今、なぜ賃貸住宅建設が増えているのか?

私、賃貸マンション建設などの土地活用のコンサルティングをやっていた時期がありました。
ですので、賃貸の建設動向はいつも気にしているのですが、今また賃貸建設がブームのようですね。

賃貸アパートや賃貸マンションの建設が増えているようです。

<賃貸住宅、建設が急増 昨年度比15%増>

(平成26年6月30日付 日本経済新聞)
『住宅市場で賃貸物件の建設が急増している。2013年度は新設戸数が前年度比15%増えて5年ぶりの高水準となり、今年度も増加が続く。都市部の地価持ち直しで生命保険会社などの投資マネーが流入しているほか、相続税増税を控えた個人の節税投資もみられる。高齢者向けの賃貸物件も増えており、住宅市場の下支え役となっている。』

賃貸住宅は、2013年4月~2014年3月までの一年間で37万戸が新しく建てられました。前年対比で15%の増加です。
賃貸住宅はリーマンショック前にはおおよそ年間45万戸~50万戸程度建っていましたが、リーマンショックの翌年(2010年)に30万戸を割り込みました。それがようやくここ1~2年で戻ってきた感じですね。
増加基調は2014年度になっても変わっていません。2014年4月は、持家が前年同月比16%減少する中、賃貸住宅は12%増加しました。これで賃貸住宅の新設着工は前年同月比プラスが14か月も続くという好調ぶりです。

■賃貸建設が増加している理由は?

なぜ今、賃貸住宅建設が増加しているのでしょうか。
今回の賃貸住宅建設ブームの要因を一言でいうと、
「きっかけは相続税、決め手は消費税と建築費上昇、背景には金余り」
というところでしょうか。

まず「相続税」です。
資産家の方たちが賃貸マンションを保有する動機で最も多いのは「節税」です。市街地に遊んでいる土地を持っている地主さんや多額の現金を保有している資産家の人たちが賃貸マンションを所有すると固定資産税や相続税がぐっと少なくなります。
条件によってどれだけ相続税が少なくなるかは変わりますが、例えば、3億円くらいの課税資産がある方が1億円くらいの賃貸マンションを建てた瞬間に相続税が1,000万円以上少なくなることもあります。

その相続税が2015年1月から増税になることが決まっています。これは相続税がかかるくらいの資産を持つ方にとっては一大事なんです。「このままだと大変だ!」ということで、いろいろ相続税対策を考える中で「賃貸マンションも検討してみようかな。」と考える方が確実に増えているのです。

そこに「消費税の増税」と「建築費の上昇」が背中を押してきます。賃貸住宅は建築価格が数千万から1億円以上とかの高額になります。消費税は建物にかかってきますが、賃貸物件建設において消費増税のインパクトは大きいものがあります。
さらに今は人手不足や資材価格の値上がりなどで建築費自体も上昇傾向にあります。
「建築費がどんどん上がっている中、消費税も10%になりますよ!」となりますので、「今でしょ」感がすごいわけですね。

そして、これらの背景には金融緩和でだぶついている投資マネーもあります。貸し出し先に困っている銀行もいます。お金が余っているのでアパートマンション建設ローンも金利も低いままです。今は賃貸住宅を建築するための資金を調達するのがそれほど難しくない環境なのです。

■賃貸住宅保有はメリットばかり?気を付けることは?

賃貸住宅は、資産家や地主さんにとっては確かにメリットがあります。
遊休地を持っている人なら、建てた瞬間に固定資産税は6分の1(都市計画税は3分の1)になるし、相続税も大幅に減らすことができます。そして家賃収入も毎月入ってきます。
相続税や消費税の増税や建築費の高騰を前にして、資金調達も低金利で簡単に出来るとなれば建てる側にとって今のタイミングはとても良いということになります。

しかし、当然ですが、賃貸住宅を建てる事は良いことばかりではありません。気を付けなければならないことがあります。
ポイントは「賃貸は事業である」ということです。
当たり前のことですが、建てて終わりではなく、建ててからが賃貸経営のスタートです。
賃貸住宅を建てて節税が出来たとしても、毎月の賃貸収支が赤字になって困っている地主さんは数多くいらっしゃいます。
一番気をつけなければならないことは「空室」です。
賃貸を建てても空室ばかりで家賃収入がなければ建設資金の返済や税金の支払いが出来なくなってしまいます。
今、賃貸住宅の空室率は全国平均で19.0%です。
全国の空き室家総数は約750万戸でその内約400万戸が賃貸住宅です。(HOME’S調べ)

■賃貸住宅建設は市場調査と企画が大事

今、日本は住宅が供給過剰な状態なのです。
いくら、「賃貸でもいい」という意識変化が起きていることや家を買えない人が増えていて賃貸需要が増えているといっても、これから人口がどんどん減っていく中で、すでに400万戸も空いている賃貸住宅を毎年40万戸程度新たに供給していくわけです。「建てれば入る」という時代ではありませんから、決して簡単に満室経営ができるわけではありません。

何もない田舎の田んぼの真ん中にワンルームマンションを建てても誰も入居しませんよね。

・企画する賃貸住宅は、学生向けか、ファミリー向けか、もしくは高齢者向けなのか。
・それは市場に見合った間取りと設備で、適正な家賃設定なのか。
・もし家賃が下がったり、ある程度空室が出たりしてもローン返済が継続できるゆとりある事業計画なのか。

必ず建築前に立地の市場調査と安全をみた事業計画を立てた上で建築の意思決定をしていただきたいと思います。賃貸建築を提案してくる会社さんには、必ず市場調査と事業計画を提出してもらった上で、出来れば専門的知識と経験のある第三者(不動産管理会社さんとか税理士さんとかFPさんなど)にその計画を見てもらった方がいいと思います。

■家賃保証を過信しないように

「空き室が出たとしても大手企業さんが一括で借り上げてくれるから安心」という方がいます。
いわゆる「30年一括借り上げ」とか「家賃保証」とか呼ばれる制度ですが、「これがあるから計画は何でもいい」と過信はしないでください。空き家だらけになった物件をずっと赤字でも借りてくれるわけがありません。定期的な家賃の見直し条項などが必ず付いています。

まず、立地に見合った企画と無理のない事業計画が大前提です。その上で入居の入れ替え時などの一時的な空室対策くらいの位置づけで一括借り上げを付けるくらいがいいと思います。

節税目的だけで建てるのはお勧めしませんが、しっかり検討した上であれば賃貸経営のメリットはとても大きなものがあります。
いくら「今でしょ!」と言われたとしても、どうぞ焦らずにしっかりと企画を吟味して、後悔しない賃貸経営をなさってくださいね。

今回は以上です。
もっと日本がよくなりますように。

2014年7月1日 火曜日 15:00 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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