サービス産業で働く私たちは明るい未来が描けるのか?

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「日本のサービス業は生産性が低い」と言われています。
こういう動きがサービス業の生産性向上の一助になるといいですね。
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<サービスの技能を競える国に>

(平成26年8月26日付 日本経済新聞)
『接客など対人サービス分野を中心に、身につけた技能のレベルを判定する制度を充実させるべきだ――。職業能力開発のあり方を議論する厚生労働省の有識者研究会がそんな中間報告をまとめた。提言を歓迎したい。職業能力を評価する仕組みが整えば技能を磨く励みになる。』

日本の産業構造におけるサービス産業の比率は年々高まってきています。
経済産業省によると、GDP(国内総生産)の約7割弱、雇用の面から見ても同じく約7割弱がサービス産業で働いています。
日本経済を成長させていくことを考えた時に、GDPの7割を占めるサービス産業の拡大と生産性の向上はとても重要なテーマということになります。

ただ、様々な調査で言われている通り、製造業などと比べると日本のサービス産業の生産性は高くはありません。サービス産業の中でも、通信業や情報サービス業、レンタカー業、労働派遣サービスなどは成長性が高く付加価値額も大きいのですが、小売業、飲食業、宿泊業などでは成長性も付加価値額も低く、生産性でみるとアメリカの5割程度にとどまっているというデータもあります。

前出の新聞記事は、日本が誇る製造業の生産性を高めてきた「国による技能検定制度」をサービス業でも展開していこうという試みです。
あいまいであるサービス技能を評価するという制度が広がっていけば、製造業がそうであったように、サービス業でも生産性の向上につながるかもしれませんね。

■生産性の向上、分母を減らすか分子を増やすか?

内閣府の調査によると、サービス産業の労働生産上昇率は1990年代、2000年代ともにマイナスです。約20年間にわたり生産性がマイナスであるということはサービス産業で働く人たちの給料はこの間ほとんど上がっていないのでは?とも推察されます。
長期デフレだったこの20年間で製造業とサービス業の生産性はさらに広がっているようです。
海外に移転したり、国内人員を削減したりして効率化していった製造業の賃金下落が小幅であったのに対して、国内で雇用を増やしていったサービス業は長期デフレの影響をモロに受けた格好になります。

ただ、日本のサービス業の生産性向上を考えたときに留意しておきたい点があります。
ちょっと整理します。
まず、「生産性」の定義ですが、ざっくりいうと以下の通りですね。

生産性=付加価値額/総労働量

分母の「総労働量」とは「労働者数×労働時間」、分子の「付加価値額」とは「名目GDP」のことです。
このように「生産性」というのはパーセンテージで表すものです。
生産性を高めよう、ということは、分母をいかに小さくして、分子をいかに大きくするかということを考えることです。

そうなると、よくありがちなのが、分母に着目して、コストを削減したり、IT化やチェーン化を進めて合理的にしたりするという「効率向上」ばかりに目が向いてしまうことです。
確かに、サービス業は中小・零細企業が多くて、チェーン化もされていない業種も多いし、経営資源の乏しさからIT投資も進んでいないという面はあります。
でも、私はそれ以上に日本のサービス業においては分子の「付加価値向上」が
重要だと思います。

なぜなら、「おもてなし文化」を持つ日本の小売業などの接客業の対応品質は
世界でも有数のものだと思うからです。

■サービスに報酬を払うという文化がない日本

サービス産業生産性協議会が「サービスの日米比較」の調査を実施しています。
日米両国に滞在経験のある日本人・米国人を対象に品質や価格について、日米のどちらのサービスがどの程度高いと感じているかを定量的に集計していますが、それによると全サービスの単純平均で日本のサービスの方が5 ~ 8 %程度「質が高い」という結果が出ています。
特に、地下鉄、タクシー、航空旅客、コンビニエンスストアで15 ~ 20%程度、宅配便、郵便、理美容等で5 ~ 10 %程度日本のサービス品質が高い、となっています。

日本のサービス産業の対応品質への評価は世界的にみても高いのになぜ生産性が低いのでしょうか?
それは日本のサービス価格がデフレの影響を受けて下落して割安になってしまっている、サービスが対価に反映されておらず稼げていない、ということだと思います。

サービスを行う際の気配りの良さや信頼性などは目には見えないものです。
日本はこの目には見えないものの世界から称賛されるサービス品質があります。
いわば「無形資産」とも言ってもいいものですね。
この無形資産が日本の国内市場ではあまり評価されていないわけです。
「サービス=タダ」という感覚がある日本人にはサービスを評価して、対価を支払うという文化がないことも原因があるのではないかと思います。

私は、銀行員時代にちょっとだけ海外で生活していましたが、欧米では飲食店でも小売店でもホテルでもサービスのグレードによってカテゴリーがはっきり分かれています。サービスがいいものはとてつもなく高かったりするし、逆に大衆的で安いものにはサービスという概念がなかったりします。
店員さんは挨拶もせず、果てしなく不愛想だったりします。
銀行にいっても企画スタッフやマネージャーはスーツを着ていますが、窓口行員はジーンズだったりします。
当然、スーツとジーンズの違いは、雇用体系や報酬の違いです。

日本はどこでも対応品質が総じて高い。高級料亭でのサービス品質が高いのはもちろんですが、ファミリーレストランでも低価格な飲食店でもきちんとした接客教育がなされています。お客さん側もそういう対応品質をどんなカテゴリーのお店に対しても求めます。
「低価格ビジネスホテル」であっても、「一皿200円均一」みたいな居酒屋でも、「接客態度がなっていない。店長だせ!」などと怒ったりする人もいます。

欧米では支払う対価に応じて対応に差をつけるのが当たり前です。
でも日本ではどんなカテゴリーであってもちゃんと挨拶をするし、きちんとしたサービスを提供します。たとえそれが報酬に反映されなくても。

■サービス業を稼げる産業に

長きにわたるデフレの影響を受けてきたサービス業ですが、いよいよ日本経済もデフレから脱する気配が見えてきています。どこの企業も、「値下げからの結果として賃下げ」から、「人手確保のための賃上げから結果として値上げ」という方向になりつつあります。
この機会に高い品質のサービスを徹底して、ちょっと上のカテゴリー設定をして、提供価格を上げてみようという試みが増えてくるかもしれません。
そうするとサービス業の付加価値額も上がり、生産性も上がっていきます。
生産性が上がれば報酬を上げられる余地が出てきますから、サービス業に従事する人たちもよりサービス技能を高めようという意欲が湧いてくるのではないでしょうか。
今のようにサービス業というと、非正規雇用で、長時間勤務で、サービスが悪いとお客様に怒られて、もらえる報酬はいつまでたっても低い、というような状況では誰も頑張り続けることは出来ませんね。

日本のサービスをもっと磨き、産業としての生産性を高めて、意欲ある若い人たちが高い報酬を得ることも可能になるような産業にしたいものです。
そうすれば、世界でトップになった日本の製造業のように、サービス業の「ジャパンクオリティ」が輸出産業になるかもしれません。
外国人旅行者も増えている中、日本のおもてなし文化はこれからより一層世界的な評価が上がっていくでしょうからね。

よいサービスにはそれなりの対価を支払うということが当たり前という社会にしていくことも大事かもしれません。日本のサービス業に従事する人たちが頑張れるようにサービス産業を「稼げる産業」にしたいものです。
みんなの「頑張ろう!」という気持ちこそが社会の活力ですからね。

今回は以上です。
もっと日本がよくなりますように。

2014年9月16日 火曜日 19:43 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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