外国人労働者を受け入れる前に考えておきたいこと

今日は、日本の労働力不足と外国人労働者についてです。うーん、難しい問題です。

 

■労働力3,500万人が減少する日本、どうすれば?

2018年5月20日(日)放送のNHKスペシャル 『縮小ニッポンの衝撃 労働力激減 そのとき何が』を観ました。番組のテーマは「労働力不足」でした。
「人口減少、少子高齢化に直面している日本は、今から約30年後には人口1億程度まで減少する。経済を支える生産年齢人口(15-64才)はピーク時と比べおよそ3,500万人も減少する。その時、誰が社会を支えるのか?」といった内容でした。

番組では特に厳しい労働現場の事例として、「地方の介護施設へご老人を送迎する高齢の運転手」や、「東京での大規模建設現場を仕切る外国人作業者」などが紹介されていました。

番組の最後には、『労働力は経済の源泉。人口減少する国で移民労働者を受け入れないのは考えられない』という有識者の言葉も紹介していました。

この番組を見て、「やはり移民しかないか」と思った人は少なくないのではないかな、と想像します。
皆さんはどう思われましたか?

 

■外国人労働者の受け入れに関する世論は?

働き手が減っていくとはどういうことか、ということがリアルに実感できる良い番組でした。この状況をどう解決していくかということは、なかなか答えを出すのが難しい問いです。
様々な立場で様々な考えがあると思います。間違いなくやってくる未来ですから、それぞれの考えをもとに議論を重ねて向き合っていくべきテーマだと思います。
番組が示していた通り、確かに地方の介護や建設の現場は働き手が確保できなくて本当に厳しい。外国人労働者の受け入れも検討に値する選択肢のひとつだとは思います。ただ、それが「移民」となると、私は「ちょっと違うかな」と感じました。

まず一般論として、日本では労働者として外国人を受け入れること対して慎重な意見が支配的です。
現在、日本では専門的な技術や技能、知識を持っている外国人の入国は認められるものの、単純労働に就労することを目的とした外国人の入国は認められていません。
その件に関する考え方として、内閣府による『外国人労働者の受入れに関する世論調査』(平成16年5月)では以下のような結果になっています。

『外国人労働者受入れ制度に対する考え方 』
・「今後とも専門的な技術,技能や知識を持っている外国人は受け入れ、単純労働者の受入れは認めない」(25.9%)
・「女性や高齢者など国内の労働力の活用を優先し、それでも労働力が不足する分野には単純労働者を受け入れる」(39.0%)
・「特に条件を付けずに単純労働者を幅広く受け入れる」(16.7%)

「無条件で受け入れ賛成」は16.7%しかいません。
「条件付き賛成」が39.0%。「受け入れ反対」が25.9%です。

25.9%の「受け入れ反対」の人(537人)に「なぜ単純労働者の受入れを認めるべきではないと考えるのかと聞くと、

・「治安が悪化するおそれがある」(74.1%)
・「地域社会の中でトラブルが多くなるおそれがある」(49.3%)
・「不況時には日本人の失業が増加するなど雇用情勢に悪影響を与える」(40.8%)
・「日本人が就きたがらない仕事に,単に外国人を活用すればいいという考えはよくない」(28.3%)
(複数回答可)

日本国民の中には「治安の悪化」などのトラブルを懸念する声が多いようです。
これは世界に目を向けても同様で、これまで移民を積極的に受け入れてきたEU各国やアメリカでも反移民の動きが強まっています。
これまで移民政策を推進してきたEU各国では、単純労働の担い手として多くの移民を受け入れてきました。そのほとんどは低賃金労働者です。低賃金ですから生活はずっと厳しいまま。それら移民の、失業、生活保護、年金、子供の養育費などの社会福祉コストが増大し、各国財政の重荷になってきています。貧困は世代を超えて連鎖します。貧困層から抜け出せない移民が多く、それが激しい暴動や治安の悪化につながっているとも見られています。
いくつかの国では「移民排斥」を訴える政党が一定の支持を得るようになっており、これまでの移民政策の見直しを迫られています。

 

■問題の根本は?「労働の生産性が低いこと」

私が外国人労働者受け入れで心配するのは、やってほしい仕事が建設作業や介護、農業など労働環境が厳しくて、低賃金の仕事ばかりであることです。

なぜ、こういった仕事に日本人の働き手が集まらないかというと、きついわりに報酬が低いからでしょう。人が集まらないから少人数で回さざるを得ず、結果きつい。なぜ少人数なのに報酬が安いままなのかというと、その仕事の労働生産性が低いからです。例えば、建設業の労働生産性は全産業の60%ほどしかありません。

NHKスペシャルの「縮小ニッポンの衝撃」でも紹介されていたのは介護施設のドライバーや工事現場の作業員でした。これらの仕事を外国人に任せてもたぶん問題は解決しません。変わらず低賃金しか払えないからです。貧困生活を外国から来てくれた人たちに強いるだけです。もし、それが移民ということになると彼らの暮らしを支えるための社会福祉コストが膨らむ恐れもあります。そして貧困は次世代にも連鎖していく。そうなると、今の欧米諸国が抱えている移民問題と同じ道をたどるのではないかと懸念します。

問題の根本は、単純労働の生産性が低いことであり、そういう生産性が低いままの仕事が改善されずにそのまま残っていることだと思います。

 

■外国人労働者の受け入れ「だけ」では問題は解決しない

先述した通り、今の日本の外国人受け入れ政策は高度な専門技能や知識を持つ外国人に限定しています。建設現場や工場などで働いている外国人労働者は、母国へ技術を持ち帰る研修という名目で、「技能実習生」としての受け入れになっています。

外国人でもいいから労働力が欲しい。でも移民としては受け入れられない。
本音と建前のはざまが見て取れますね。
「技能実習生」と言いながら、やっている仕事は簡単な仕事。だから低賃金ですし、就業環境は決して良くない。企業としても短期間の労働力ですから、簡単な仕事しか任せられません。

そんな外国人労働者の受け入れの潮目も変わりそうです。
↓↓↓

<外国人、単純労働に門戸 建設や農業、25年に50万人超>
(2018年5月30日付 日本経済新聞)
『政府が検討している新たな外国人労働者受け入れ策の原案が29日、明らかになった。日本語が苦手でも就労を認め、幅広い労働者を受け入れるのが特徴だ。2025年ごろまでに人手不足に悩む建設・農業などの5分野で50万人超の就業を想定する。日本経済が直面する深刻な人手不足を背景に、単純労働分野における外国人への事実上の門戸開放に踏み切る。』

政府は人手不足に対処するため2019年4月以降に技能実習の修了者は最長5年の就労資格を得られるようにするようです。
移民政策とは異なりますが、外国人労働者の受け入れ政策の大きな転換となりそうです。
最長5年ではありますが、ちゃんとした「労働者」としての扱いです。「実習生」という働き手にとっても企業にとっても中途半端な状態よりはいいでしょう。

ただ、それでも50万人です。NHKスペシャルで言っていた「3,500万人の労働力の減少」を補うには程遠いレベルです。つまり、日本の労働力不足は外国人労働者を受け入れることだけでは絶対に解消しないのです。日本人がやりたがらないような低賃金しかもらえないような生産性の低い仕事を残したまま労働者不足を補てんしてもダメなのです。生産性の低い仕事はなくすか、改善するか、代替してもらうか、といったことに取組み、生産性を上げることも同時に考えないといけないと思います。
いずれにせよ、難しい問題ですね。皆の知恵と行動力でよい方向に向かいたいものです。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

2018年6月5日 火曜日 15:01 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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