中古住宅流通+リフォーム市場を活性化するためのポイントはなにか?

前回は、「賃貸派が増えている」という話でした。今回は「中古住宅も増えている」という話です。
「新築・持ち家・一戸建て」が主流だった日本人の住宅への志向も時代とともに変化しているようです。

 

■中古住宅市場が首都圏を中心に拡大している

日本人の住宅との向き合い方が徐々に変わってきているようです。
特に「持ち家」は個人の家計や資産形成に、そして国にとっても経済政策上に影響を与えます。
要注目ですね。

さて、首都圏を中心に中古住宅を買う人が増えているようです。

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<中古住宅市場 首都圏マンション中心に拡大>
(2019年8月24日付 日本経済新聞)
『日本人は住宅の「新築信仰」が根強いといわれているが、マンションを中心に中古市場は徐々に拡大してきている。
新築着工戸数と既存住宅の取引戸数を合わせた住宅流通に占める中古取引の割合は、7~8割に及ぶ欧米には及ばないが、
2013年の15%から一段と高まっている可能性が高い。』

不動産経済研究所などのデータによると、首都圏のマンション市場では、新築と中古がほぼ均衡しているようです。
2018年の首都圏の新築マンションの供給戸数が3万7,132戸だったのに対して、中古マンションの成約件数は3万7,217戸でした。
背景にあるのは、新築マンションの価格が高騰しているのに対して、
利便性が高く状態のよい中古マンションが十分供給されていて、新築に比べて割安感が強いことがあるようです。

団塊世代がリタイアする年代になって、都市部のマンションを売って住み替えするケースが増え、中古マンションの供給が増えています。
そういう中古マンションを、都市部で働いていて利便性を重視する若い世代が買っています。
最近では、中古マンションを安く買って、自分たちの好みの間取りや仕様にフルリノベーションするケースも多いですね。

この傾向は、大阪、京都、神戸など近畿圏でも見られますが、名古屋や福岡など土地の相場が高くてマンション市場である都市部には次第に波及していくものと見られています。

 

■中古+リフォーム推進に国も本腰を入れるか?

政府も、中古住宅取引をより活性化させていくことに本腰を入れ始めているように見えます。

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<中古住宅 取引データ整備 国交省が月次で 景気分析に活用>
(2019年9月11日付 日本経済新聞)
『国土交通省は住宅市場の統計を拡充する。調査回数の少ない中古住宅市場の取引動向について、2020年度にも月単位の指数をつくる。
住宅政策の運営に生かすほか、景気動向分析や金融政策運営の判断材料としても活用してもらう。』

まずは中古住宅の取引データをきちんと把握すべく動き出します。
現在、住宅の統計については、新築は毎月「新設住宅着工戸数」を公表していますが、中古に関しては月次で発表されるようなちゃんとした統計がありません。
せいぜい5年おきに発表される「住宅・土地統計調査」くらいです。
冒頭の記事のような民間企業が行っている中古マンション成約件数データは大都市だけです。

国交省が中古住宅取引を真面目に調査しようとする背景には、中古住宅取引が増えてきて新築統計だけでは住宅市場の動向を把握できない、
というものがあると思います。
加えて、中古住宅取引そのものを積極的に増やしていこうとする意思も感じます。

また、以前からちょこちょこ報道されていますが、政府には中古住宅のリフォームを正確にGDP(国内総生産)に組み込もうという動きがあります。

現在、GDPに反映されるリフォームは、10㎡以上の増築や大規模修繕の時に必要な建築確認申請がなされているものだけです。
高齢世帯の増加に伴ってリフォーム市場は拡大しているし、若い世代の住宅購入で、
「中古住宅+リノベーション」が当たり前になりつつある中、増築を伴わないリフォームやリノベーションもGDPに反映させていこうという考えのようです。

住宅リフォームがGDPに反映されたらどれくらいになるのかは、正確な統計がないのでわかりませんが、
リフォーム市場は全体で8~10兆円くらいはあると言われていますので、それなりのGDPの増額は期待できそうです。

GDPの成長に寄与するということになると国としても力を入れやすくなります。
今後のリフォーム・リノベーションの政策にも変化が出てくるかもしれませんね。

 

■欧米との比較にみる日本人の新築志向の功罪とは?

中古住宅の流通量を増やすことは国の経済政策上も悪いことではありません。
これまで日本の住宅市場では中古は全体の1割強程度で、9割近くは新築でした。

この日本人の「新築信仰」には功罪がありました。
「功」の部分は、新築の経済誘発効果の大きさでしょう。
GDP統計によると新設の民間住宅投資は年間17~18兆円程度です。
GDP全体で見ると決して大きくはありませんが、部材設備の製造や流通、家電や家具への影響なども含めるとすそ野は広いといわれてきました。

ただ、中古住宅が7~8割程度ある欧米と比較すればわかりますが、「罪」と言ってもいい部分もあります。
欧米の主要都市では住宅の資産価値は年数を経てもそれほど落ちません。
住宅そのものに資産価値があるので住宅購入は将来への投資という考えもあります。
資産効果があるので、消費の活性化にもつながっています。家を買うと住宅ローンに追われて消費が減る日本とは違います。

一方、日本の住宅(特に一戸建て)は買った後、価値が減衰します。
特に木造住宅の場合などは、築後20年を超えるともう建物にはほぼ資産価値がないものとされます。
つまり、住宅投資は多額の資金が必要な割に国民の資産形成にはつながっていないのです。

住宅の資産価値の差をもたらす要因のひとつとして、欧米と日本では「宅地開発への姿勢の違い」があると言われています。
多くの欧米の都市は、都市機能を効率よく維持するためにも都市の面積拡大をある程度制限しています。
いわゆる「コンパクトシティ」ですね。一年間の新築の供給戸数を制限している都市も少なくありません。
新築の供給数に制限があるから、既存住宅の価値が落ちないという側面もあります。

かたや日本は宅地が開発され続け、そこにどんどん新築住宅を建ててきました。都市は外へ外へと拡大しドーナツ化しました。
人口が増えていた時代はそれでもよかったかもしれません。
しかし、人口も世帯数も減っていくこれからは、「コンパクトシティ」を目指して今ある住宅ストックを活かしていく方向がよいのではないかと思います。
新たな宅地開発を制限する方向で規制をして、新築の供給をコントロールすれば、住宅の価値は下がりにくくなると思います。

 

■中古住宅流通+リフォーム市場活性化のための2つのポイントとは?

国や行政にやっていただきたいことが2つあります。
まずは前述した通り、新しい宅地開発の規制です。
最近、都市部で中古マンションを中心に取引が多くなり、中古マンションの価格相場が維持されています。
いわば都市部の中古マンションの資産価値は比較的高いわけですが、それは立地の希少価値からくる優位性があるからです。
都心部には新しい宅地がありませんからですね。
新たな宅地開発を制限すれば、既存の中古住宅を買って、建て直すか、リフォーム・リノベーションするかという選択になると思います。

もうひとつは、中古住宅の性能担保への取り組みです。
新築住宅はここ数年で、住宅の基本性能である断熱性や耐久性、耐震性などが著しく向上しています。
すべてとは言いませんが新築住宅の多くは、安心かつ快適に省エネルギーな暮らしができるようになっています。
住宅の性能面において新築と中古との差はとても大きくなっています。
ですから、私は中古住宅のリフォームやリノベーションには、古くなったものを新しくするというだけでなく、
住宅基本性能を向上させる要素を入れ込むことが必須だと思っています。
しかし、住宅の基本性能の重要性というのは、特に若くて立地・利便性重視の人には伝わりにくいものです。

だから、ここは行政が助成をしてでも既存住宅ストックの基本性能向上を推進していただきたいところです。
住宅性能を上げることで、エネルギー消費は減るし、耐久性も耐震性も良くなるので、国民の健康と生命を守ることにもつながります。

これらの中古住宅流通+リフォーム推進の施策がさらなる経済成長にも資する、となることを期待したいですね。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

2019年9月17日 火曜日 17:04 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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