政府が推進する「三世代同居」の意味とは?

今回は「三世代同居」についてです。
今年の住宅施策のひとつですね。さてどんな狙いがあるのでしょうか?

■国は三世代同居を推進

2016年度の住宅分野への政府の施策で目立っているキーワードが「三世代同居」です。
2016年度の予算にも補正予算にも盛り込まれました。

<三世代同居を支援、16年度予算案>
(平成28年1月18日付 日経ホームビルダー)
『政府が2015年12月24日に閣議決定した16年度当初予算案を見ると、住宅関連に三世代同居への対応を支援する施策が目立つ。安倍晋三首相が掲げる「希望出生率1.8」を目指す方針に沿ったものだ。』

具体的には、「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」を建築する際に最大165万円の補助金があるのですが、その家を三世代同居に対応している仕様にするとさらに上限30万円が加算されます。

リフォームでも三世代同居を目的としたものに最大50万円の補助金がつきます。

税制面での優遇も用意されます。三世代同居へのリフォームにかかった費用に対して最大25万円を所得から控除できるようになります。(2016年度の税制改正大綱より)

三世代同居に対応していると認められる要件は、「キッチンと浴室、トイレ、玄関のうちいずれか二つ以上を複数箇所、住宅内に設置すること」です。

■三世代同居の効果は?

かつてはサザエさんの一家のように、おじいちゃん、おばあちゃんとその子、そして孫がひとつ屋根の下に暮らしている家庭は多かったですよね。

1950年代には三世代同居の世帯は4割以上あったそうです。それが今やわずか7%ほどです。単身世帯をのぞく世帯平均人数は60年間で約5人から約3人に減少しました。「核家族化」ですね。
しかし、内閣府の調べによると親との同居を望む人は20%もいるそうです。今回の三世代同居の施策はこのギャップを埋めるのが狙い、ということです。

あくまでも「二世帯住宅」ではなく「三世代同居住宅」と言っているくらいですから、親と子と孫がいることが前提です。一番の目的は「少子化対策」だと政府は言っています。昨年、政府が発表した「少子化社会対策大綱」にも三世代同居が盛り込まれています。親世代から子育ての支援を受けることで子育て世代がより子育てしやすく、また働きに出やすい環境を作っていこうということです。同居している夫婦のほうが、出生率が高いというデータもあるそうです。

三世代同居は消費対策にもなりそうです。
三菱総研の調べによると、祖父母による孫への支出は、同居だと年間約27万円、近居だと19万円、別居だと13万円になるそうです。やはり孫が近くにいると色々買ってあげたくなるのでしょう。「孫消費」はあまり消費をしない高齢者にとって一番の消費動機ですからね。

現役世代にとっては家計も助かります。住宅コストを自分たちだけで負担するのは大変ですが親世代との同居ならかなり助かります。住居費だけではなく、食費や光熱費なども皆が一緒に住むことで節約効果は大きいでしょう。

また相続においても相続人が同居していると、自宅の相続税評価額は80%減額されます(小規模宅地の評価減の特例)。同居が促進されると今問題になっている空き家対策にもなるでしょうね。

■三世代同居が発信するメッセージとは?

三世代同居は「少子化対策」であり、「子育て支援」であると政府は言っています。
住宅相談をやっていますと、親の子育て支援を期待している共働きのご夫婦などは確かに多くいらっしゃいます。しかし一方で、自分たちのプライバシーも大事にしたいと考えている人が多いのも現実です。そういうご夫婦は「同居」ではなく、近くにすむ「近居」を選ばれます。同じ敷地に新しく家を建てたり、同じマンションの違う部屋に住んだり、というスタイルですね。

政府が「近居」ではなく「同居」にこだわっているのは親世代の介護対策もあるからでしょうね。子供の託児所が不足しているのと同じく高齢者の介護施設も不足しています。出来るだけ家族のことは家族で助け合ってなんとかしましょう、というのが「三世代同居」が発信しているメッセージだと思います。

■景気対策よりも社会保障費対策

今回の施策で「三世代同居」がどれだけ増えるかはわかりません。三世代同居を推進する施策としてはちょっと弱いかなとも感じます。でも、少なくとも政府が大きな方針転換をしつつあるのだなということはわかります。

昨年の補正予算では住宅ローンのフラット35の金利優遇がありました。しかし今年はありません。家を新しく建てるよりも、親の家に住むことを勧めているようにも見えます。
国はずっと結婚と子育てを前提として持家促進政策を推し進めてきました。しかしライフスタイルは多様化しました。そして今では800万戸以上が空き家になっています。新しい住宅を建設することは経済効果が大きいので確かに景気対策になります。しかし、今はそれよりも、介護や子育てといった社会保障費関連を抑えていく方が重要だということなのでしょう。

生産年齢人口が減少し続け、国のGDPもなかなか伸びない一方で少子化と高齢化で社会保障費は年々増え続けています。国や自治体がなんでもやるのは無理があります。自分たちで出来ることは自分たちでやりましょう、という「自助の時代」が到来しているのだと思います。

今回は以上です。
次回もお楽しみに!

2016年1月19日 火曜日 15:18 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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