2020年9月

ヤマダがヒノキヤをTOB 日本の市場で起きる寡占化とは?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今日は、市場縮小と寡占化についてです。
これからそこかしこで資本の集約が始まるのでしょうね。
さて、個店はどうすればよいのでしょうか。

 

■住宅業界で資本集約が始まっている

私は住宅事業支援の仕事をしています。「住宅業界でこれからこういうことが起きますよ」と、よく見聞きしていた話がいよいよ現実化してきたなと感じます。
↓↓↓

<ヤマダ、ヒノキヤにTOB 最大126億円>
(2020年9月9日付 日本経済新聞)
『ヤマダ電機は8日、住宅メーカーのヒノキヤグループをTOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。発行済み株式の50.1%を取得する方針で、投資額は最大で126億円となる見通し。ヤマダは本業の家電量販に加え家具や住宅事業を収益の柱として育成する考えで、ヒノキヤグループが得意とする冷暖房システムなどを活用する。』

これは決して経営不振に陥った会社を救済するようなM&Aではありません。ヒノキヤグループの直近の業績は、売上1,240億円(前期比5.4%増)、
当期純利益35億円(同48.3%増)ということで、かなり好調です。
これはお互いの得意分野を活かして、さらに強くなっていこうとするM&Aです。

ヤマダ電機は近年、本業の家電量販事業に加えて住宅事業に本格的に取り組んできました。ヤマダグループの傘下には、ヤマダホームズとレオハウスがありますが、2社でおよそ年間4,000棟の着工があります。ヒノキヤも年間4,000棟規模ですので、今回のM&Aにより単純合計で年間8,000棟規模のグループになります。

これで新築戸建市場では、積水ハウス、大和ハウス、一条工務店、タマホームといった大手と肩を並べる規模になりますね。

また、ヤマダグループもヒノキヤグループも傘下に部材会社があります。
お互いに販路を拡大することで、生産規模も拡充し、生産効率を上げて単位コストを下げる、といういわゆる「規模の経済」を狙ったM&Aでもあります。ヤマダ、ヒノキヤ双方にとって良いM&Aだと思いますね。

 

■日本の市場で起きる「寡占化」とは?

住宅業界ではこれからもこういった話が増えていくでしょう。エリアを統合するような水平型のM&Aや、商流の川上と川下が統合するような垂直型のM&Aなど、資本集約が進んでいきます。
そのようにして、住宅市場のプレーヤーの数は集約されていき、地域ごとの各個社別の戦いからグループ間の戦いになっていくでしょう。

このように市場を構成するプレーヤー(事業者)が集約されていって、上位の主要プレーヤーによって市場が支配されていくことを「寡占化」といいます。一般的に、市場が成熟もしくは縮小を始めるくらいの段階になると寡占化が起きると言われています。

持ち家戸建住宅の新築着工棟数は、年々緩やかに減少しています。
20年ほど前は年間40万戸ほど着工がありましたが、最近は30万戸を切っています。2019年は28万8千戸でした。そして、この先、住宅購入層の人口が減少していくにつれ、減少スピードは加速していくと見られていて、2040年頃にはさらに今より4割ほど市場が縮小するという予想もあるくらいです。

市場が4割縮小すると何が起きるでしょうか?
市場を構成するプレーヤーの売上が一律に4割落ちるわけではありません。
4割のプレーヤーが市場から退場させられるのです。勝ち残った一部の業界大手や資本集約したグループ数社で市場をシェアするようになるのです。それが寡占化です。

 

■なぜ個店は大規模事業者に寡占化されてしまうのか?

この、市場の寡占化が起きているのは住宅業界だけではありません。
日本の市場そのものが成熟した市場です。人口減少を伴う少子高齢化で多くの市場は縮小していきます。

魚屋さん、肉屋さん、八百屋さん、時計屋さんとか洋品館など、個店で構成されていた街の商店街は、すでに大型スーパーやコンビニの台頭によって市場から退場させられました。
小売業界全体で見ても、アマゾンやネット通販大手などの大規模資本による寡占化が今も進行中です。

飲食業界でも同じです。チェーン居酒屋やファミレスなど、効率的に合理化された運営オペレーションを持つ店舗に、個店のレストランが対抗していくのは大変なことです。

経済を回すプレーヤーがどんどん集約されて、大規模な事業者によって生産と供給が効率的になされるようになることは消費者にとって悪いことではありません。より良いものがより安く手に入れることが出来るようになるわけですからね。

一方で、地域や街ごとの特色は失われていきます。画一的な市場になります。都市部ではすでにどの駅前も同じような大手やチェーンストアの看板ばかりです。

昔を懐かしむわけではありませんが、個人的には地域経済は地域のプレーヤーが回している方がいいと考えています。特に、外食とか小売りとかはその地域の特産を活かしたものに魅力を感じます。
日本の各地が持つ風土や文化に合ったものが、地域をよく知るプレーヤーによって供給され、それに価値を感じる人が購買する。そうして成立している地域が理想的な姿ではないかと思うのです。

そもそも、なぜ個店が大規模資本に寡占化されてしまうのかというと、まず生産性が低いからです。そして大規模資本にはない特色を出せていないからです。
大規模資本は、最新のテクノロジーを取り入れることが出来て、生産工程には無駄がなく、規模の経済性を発揮することで生産原価も低い、そしてマーケティング技術も高いので効率的に顧客を獲得していきます。

そんな大規模資本に対抗していくためには、大規模資本にはない特色を打ち出す必要があります。
体力勝負の価格競争では勝てませんので、自社にしかない強みを形にして、少し上の価格帯で勝ち残っていくべきです。そのようにして小規模なりに生産性を上げていくしかないのです。

 

■頑張れ、地元の工務店

話を住宅産業に戻します。
新築戸建て住宅市場では大手企業の市場シェアは2割ほどで、残りのおよそ8割は地域に根差して事業を行っている、「地元の工務店」と呼ばれる小規模なプレーヤーたちが担っています。

住宅事業は地域密着産業です。「地元の工務店」の中には、地域の風土、地域の文化に合ったこだわりの家づくりをしている会社が多くあります。住宅にとって大事な耐震性能や断熱性能、耐久性能でも、決して大手に見劣りしない家を丁寧に作っています。

しかし、良いものを作っているのだから高くて当たり前、というのではお客様はやってきません。品質を落とさずにコストを抑え、生産性を上げる努力を続ける必要はあるでしょう。

課題は生産性なのだから、生産性高いやり方を学び、自社内に取り込むことが出来れば必ず課題は解決できます。なにより中小工務店に足りていないのは、それを実行する「人財」です。経営者が自ら率先垂範で頑張るのはもちろん大事ですが、一人でやれることには限界があります。
有望な「人財」の採用と育成は経営者の最も重要な仕事のひとつです。意欲のある「人財」は、社会貢献度が高くて、自らも成長できる環境に身を置きたがるものです。
経営者は、社員に高い志と新しいものを取り入れる柔軟な思考を示してあげていただきたい。そして会社が成長した先にある夢を語っていただきたい。優秀な「人財」はそんな経営者の下に集まるものです。

住宅市場の8割を占め、地域の住環境を支えている地元の工務店。ここを市場の縮小とともに枯らしてしまうのではなく、成長させることが地域経済にとってとても大事なことだと思います。

地域の経済は地域のプレーヤーで回す。私たち支援事業者も微力ながらそこに少しでも貢献できればと思っています。

今回は以上です。

2020年9月15日 火曜日 17:33 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

安倍首相、辞任 評価が分かれるアベノミクスを振り返る

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
安倍首相が辞任しました。安倍政権の看板政策「アベノミクス」を振り返ってみたいと思います。

 

■安倍首相、辞任

今週のトップニュースといえば、こちらでしょう。
安倍首相、志半ばで辞任です。
↓↓↓

<安倍首相が辞任 持病再発で職務困難>
(2020年8月29日付 日本経済新聞)
『安倍晋三首相(自民党総裁)は28日夕、首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し「体力が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と説明した。新総裁が決まり次第、内閣総辞職する。』

持病の再発ということで致し方ないことだと思います。
安倍首相にとっては、ご自身が「必ず自分の手で成し遂げる」としていた日本人拉致問題や北方領土問題を解決できなかったこと、そして政治的理念でもあった憲法改正にも手をつけられなかったことは無念であっただろうと思います。

評価する声、評価しない声、安倍首相ほど賛否が分かれる政治家もいないと思いますが、それくらい存在感があったということでしょう。
まずは7年8か月もの間、国のトップという重責を担われたことに一国民として感謝したいと思います。
お疲れ様でした。

 

■評価が分かれるアベノミクス

安倍政権の看板政策といえば、「アベノミクス」。
これも評価が分かれるところです。

「金融緩和」+「財政出動」+「成長戦略」。
これを「アベノミクス三本の矢」として政策を打ち出していきました。

金融緩和でマネーストックを増加してデフレを抑制するとともに、円高を是正する、財政出動で需要を喚起して景気回復を目指しました。
これらの政策は企業の後押しとなり、企業業績は拡大。結果、安倍首相が就任した当時1万円程度だった日経平均株価は2万3千円と2倍以上に上がりました。

日本企業の業績の回復に伴って雇用も拡大。有効求人倍率は上がり、失業率は下がりました。コロナ前の2019年後半には失業率2.2%と過去最低水準にまで下げることができました。

日本企業のキャッシュフローは増大し、内部留保も増えました。
これも「日本企業はお金をため込みすぎ」などと批判も多かったのですが、結果として日本の大手企業は新型コロナで経済活動が停滞しても持ちこたえられるだけの耐性を持つことが出来ました。これは幸いだったと思います。

「安倍首相辞任」の報を受けて市場は動揺しました。
8月28日の午後2時頃から日経平均株価は一気に600円ほど下げました。
国債が売られ、一時的に長期金利は上昇、円も急伸しました。

それが、週が明けて31日午前、株価は再び上昇し、市場は元の平穏さを取り戻しました。
これは、経済政策や新型コロナウイルス対策など安倍政権の基本路線を引き継ぐとみられる菅義偉官房長官が出馬を表明したからでしょう。

これら市場の動きは安倍政権の一連の経済政策が、株式市場の、特に影響力の大きい海外投資家などから評価されているということだと思います。

 

■アベノミクスが失速した要因

ただ、アベノミクスはスタートこそ良かったものの、明らかに後半は失速しました。
GDPの実質成長率は、就任当初こそ2%を超えていたものの、2度の消費増税のたびにマイナスに転じます。そして最後はコロナによって結局GDPは安倍政権前の水準まで落ちでしまいました。
安倍首相任期中の実質成長率の平均は1.1%だったようです。

金融緩和をどれだけ続けても、毎年膨大な財政出動をしても、需要はなかなか喚起されません。物価2%上昇のマイルドインフレの目標にも届かず、最後まで経済回復の軌道に乗せ切れませんでした。
副作用として、市場の買い支えで日銀の資産が膨張しましたし、大きな財政支出を続けたことで国の負債を増やしました。

これはアベノミクスが失敗だったというよりも、日本が抱えている人口減少と少子高齢化という経済拡大にとってはマイナスに働くパワーが強すぎたのだろうと思います。この経済的にものすごいマイナスのパワーを持つ構造的な問題に対しては、本質的な日本経済の構造改革が必要だったのでしょう。
ただ、そんなことはアベノミクスを設計した安倍政権のブレインのみなさんも当然わかっていたことで、当初から、「金融緩和」は現下のデフレを抑えるための対症療法、「財政出動」は需要喚起の呼び水、本丸は産業構造を変える「成長戦略」、としていました。

いくつか打ち出した「成長戦略」で最も上手くいったのは「観光立国」への転換でしょう。ビザ発給要件の緩和などで、訪日外国人を年間800万人程度から3,000万人超へと4倍近くに増やしました。(これもコロナで吹き飛んでしまいましたが・・・)

しかし、それ以外はいまひとつです。「デジタル社会化」への対応は他国に比べても明らかに遅れていますし、廃業率と開業率も目標の10%からかけ離れ、産業の新陳代謝も起きていません。日本経済の問題点である低生産性も大きな改善は見られていません。

『アベノミクス失速』としているどの記事や評論を読んでも、3つ目の矢である「成長戦略」の難しさに触れています。かように産業構造を変えて成長軌道に乗せるというのは難しいことなのだと感じざるを得ません。

 

■次期政権に期待するもの

さて、次の政権です。
次期政権は、「新型コロナ対策から東京オリンピックへの道すじをつける内閣」とでもなるでしょうか。
新型コロナへの対応の重要性から「政治の切れ目は作れない」ということで、スピードを重視して党大会ではなく両院議員総会で次期総裁を選ぶことになりそうです。そうなると次期総裁の任期は21年9月までの1年間です。

だから早くも「次の次」の話が出ているくらいですね。
もし、次期政権が短期政権を前提としたものになると、政策の話よりも政局の話がメインになってしまわないか、ということが心配なところです。

市場は政治的な停滞に失望します。市場が期待しているのは「これなら日本企業はより強くなっていくな」という期待が膨らむような成長戦略です。

安倍政権が7年8か月かかっても軌道に乗せることが出来なかった「成長戦略」は、長期的な視点が必要です。次期政権はコロナ対応で大変だとは思いますが、どうか短期的な対策だけでなく、長期にわたる大きな方向性も示してもらいたいものだと思います。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年9月1日 火曜日 17:06 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

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