骨太の方針決定 財政再建はどのように進められるのか?

今回は国家予算についてです。
やはり、国民負担は…増えるでしょうね。

■骨太の方針から見えてきたものとは?

来年度以降の国家予算の方向性が見えてきた感じがします。
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<骨太の方針決定 財政再建、成長重視 歳出抑制「目安」どまり、18年度赤字幅GDPの1%に>
(2015年7月1日付 日本経済新聞)

『政府は30日の臨時閣議で経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略、規制改革実施計画をそれぞれ決定した。骨太の方針に盛り込んだ財政健全化計画は2020年度の財政の黒字化目標を堅持したが、歳出額の上限を設定せず、緩やかな「目安」にとどめた。経済の好循環による税収増で財政を立て直す成長重視の姿勢を鮮明にした。』

「骨太の方針」とは、政府が毎年発表する経済財政に関する基本方針の通称ですね。今はこの「骨太の方針」が予算の骨格を主導しています。

記事はいろいろと書いていますが、要するに…

・財政再建の目標は2020年度に「基礎的財政収支」の黒字化(←15年度は約16.4兆円の赤字)。
・その前段として2018年度には赤字幅をGDPの1%以下にする(←GDPが約500兆円ですから、基礎的財政収支の赤字額を約5兆円程度に抑えるということですね)。
・その方法としては、経済成長による税収増を重視。
・歳出削減については「目安」はありますが、ちょっと曖昧です。

…という感じです。

「基礎的財政収支」は「プライマリーバランス」とも呼ばれていますが、国債費(利払い分と償還分)を除いた「歳出」と、国債発行収入を除いた税収など「歳入」の収支バランスのことですね。
2015年度はこのプライマリーバランスの赤字が16.4兆円でした。これを2018年度までに赤字約5兆円にして、2020年度には黒字にするというのが目標です。

5年間でどうやって16.4兆円の収支を改善するか?
骨太の方針では、「実質2%の経済成長で税収を7兆円増やし、歳出カットや成長戦略の効果で9.4兆円を捻出する」としています。

さて、はたしてこれ、出来るんでしょうか?

■プライマリーバランス改善のための3つの方法

今は、「歳入」<「歳出」の状態だから赤字なわけです。これを「歳入」>「歳出」にしないといけませんね。
そして、その方法としては次の3つがあります。

(1)税率を上げるなど税制を変えて、税収(歳入)を増やす
(2)経済成長をして、税収(歳入)を増やす
(3)歳出を減らす

(1)の税制改正は昨年大々的にやりました。消費税を8%に上げましたし、相続税も上げました。そして2017年4月には消費税をもう一段、10%に上げる予定です。ただし政府は「消費税はもうこれ以上は上げない」としています。
(2)の「経済成長による税収」を政府は期待しているようです。2014年度の税収は、およそ53.9兆円。これは前年対比で7兆円もの増加となります。実は税収は5年連続で増加しています。要因としては、景気に回復に伴う企業収益の改善や株価上昇を受けての法人税収や所得税収の伸びがあげられます。

でも内閣府の発表には気になるところもあります。
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『内閣府の2月時点の試算によると「名目国内総生産(GDP)成長率3%」のケースでは、2020年度の税収は2016年度の56.4兆円から68.4兆円にまで増加する。しかし、国債費も2015年度の23.5兆円から37.0兆円になると見込まれる。』(6月30日付毎日新聞より)

経済成長すれば税収は確かに増えますが、経済成長するとどうしても金利の上昇は避けられません。結果として、税収が56.4兆円→68,4兆円と12兆円増えても、国債費が23.5兆円→37.0兆円と14.5兆円も増えるという試算です。

こりゃダメですね。
すでに日本は「経済成長すれば財政再建も出来る」という簡単なレベルにはないくらい借金が多すぎるということなのでしょう。

■財政再建の鍵を握るのは…

(1)税率はもう上げない、(2)経済成長だけでは無理。
となると鍵を握るのは、(3)「歳出を減らす」しかないわけです。

冒頭の記事は、その鍵を握る歳出改革の目標が「曖昧すぎる」としているわけですね。
歳出の多くは、増え続ける高齢者の「社会保障」が中心です。骨太の方針では、「この3年間で一般歳出の増加を1.6兆円に抑えた基調を18年度まで守る。」としています。高齢化で社会保障費の自然増が年間1兆円ほど見込まれることを考えると、確かにまずまず抑えられた水準と言えます。

でも、その具体策はというと、『新薬より割安な後発薬の使用割合引き上げ、外来受診料や介護保険料の個人負担増、高所得者の年金給付見直しなどを例示』。と、単にテーマを掲げるにとどまっていて現段階ではまだ具体的にはなっていません。

■「歳出削減」本当に出来るか。

社会保障費の抑制は特に高齢者からの反対が常に大きいので、政治的決断はなかなか難しいかもしれません。でも、今回は結構本気かもしれないな、と感じます。

例えば最近、麻生財務大臣は「所得税を改革する」とよく話しています。
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『麻生副総理・財務相は30日、政府が計画する所得税改革について「若い子育て世代の負担を高齢者や資産、所得の多い人にまわしてもらう」と述べた。骨太の方針には所得税を中心に税制の総点検を盛り込んだ。経済成長の担い手である若い世代の税負担を減らす方針で、その分は高所得の高齢者らに負担を求める見通しだ。』(2015年7月1日付 日本経済新聞)

骨太の方針では「税制で世代間・世代内の公平の確保を図る」としています。←これが一番のキーワードだと思います。
高齢者世代と現役世代の負担格差、また、同じ高齢者世代の中でもゆとりある世帯とゆとりのない世帯の負担に公平性を持たせていく、現役世代も同じです。つまり、資産や所得のある世帯は高齢世帯でも現役世帯でも相応の負担をしてもらおう、という話です。一例として、年金受給者に適用される公的年金等控除の縮小が上げられています。現役世帯には「配偶者控除の廃止」が検討されています。配偶者控除の廃止は、労働人口が不足していく中、主婦層の女性にももっと働いてもらって経済を支えてもらい、所得税収も増やそうという狙いでしょう。パートで働くような主婦世帯には実質的な増税にはなりますが、「世代間」とともに「世代内の公平」とわざわざ言っている以上、これはほぼ実施されるでしょうね。

■そもそも「プライマリーバランス均衡」では借金は減らない

いろいろ気にかかることは多いわけですが、実は、国の借金を減らすためにはプライマリーバランスがやっと黒字になっている程度ではそもそもダメなのです。プライマリーバランスは「国債費」を除いた歳出と歳入のバランスしか見ていません。プライマリーバランスが均衡したとしても、国債の利払い費用分は借金が増えていきます。当然のことですが、国債には利払い費がかかります。利払い費は15年度で約23兆円あります。ですから本当は、「歳入」>「歳出+利払い費」の状態になって始めて借金は減らせます。道のりは遥か遠いのですね…。
若年世代も高齢者世代もこれから相応に負担が増えていくと想定しておいた方がいいでしょうね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

2015年7月7日 火曜日 17:18 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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