社会保障の充実と財政再建は先送り?私たちはどうすればよいのか?

消費増税延期が発表されましたね。
さて、私たちはこのニュースをどう受け止ればよいのでしょうか?

■安倍総理、消費増税延期を発表

今週、安倍総理が消費増税を2年半延期することを発表しましたね。

<首相、消費増税延期を表明 19年10月に10%>
(平成28年6月2日付 日本経済新聞)
『安倍晋三首相は1日、首相官邸で記者会見し、消費税の税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半先延ばしすることを表明した。新興国経済の落ち込みなど世界経済の下振れリスクを挙げ「リスクには備えねばならない」と指摘。世界経済が新たな危機に陥ることを回避するため、政策総動員が必要だと強調した。増税再延期について7月の参院選で「国民の信を問いたい」と述べた。』

サプライズではないですね。
ここ数か月の世の中の雰囲気を見て、多くの方が「延期するだろうな」と思っていたのではないかと思います。
GDPの伸びはほぼなく、景気は足踏み状態と言えます。中でも肝心の消費が回復していません。
「消費を増やすのが景気回復の鍵」と言われているのに、このタイミングで消費を冷え込ませるような消費増税をやってしまっては、景気が本格的な腰折れになってしまいかねません。

世論調査でも大体6割以上の人が反対していました。
現時点では、増税延期は妥当な判断だと思います。

■社会保障と財政の問題は先送り、次は大丈夫?

ただ、安倍総理の説明は苦しかったですね。
「日本はさておき、世界経済が下振れリスクが…」という感じで世界経済のせいにしていましたが、明らかに苦しい。

前回の延期時に安倍総理は、「次は絶対に上げる。景気条項もつけません。」と高らかに宣言していましたので、今回の延期は明らかに公約違反です。7月の参院選挙のこともあって、「結局、アベノミクスは失敗だったのではないか?」という議論になるのも避けたいところです。
「景気が良くなっていないので延期です」と、はっきりとは言えない状況にあるのはお気の毒なことでした。

しかし、次の2年半後の2019年10月に本当に上げられるのでしょうか?
今回延期したことで消費税を上げるハードルはかなり上がってしまったと思います。

確かに今は、消費は伸び悩みGDPの成長率も芳しくはありません。ただ一方で、雇用は順調です。求人倍率は全国でずっと1倍を超える「人手不足」状態が続き、失業率は3%前半というほぼ完全雇用状態です。景気は足踏み状態とは言え、最悪の状態では決してありません。
これで増税出来ないとなると、「ホントに次は大丈夫だろうか…?」と思ってしまいますね。

消費増税はいずれはやらないといけません。
それは、社会保障の充実と財政健全化があるからですね。

今回の延期で、1.3兆円の予算を見込んでいた保育や介護への財源がなくなりました。一応、安倍総理は「一部は実施する」と言っています。財源は赤字国債ではなく、今年の税収増加分を使うとのこと。
確かに今年の所得税収は増えるようで、17.7兆円と、14年ぶりの高い水準になりそうだ、という発表がありました。ただし、この財源は消費税のように恒久的なものではありません。
今回の延期で社会保障制度の充実と財政健全化が遅れるのは間違いありません。

■「消費税より、相続税・所得税」という議論

今回の消費増税延期の報道を受けて、「やはり逆進性のある消費税ではなく、富裕層への相続税増税とか高額所得者への所得増税をして格差をなくさないといけない」と主張する人たちがまたテレビや新聞などに出てきていました。

相続税の増税も高額所得者への所得税増税も、どちらもやっていますが、「もっとやれ」ということでしょうか。
相続税は今年から基礎控除額が引き下げられ、実質的にかなりの増税になっています。
所得税についても、今年2016年には年収1,200万円以上、来年2017年には年収1,000万円以上の高額所得者に対する給与所得控除額が段階的に引き下げられます。これも増税です。
この取得税の増税の影響は住民税や社会保険料にも及びます。富裕層や高収入の方の税負担もすでに上がっています。
サラリーマンについて言えば、高所得者だけでなくすべての人の方の厚生年金保険料は毎年徐々に引き上げられており、平成30年まで続くことが決まっています。

取れるところから取るというのはもうずっとやっていることです。
でもこれ以上の富裕層への課税には富の流出などの弊害も懸念されています。
でもまだまだ足りていません。

「なぜ消費税でないとダメなのか?」というと、日本は少子高齢化で生産年齢人口(15歳以上~65歳未満)が減り続けていくからですね。働いて稼ぐ若い人が減っていく、年金・医療・介護費がかかる高齢の人は増えていく。
高齢者の方も一定の税を負担してもらうという意味では、消費税がいいということになりますね。

■低成長経済は構造的な問題、では私たちはどうする?

個人消費が伸びていないのも景気の問題というよりも少子高齢化の要因が強いように思います。

「消費が伸びないのは賃金が増えないからだ」、という指摘がありますが、賃金の総支給額が増えないのは高所得のベテランが大量に退職しているという「世代交代」も原因のひとつです。

今、退職している65歳前後の人口は一年代あたり大体200万人です。今、就職している20歳前後では120万人くらいです。その差、年間80万人。
すごい勢いで働ける人たちが減っています。就労人口でいうと毎年約20万人の働き手は減っているそうです。

高齢世帯は老後に備えて貯蓄をして、若者にはお金がありません。
しかも、40代50代でゆとりのある高額所得世帯へは毎年増税です。
これでは消費は増えないですね。なかなか日本は大変です。

今回の消費増税延期については、野党も「上げるべきではない」とずっと言ってきましたが、いざ「上げない」となると待ってましたとばかりに「アベノミクスの失敗だ」「公約違反だ」と批判しています。
ただ、日本は少子高齢化と同時に成熟した低成長な国になっています。これは構造的な問題であり、政治だけで解決できる問題ではありません。

社会保障の充実も財政再建も財源が必要です。財源はないところからは取れません。結局、経済を大きくするしかないのですが、今の日本で経済を大きくするのは簡単なことではないのです。国民全員が頑張って稼いで、消費もして、貯蓄して、納税もしないといけない。社会が悪いとか誰々が悪いという前に「自分が頑張らねば」、と思うのです。

是非、参院選に向けては与党、野党ともに足の引っ張り合いやごまかしではない建設的な議論をしてもらいたいものですね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

2016年6月3日 金曜日 19:44 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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