2019年税制改正大綱のメインは「消費増税対策」

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。
今日は2019年の税制改正大綱についてです。

 

■2019年税制改正大綱は「増税対策」

昨年暮れに2019年の税制の方針を示した「2019年税制改正大綱」が発表されました。
本来、税制改正は社会経済の変化を踏まえた上で中長期的な税体系のあり方を示し、その上で「具体的に今年はこうする」という方針を出すものですが、今年は極めて短期的な視点で組み上げられた印象ですね。
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<税制大綱、10月消費増税へ対策厚く 車・住宅など減税>
(2018年12月15日付 日本経済新聞)
『自民、公明両党は14日、2019年度与党税制改正大綱を決めた。19年10月の消費税の税率10%引き上げに伴う反動減対策を重視し、車と住宅の減税措置を拡充した。消費税増税後の単年度ベースで車と住宅あわせて1670億円の減税となる。社会、経済の変化に対応した税制の抜本改革は先送りした。』

2019年の税制改正はずばり「消費増税対策」です。
前回の2014年に消費税を5%→8%に増税した際に起きた駆け込み需要とその後の反動減をかなり警戒しています。特に、景気に大きな影響を与える車と住宅に向けて手厚い対策を講じるようです。

 

■増税対策その1 クルマ

まず車です。
取得時に車の燃費性能に応じて最大3%かかる燃費課税を1%減税します(2019年10月から1年間限定)。そして、毎年かかる自動車税は車種に応じて年間1,000~4,500円引き下げます。
自動車税は排気量と燃費性能によってかなりの差があります。コンパクトなエコカーが税制上有利なことは変わりません。車のエコカー化はますます進むでしょうね。

 

■増税対策その2 住宅

次に住宅です。住宅の減税策は3つ用意されます。

1) 住宅ローン減税の期間3年延長
まず1つめは、「住宅ローン減税」です。現在の適用期間10年を13年に3年延ばします(2019年10月から2020年末までの間に入居する物件が対象)。

これで購入時の2%増税分はほぼ賄えます。

住宅ローン減税は、住宅ローンの年末残高の1%相当分の所得税が入居後10年間にわたって還付されるものです。年間で最大40万円(長期優良住宅なら50万円)、10年間の合計で最大400万円(同500万円)です。
この期間を3年延長するのですが、注意点としては、11年目以降は減税額の計算方法が変わることです。
11年目から13年目の減税額は、購入価格の2%を3等分した額、もしくは借入残高の1%の金額のどちらか低い方になります。

例で見てみましょう。
住宅の場合、消費税は土地にはかからず、建物に対してかかります。
例えば、土地1,000万円、建物1,800万円、合計2,800万円の住宅を購入。そして2,800万円の住宅ローンを組んだとします(金利1%、35年ローン、ボーナス払いなしとします)。

消費税が2%増税になると、建物1,800万円×2%=36万円が増税分になります。

この消費増税分の36万円を11年目以降に3等分して還付を受けるとすると12万円ずつということになります。
なお、2,800万円の住宅ローンの残高は、11年目 2,023万円、12年目 1,948万円、13年目1,872万円。
その1%相当は、それぞれ、20万円、19万円、18万円になります。
そうすると、建物購入額の2%、36万円の3等分の12万円の方が低くなりますから、この場合の11~13年目までの還付額は36万円になりますね。

2) すまい給付金の支給対象の拡大
2つ目は、「すまい給付金」です。すまい給付金は、8%への増税時に負担を緩和するために創設された制度です。現在、年収510万円以下の人を対象に最大30万円が支給されていますが、これが10%増税時には、年収775万円以下の人まで対象となり、金額は最大50万円に拡充されます。

「すまい給付金」は年収に応じて支給額が変わります。自分の場合にいくらになるかは、国土交通省の「すまい給付金」のサイトの「かんたんシミュレーション」で計算してみるとわかります。( http://sumai-kyufu.jp/simulation/kantan/ )

3) 住宅エコポイントの復活
3つ目は2015年に景気対策として実施された「住宅エコポイント制度」が復活する見込みです。
省エネ住宅などの新築や改築時に商品券などに交換できるポイントを付与する制度で、前回は最大30万円相当のポイントがもらえました。住宅エコポイントについては、今後の予算編成の中で詳細を詰めるようです。

つまり、住宅においては「住宅ローン減税の期間延長」で購入時の2%増税分はほぼ賄える上に、年収775万円以下の人には「すまい給付金」ももらえ、さらに建築・購入したのがエコ住宅であれば「エコポイント」までもらえます。

年齢が高くて、ローンが組めないもしくはローン期間が短くならざるを得ない人とか年収が775万円以上で給付金対象外、という人以外はほぼ増税の負担増はありません。

ローン金利の上昇や建築費の高騰、新居入居までの家賃負担などには注意が必要ではありますが、こと消費増税に限って言えば、駆け込みで住宅を購入する意味はほぼなくなったと言ってもいいでしょうね。

■2020年以降の落ち込みは?財政再建は?

「それでも新居への転居の際には家電や家具などを買い替えるからその分の増税負担が心配」という人は、クレジットカードか電子マネーで支払えばいいでしょう。最低でも2%、最大で5%のポイント還元が用意されるようです。

つまり、年収やローンの組み方、その他様々な物品の購入の仕方次第では、消費税10%になった後でも税率の2%の増税分を上回る還付等が受けられます。実質的に「減税」になる場合もあるわけです。

もう至れり尽くせりの大盤振る舞いですね。
この後、予算編成が進むと思いますが、5兆円くらいはあると見込まれる消費増税分の税収増分はほぼ還元される見通しです。そのかなりの部分が増税対策や軽減税率に使われるとなると、もう何のために増税したのだろうか?という素朴な疑問が浮かびます。

19年度税制改正大綱は、消費税率を10%に引き上げるための対策がメインになった感があります。

心配なのは2点。
まず、今回の増税が「実質減税」になるのなら「実質増税」になるタイミングの対策は?ということ。
住宅ローン減税の期間延長は2020年12月31日まで、すまい給付金は2021年12月31日まで、キャッシュレス決済のポイント還元は2019年10月から2020年の東京オリンピックまでです。
東京オリンピック後(2020年7月以降)の消費や2021年以降の住宅購入が実質的に「増税」になるわけです。その時に駆け込みはないか、その後に需要は減退するのではないか? 
とすると、その時にはまた財政出動して「対策」を打つのでしょうか?(きりがないですね)

もうひとつは将来の税制のあり方についての方針が不透明なこと。
増税対策に力が入った一方で、高齢化社会やデジタル社会へ向けての税制の方向性はよく見えないままでした。ネット社会の現在は働き方も消費の仕方も大きく変わってきています。先進各国で議論されている「デジタル課税」に関してもほぼ議論はなかったようです。

今回の消費税10%増税はほぼ行き先が決まっていて財政健全化は先送りになっています。膨らみ続ける「借金」を前に、消費税はどこまで上げていくのでしょうか・・・?

2019年は景気の減速が懸念されていますが、ここまでやったのですからせめて景気が減速しないように祈ります。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

2019年1月8日 火曜日 13:49 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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