるM&Aです、と言われても新味に乏しい、だから評価されていないのだろうと思います。

しかもその買収額が、安くなったと言っても210億ドル。
セブン&アイ社のリリースでは、節税効果や店舗の統廃合や資産の売却などで実質120億ドルくらいの買収だとして割安感を伝えていますが・・・。

さて、市場の評価とセブン&アイの目論見、どちらが正しいのでしょうね。

 

■セブン&アイという気骨ある組織に期待

M&A場合の企業価格の算定の目安のひとつに「利益年倍法」というのがあります。
例えば、「買収価格は、企業が上げている年間収益の10年分程度」といったものです。
「買収先企業の利益で投資額を何年で回収できるか」という考え方ですね。

セブン&アイ社のリリースによると、スピードウェイの2019年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は9.6億ドル。単純計算で、投資額210億ドルとすると22年、実質の投資額だとしている120億ドルだとしても12年くらいです。「10年分」というひとつの目安に照らしてもちょっと高い印象ですね。

それでもセブン&アイ社は投資しました。世の中がデジタル化していることもガソリンスタンドが時代遅れであることも当然わかっているに決まっています。その上での投資です。

つまりこれは、「セブンイレブンならスピードウェイの拠点網などの経営資源や顧客資産を活かして、新たなリアル小売りビジネスを創造することができる」という自信の表れではないかと思うのです。

「従来型」か「新時代対応」か、という二択ではなく、
「レガシーを活かして」+「新しい社会にチャレンジする」という感じでしょうか。
例えば、ECサイトで注文したものを受け取る拠点として店舗を活用する、とかですね。

なにより、私がこの記事を見て感じたのは「セブンという組織はすごいな」ということでした。
セブン&アイ・ホールディングスは、鈴木敏文さんというカリスマ的リーダーが引っ張ってきた会社ではありますが、鈴木会長はすでにいません。今は「巨大なサラリーマン組織」です。
ソフトバンクの孫さんとか楽天の三木谷さんのような意思決定の速いカリスマオーナーがいるような会社ではありません。
社内で議論や試算を積み上げた上での意思決定だと思います。
おそらく異論もあったことでしょう。だから一度見送りにもなりました。
それでも諦めずに成約までこぎつけた。これはすごいことだと思います。
気骨のある人たちがいる組織なのだろうと感じ入りました。

そんな気骨のある日本の組織がアメリカで展開するであろう「新しいコンビニ事業」に、実は私はひそかに期待しているのです。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年8月4日 火曜日 16:33 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

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