MMTって画期的理論?それともトンデモ理論?

今回は、新しいファイナンス理論についてです。
「いくらでも借金していいよ」なんていう経済理論って成り立つのでしょうか?

 

■MMT、画期的理論?それともトンデモ理論

皆さん、「MMT」ってご存知ですか?
今アメリカで論争になっている新しい経済理論です。さて、これは画期的な理論なのか、はたまた「トンデモ理論」なのか、はたしてどうなのでしょうね。
そして、これ、実は日本にも少なからず関係があるのです。
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<財政赤字容認、米で論争激しく  異端「MMT」左派・若者が支持 大衆迎合に利用懸念>
(2019年4月13日付 日本経済新聞)
『「インフレにならない限りは財政赤字をどれだけ膨らませても問題ない」とする「現代貨幣理論(MMT)」が米国で大論争となっている。低成長を脱するために財政を積極活用すべきだとの主張が米民主党左派や若者の支持を集める一方、主流派経済学者からはハイパーインフレのリスクを軽視していると批判が広がる。』

MMTとは「Modern Monetary Theory」の頭文字をとったもので、日本では「現代貨幣理論」と訳されています。

MMTでは、アメリカや日本のように自国で独自の通貨発行権を持つ国家は、政府が国債などで債務を増やしても、その債務を返済するための貨幣を好きなだけ刷ることができるから財政破綻することはない、としています。

財政破綻しないのだから、「政府は財政赤字など気にせずにもっと政府債務を増やしてでも社会基盤整備や医療保険拡充などに財政支出をするべきだ」という話になるのです。

 

■MMTの背景とその理論とは?

このMMTが「大きな政府」を志向するアメリカ民主党の左派勢力に支持されています。
しかし、多くの主流派の経済学者やFRB議長など金融関係の権威から「MMTは異端の経済理論」とか「MMTは経済理論とすらよべない」などと酷評を受けています。

まぁ当然と言えば当然です。これまでの財政の一般常識からいえば、債務を賄うために中央銀行が通貨の発行を続けたらコントロールできないインフレになります。
国債が増発されれば、国債価格は下がるので金利が上がります。金利が上がっても激しくインフレになっていれば誰もその国債を買わないでしょう。そしてその通貨は暴落します。財政赤字、インフレ、金利上昇、自国通貨安となり、国家財政は実質的に破綻します。これが一般常識です。

だから、「財政ファイナンス」と呼ばれる、通貨の発行量を増やして財政を賄うことは財政政策では禁じ手とされてきたのです。

しかし、「MMT」の提唱者であるニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授は、「インフレの兆しが出れば、財政支出を止めればよいだけ」(前出の同記事より)と異論を唱えます。

背景にあるのは、これまで先進各国が取り組んできた「量的金融緩和の限界」です。
先進各国の長期にわたる停滞の原因は、デジタル社会になって設備投資が軽くなったり、世界的にモノが行き渡ったりした結果として起きている「需要不足」であることは確かです。
この「需要不足が経済停滞の原因」ということは衆目の一致するところです。
だから「まずは需要を増やすことが大事!」・・・。←ここまでは金融主流派も同じ考えです。

違うのはここからです。
どれだけ金融緩和をしても企業はお金を借りてまで大きな設備投資をしないし、モノに満たされた消費者は新たな消費をしないのです。結果、量的緩和で供給が増えた大量の通貨は中央銀行に眠ったまま・・・。
だから、ケルトン教授はこう主張します。
・「民間部門による十分な投資が見込めないなら、政府が財政出動で需要を補うべき。」
・「完全雇用と物価安定を達成するには金融政策ではなく、財政政策への依存度を高める必要がある。」
・「インフレ対策としては、財政拡張策にインフレ防止条項を入れておけばいい。インフレの兆しが出れば支出を取りやめる。」
・「MMTで経済の潜在能力が引き出されれば、多くの投資を受け入れる余地を生むのでドルの下落はありえない。」
(2019年4月13日付日本経済新聞より抜粋・要約)

そして、この一見とんでもない理論は、「すでに実証されている」とケルトン教授は言います。
それが「日本の財政政策」なのです。

 

■日本はMMTの成功例?

日本の政府債務残高はすでに対GDP比200%を超えています。
それにも関わらず政府は積極的な財政支出を続け、ついに予算は100兆円超え。財源の大部分は国債発行です。その国債は最終的に日銀が買い上げています。

「これは実質的な財政ファイナンスではないか?」という声は常にあります。しかし、日本はまったくインフレにはならず、金利はゼロ近傍をウロウロしていますし為替も安定しています。

ケルトン教授は言います。
「日本政府と日銀はMMTを長年実証してきた。日銀は日本国債の40%を買い上げ、金融政策で長期金利も抑制している。政府債務が問題なら、実体経済に問題が出るはずだ。」
「日本が減税や歳出増で財政を拡張しても、現時点で供給不足によるインフレに近づいているとは思っていない。そもそもインフレは問題なのか。仮に3~4%のインフレになるリスクがあっても、財政支出で長期停滞から脱却した方がいいのではないか。日本は『失われた20年』といわれるが、それはインフレを極端に恐れたからにすぎない。」(同記事より)

安倍総理は、2019年4月4日の参院委員会で「MMT」について質問された時に、「政府として無駄な支出は戒めていかなければならない。我々がMMTの論理を実行しているということではない。」といったんは否定しましたが、「2012年に私が総裁選挙に出たとき、アベノミクスの原型、大胆な金融緩和について主張したときに、それをやったら国債は暴落し、円も暴落すると言われた。実際は、国債の金利は下がり、円が暴落したわけではない。」(2019年4月5日付 朝日新聞記事より引用)とまんざらでもない様子で答えたとか。

 

■日本だって成功しているのかどうかはまだわからない

政府債務がすでに2200兆円に達しているアメリカであっても、「まだまだ国債出していいよ」という理論は、特に財政出動したい民主党左派にとっては魅力的で都合が良いのでしょう。
ケルトン教授は、前回の大統領選挙に民主党から出馬したバーニー・サンダース上院議員の顧問をしていました。もし、次の中間選挙で民主党が「MMT」を政策として掲げて、そして、もし民主党が勝ったりしたら・・・、今の様相は変わるかもしれませんね。

ただ、MMTには誰もが納得できる論理的な根拠がないので、「信じるか、信じないか」という思想のようなものになっています。こんな状況でMMTを政策にするのはやはり怖いと思います。

国家財政ですから、やってみて「やっぱり違いました」で済む話ではありません。特に日本と違ってアメリカの国債のファイナンスはほとんどが海外です。国債が大量に発行された挙句に財政不安になれば当然買われなくなるでしょう。残るのは金利高とコントロールできなくなったインフレ、そしてドル安です。莫大な負債を抱えて困窮するのは国民です。その罪はとても重いものでしょう。

日本が成功しているのかどうかは本当のところまだわからないのです。
いつ危機的な状況になるかはまだわからない、ということを私たちは忘れてはダメだと思います。

大事なのはファイナンス論ではなく、いかに国の潜在成長率を上げられるか、ということだと思うのです。
政府がその需要を喚起するために財政支出をすることはある程度は必要です。
ただし、「バラマキ」には意味がありません。成長産業部門の市場の整備とか次世代新技術とか新エネルギー開発などなど、国内産業と国民の暮らしの基盤となるものへの需要を生み出して、潜在成長率を上げることこそが重要だと思います。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

2019年4月17日 水曜日 13:25 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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