ゼロエネルギー住宅にとって本当に大事なこととは?

今日は今の住宅のトレンドである「ゼロエネルギー住宅」についてです。
ゼロエネ住宅を建てる上で本当に大事なこととはなんでしょうか?

■ゼロエネ住宅が当たり前の時代に

皆さんは「ゼロエネルギー住宅」ってご存知ですか?
文字通り、生活で「消費する」エネルギーよりも「創る」エネルギーの方が多い、もしくは等しい住宅のことです。
通称「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」(読み方はゼッチ)と呼ばれています。

環境のことを考えても、これから電気代など光熱費が上がるかもしれないということを考えても、出来るだけ住宅は省エネルギーな方がいいですよね。

国も日本の住宅の省エネ化について本腰を入れています。
2020年にはすべての新築の建築物は国が定める省エネ基準を満たしたものでなければ建てられない、という「省エネ住宅の義務化」の方針が決定しています。
そして、2030年頃には新築住宅はZEH、つまりゼロエネ住宅が標準になっている状態を目指しています。
つまり、もうすでに「住宅は省エネ仕様が当たり前」になっており、間もなく「ゼロエネ住宅が当たり前」になるということです。
今、住宅関連業界にとって旬のテーマは「省エネ」です。
住宅会社、住宅設備機器会社のみならず、電機会社や電子機器会社などもZEHに向けての動きが活発化しています。

■電機メーカーが加速させているゼロエネ住宅

例えば、こんな感じです。
↓↓↓

<ゼロエネルギー住宅 「家まるごと」提案強化 戸建てや電機連携加速>
(2015年10月10日付 日本経済新聞)

『エネルギー消費量が実質ゼロとなるゼロエネルギー住宅を巡り、太陽電池などの製品を手掛ける電機、電子機器大手と戸建て住宅メーカーの連携が加速している。
三菱電機は工場内に一条工務店とゼロエネ住宅を新設した。
京セラはミサワホームと組み、太陽電池と蓄電池を使って電気やガスのエネルギーを自給するモデル住宅の実験を始める。』

家電製品がすでに価格競争になっている電機メーカーにとって、政府が本腰を入れているゼロエネ住宅の省エネ電機設備関連の分野はひとつの有望な市場です。
住宅会社と連携して、省エネから家電まで「家まるごと」の提案をするのが狙いということです。

新聞記事では、エアコンやテレビなど家電製品と接続できるHEMS(家庭用エネルギー管理システム)に取り組む三菱電機。
ミサワホームと連携して、太陽電池と蓄電池を組み合わせたZEH住宅に取り組む京セラ。
そしてこの分野で最も先行しているパナソニックなどの取り組みを紹介しています。

すでに太陽光パネルは価格勝負になっています。
いくら成長が期待できるゼロエネ住宅関連と言っても、単体の商品販売では利益確保は難しくなっています。
そのため、住宅会社と連携して総合的な提案力で勝ち残っていこうということですね。

■ゼロエネ住宅の定義とは?

ゼロエネルギー住宅は大変結構なのですが、その方向性を心配している住宅業界の人は少なくありません。
その話をする前に、まずゼロエネルギー住宅を推進している経済産業省が掲げているZEHの定義について確認します。
(ただし、細かく書くととても難しいのでざっくりと説明します)。

1)消費エネルギーよりも創り出されたエネルギーがネット多いか等しいこと。
2)建物に断熱性能があること(国が定めた基準値以下)。
3)自然エネルギーを取り込む設計手法がとられていること(換気や日射制御など)。
4)省エネデータの計測装置が付いていること。(HEMSのことですね)
5)太陽光発電など、創エネ設備があること

要するに、1)の「消費エネルギー≦創エネルギー」を実現するためのアプローチが大きく2つあるということです。
ひとつは「省エネ」。
2)建物構造そのものの断熱性能を上げて、3)設計段階で自然エネルギーを取り込む建物にすること。
もうひとつが「創エネ」。
5)太陽光を付けてエネルギーを創ること。

それで、その状況を「見える化」する。(これが4)のHEMS)

話しを戻しまして、この「ゼロエネ住宅の推進の方向性」を心配している声が住宅業界には少なからずあるのですが、その心配はなにかと一言でいうと、「省エネ、創エネともに設備機器に依存しすぎているのではないか?」ということです。

創エネの太陽光関連は全部設備機器です。HEMSも設備機器ですね。
「自然エネルギーを取り入れた設計」というのも、具体例としてあげられているのは「開口部通風利用システム」「床下冷熱利用システム」「自動制御式可動ルーバー」、「屋内と屋外の温度差による換気制御システム」などほぼほぼ設備です。

産業界を支援している経済産業省の定義なので仕方がないかもしれませんが、「これでいいの?」と思うくらい設備に寄っています。

■省エネルギー住宅づくりの大前提とは?

住宅相談会などで家づくりを検討されているお客様からよく「省エネ住宅」についてこのようなご質問をいただくことがあります。

(質問)「予算に限りがあるのですが、太陽光発電設備をつけるか、断熱材のグレードを上げるかどっちがいいでしょうか?」

お気持ちはよくわかるのですが、このご質問は比較している対象の性質が違います。
太陽光は「設備」、断熱材は「建物」です。

「設備」とは、太陽光パネルや蓄電池、省エネ家電、LED照明、給湯器などですね。
「建物」とは、柱や壁、窓、ドア、屋根、床、基礎などのことです。
断熱材は壁や屋根を構成する重要な要素ですね。

「設備」と「建物」は耐用年数が違います。
設備の耐用年数はモノにもよりますが10年20年の世界です。
設備は壊れたら取り換えが出来ます。そして常に進化します。
普及すればするほど進化した最新設備を安く手に入れることも出来ます。
例えば、太陽光パネルはこの5年で3割以上価格が下がりました。

一方、建物はちゃんと作れば50年以上持ちます。
一度作ったら簡単に取り換えが出来ません。
後から建物そのものに手を加えようとするとかなりの金額がかかります。
例えば、建築時に断熱材のグレードを上げるのは数十万円くらいのコストアップですが、数年後に家ごと断熱リフォームをしようと思ったら数百万円かかります。

どんなに、太陽光でエネルギーを創っても、建物の断熱性能が悪くてエネルギーがダダもれなら省エネ住宅とは言えません。
しかも、日本の建物の断熱性能は、先進各国と比較して決して良いとは言えないのです。

お客様には、「まず、後から変えられないところからお金をかけましょう。余裕があったら設備を充実させましょう。」と私は答えています。
まずは住宅そのものの省エネ化がしっかり出来ているか、からです。
断熱材の性能を高くしたり、窓には断熱サッシ、ドアは断熱ドアを入れたり、屋根や基礎の断熱もしっかりする。
こうすると、建物の断熱性能が高まり、少ないエネルギーでも家全体を快適に暮らすことができます。
さらに、軒を出して夏の日射を遮ったり、窓位置を工夫して通風を考えたりといった、設備機器に頼らない「パッシブ」と言われる設計手法もあります。

まず、前提はこっち(建物の高性能化)だと思うのです。
設備をいっぱい付けただけの省エネ「機器」住宅にならないようにしてもらいたいなと思う次第です。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

2015年10月27日 火曜日 16:02 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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