金利上昇?貸し渋り? 新バーゼル規制が日本経済に及ぼす影響とは?

「日本の爆弾」とも言われる国債。

国債価格下落=金利上昇は、日本経済の大きなリスクです。

そんなことにならなければ良いのですが…。

■日本のリスク、「国債価格の下落=金利の上昇」

今、割と好調な日本経済にとって、最も恐ろしいもののひとつが「長期金利の急上昇」でしょう。

なぜなら、日本は借金が多いからですね。日本の国債発行額は約860兆円に上ります。毎年この利払いだけで10兆円近くもかかっています。

「国債が暴落して日本崩壊!」みたいなセンセーショナルな本などをよく見かけますが、今は超低金利なのでまだ大丈夫です。しかし「何らかのきっかけ」で金利が上昇したりするとその負担は膨大なものになり、確かに日本経済は大変なことになります。

「長期金利の上昇」とは「国債価格の下落」のことです。国債価格が下落するような「何らかのきっかけ」とは、例えば国債の約1割強を保有する日本の銀行が国債の売り姿勢を強めたりするようなことです。国債価格が下落すると市場参加者は自分の保有資産が目減りするわけです。ですので、いったん下落し始めたらリスクを軽減するために先を争うようにどんどん売却に拍車がかかり、一気に価格が暴落(金利は急上昇)するのではないか、という指摘はずっとあります。

そんな危険性を感じさせる動きが起きています。これは注意深く見ておく必要があると思います。
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<銀行の国債保有規制 バーゼル委、金利変動に備え 来年にも決定、住宅ローンも>

(2015年4月26日付 日本経済新聞)

『銀行が持つ国債に新たな国際規制が設けられる見通しとなった。主要国からなるバーゼル銀行監督委員会は、国債の金利が突然上昇(価格は下落)して損失が出ても経営に影響が出ないようにする新規制を、2016年にもまとめる。住宅ローンも対象。適用は19年以降だが、銀行は前倒しで国債の売却などを検討するとみられ、金融市場や住宅販売などに影響が出る可能性がある。』

■日本の銀行を脅かすバーゼル規制とは?

「バーゼル規制」、耳慣れない言葉だと思います。バーゼル規制とは、国際的な金融システムの安定化のためにグローバルに金融業務を行う銀行が守らねばならない国際的なルールです。バーゼル規制で代表的ものが「自己資本比率規制」です。銀行の保有資産(貸出金やら債権など)のリスクの大きさに応じて一定の資本を積むことを求めています。

さて、そのバーゼル委員会が「金利リスク」に新たに規制をかけるよう検討しているというのが新聞の記事です。銀行が保有する自国の国債をリスク資産とみなすことになります。対象は、自国の国債に留まらず住宅ローンや企業貸し出しなどにも及ぶようです。

金利リスクとは、世の中の金利が上昇した際に、銀行が持つ国債や住宅ローンの価値が目減りしてしまうことです。数年前のギリシャや南欧諸国の債務危機の時、EU各国で長期金利が急上昇しました。この時に欧州の銀行は大きなダメージを受けましたが、そういうことのないように規制を強化しようとするムードが高まっているのです。

この規制は国債を多く保有している邦銀には大きな足かせになります。現状はどの邦銀も保有している日本国債はリスクゼロの資産としていますが、これがリスク資産となれば、国債保有残高に応じて自己資本を積み増さねばならなくなります。自己資本を増やせない銀行は、自己資本比率をキープするためにリスク資産を減らすために国債を売ったり、貸出金を回収したりしなければならなくなります。これが日本国債下落のきっかけになってしまうかもしれませんよね。

■EU債務危機の余波に巻き込まれる構図の日本

ただ、これはまだ検討中の話で決定ではありません。バーゼル委員会は各国と調整をして5月下旬にも方針を公表するとしています。決定は来年、実施は2019年からの予定です。

検討しているのは2つの選択肢です。

ひとつは、数値基準を義務づける「規制案」。

銀行の保有資産の価格が金利上昇で下落した場合に備え、発生する損失額を計算してあらかじめ保険として自己資本を積み増すものです。この案はイギリスやドイツが賛成しています。

もうひとつの案は各国の当局がそれぞれの実態に応じて監督をする「監督案」。

当局は金利変動によるリスクが高まった時に銀行に対して資本増強や国債の売却などを求める行政処分を出せるようにする。これは規制案に比べて各国当局の裁量が認められる点で緩いですね。この案は日本やアメリカ、南欧各国などが推しています。

誰が見てもわかるとおり「規制案」が厳しく、「監督案」が緩いですね。

規制案を推進しているイギリス、ドイツの銀行の国債保有率は4%程度です。自国の銀行はほぼ影響を受けません。債務危機の時に同じ苦労させられた南欧各国の銀行を規制したいという思惑が見て取れます。

それに巻き込まれた格好なのが、私たち日本とアメリカです。米銀と邦銀が保有する自国の国債はどちらも13~14%程度です。新ルールに基づくと金利上昇時には国債を売るか、資本を積み増す必要性に迫られてしまいます。

■バーゼル規制が日本経済の転換点に?

どちらになるにせよ、バーゼル規制の流れは大量の国債を持っていること自体が銀行にとってのリスクとなる方向に向かっています。

これは日本経済の大きな転換点になる可能性があります。

日本の銀行はいつもバーゼル規制に振り回されてきました。1990年前後にバーゼル規制(自己資本比率規制8%遵守)が策定されましたが、当時の日本の銀行は少ない資本で大きな融資を行っていました。それが、このルールが適用されたことで貸し出しを抑えねばならなくなりました。銀行融資の拡大路線が抑制されたことはバブル経済崩壊や90年代後半の「貸し渋り」の遠因になりました。

今回の新しい規制でも、国債保有率が高く、国債残高が多い日本経済が一番大きな影響を受けるのは間違いないと思います。

国債が下落し、金利が上昇すれば財政そのものを圧迫します。また国債と同じくリスク評価の対象となる住宅ローンや企業向け長期融資についてもまた銀行が圧縮に動く可能性もあります。せっかく回復しはじめた住宅市場が再び冷え込んだり、景気を悪化させたりすることにもなりかねません。

バーゼル規制はすでに市場では意識されているようです。邦銀は昨年から国債残高をかなり減らしています。新バーゼル規制の適用までには3年以上ありますが、すでに国債の売却圧力は高まりつつあるのかもしれません。「何らかのきっかけ」が起きないことを祈りたいものです。

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

2015年4月30日 木曜日 12:35 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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