企業はもうけ過ぎ?法人税控除で私たちの給与は上がるか?

今回は私たちの給与について、大きな視点で見てみたいと思います。

■「社員の給与を上げたら法人税を下げます!」

景気対策に重点を置いている安倍政権。今年の税制改正でも景気浮揚効果を狙ったものが多くなりそうですね。

<政府・自民、給与増で法人減税 雇用促進と組み合わせ>(2013年1月9日 日本経済新聞)
『政府・自民党は、2013年度税制改正で企業の雇用増や給与引き上げを促す新たな減税制度を設ける方針を固めた。企業が雇用や給与を増やした場合、給与の支払総額の増加分に見合う一定割合を法人税額から差し引く案などを検討する。安倍政権が最も重視する経済再生を税制面から後押しする施策として、11日にまとめる緊急経済対策にも盛り込む。』

日本企業の国際競争力を高めるために、「高い」と言われている法人税を下げようという議論があります。今回の案は、単に法人税を下げるのではなくて給与額の増加に応じて減税するというものです。
これはなかなかいいですね。
会社の儲けを税金として取るのではなくて、社員へ還元することになります。
私たちの給与が増えて、生活にゆとりが出て、消費が増えて、さらに景気がよくなればまた企業が儲かる。結果として総合的に税収が上がるということを政府は期待しているわけですね。

企業の儲けの分配先が変わることで私たちの給与が上がる?かもしれません。
さて本当にそうなるでしょうかね?

■どうしたら私たちの給与は上がるのか?

結論から言えば、税制を変えたくらいではそう簡単に私たちの給与が上がらないでしょう。
大企業はともかくとして、中小企業の8割は赤字でそもそも法人税を払っていませんしね。

では、私たちの給与はどうしたら上がるのでしょう?
ちょっと算数をしながら整理してみたいと思います。

まず、会社にとっての「社員一人当たりの給与」は、「支払給与総額」を「社員数」で割ったものですね。
式にすると、
【 社員一人あたりの給与額=給与総額÷社員数 】
です。
私たちの給与が上がるとは、この「社員一人あたりの給与額」が上がることですね。

この式を「会社の儲け(付加価値)」で分解してみます。

【 社員一人あたりの給与額=1(給与総額÷会社の儲け)×2(会社の儲け÷社員数) 】

1項は、「会社の儲けの内、どれだけを給与として社員に払ったか」というもの。これは「労働分配率」といいます。2の項は、「社員ひとりあたりどれだけの儲けを上げているか」というもの。これは「労働生産性」といいます。

つまり、
【 社員一人当たりの給与額=労働分配率×労働生産性 】
となります。

日本の労働分配率と労働生産性を海外の先進諸国と比較してみます。
日本の労働分配率はもともと高くて60%以上あったものが、2000年に入った頃からは低下傾向になり、2006年には52%程度とほぼ先進諸国と同じような水準になりました。ちなみに、アメリカ57%、イギリス56%、フランス52%、ドイツ49%です。(OECD資料より:所得には名目GDPを使用)

労働生産性は、2011年時点で日本は、73千ドル(約780万円)です。
これはほぼOECDの平均値で34か国中19位です。(ちなみに20位のギリシャも73千ドル)
1位はルクセンブルク126千ドル、2位ノルウエー120千ドル。3位アメリカ106千ドルです。
日本は、フランス(6位87千ドル)、ドイツ(15位:81千ドル)、イギリス(18位:76千ドル)よりも低い水準にあります。
(OECD資料より:所得は購買力平価調整後のGDPを使用)

■まとめ:給与を上げるには自分の稼ぎを上げること

まとめると、日本の労働分配率は、下がっては来ていますがもともと高かったので今は先進諸国並みです。
一方、労働生産性はそれほど高くありません。ギリシャ並みです。

分配率が低いなら「企業は儲かった額をもっと給与に反映しろ!」と言えますが、そうではなくて生産性が低いのですから「ひとりひとりがもっと儲けましょう!」ということになります。

つまり、私たちが給与をもっともらうためには、会社に分配を変えてもらうのではなくてもっと稼がないといけないということです。
皆さんは、自分がいくら稼いで、そこからいくら給与をもらっているかを掴んでいますか?
経営者に近い方や、業績連動の年棒制で働いていらっしゃる方などは、いつも自分が会社にもたらした稼ぎを掴んでいると思います。
そういう方は「給与を上げるには生産性を上げるしかない」と実感しているのではないでしょうか。

でも、定期昇給の方や事務職の方、公務員の方、定額の派遣やパート・アルバイトの方などは「自分の稼ぎ」はなかなか意識できる環境ではないと思います。
でも基本的には、給与は「自分がいくら稼ぎをもたらしているか」で決まるのです。

冒頭の法人税の雇用減税についてです。
儲かってもいないのに法人税を減らすために給与を増やすという会社はほぼないでしょう。
まずは会社が儲かること。それからその儲けを、節税になるのなら税金よりも社員の給与を上げようか、とか雇用を増やそうかとなるのが普通です。
自分の給与を上げようと思うなら自分が稼ぐ額を増やせばいいだけの話ということですね。

人口減少社会にある日本では、みんなが生産性を上げないと国の稼ぎ(GDP)も増えません。ある意味わかりやすくていいですね。頑張りましょうか!

2013年1月22日 火曜日 12:17 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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