ハイアス・アンド・カンパニーがお届けする、住宅・土木・不動産業界の経営革新情報サイト
HyAS View netでは、ハイアスメンバーがキャッチした業界の最新情報や関連ニュースなどを取り上げたコラムをブログとして公開しています。
皆様のお役に立つ情報をキャッチするアンテナとして、ぜひお読みください。
今回は「キャッシュレス」についてです。日本人は現金信仰がある、って本当にそうでしょうか?
10%への消費増税とともにキャッシュレス支払いのポイント還元が始まりました。
クレジットカードや電子マネー、QRコード決済と様々なキャッシュレスが一気に加速しはじめた感じがします。私は日本において社会がキャッシュレス化していくのは大いに結構なことだし、必要なことだと考えています。ただ、世の中の急激な変化に対しては、必ず懸念を感じる人たちがいるのも事実ですね。
↓↓↓
<キャッシュレス化が生む「支配者」>
(2019年10月20日付 朝日新聞)
『クレジットカードや電子マネー、スマートフォンアプリを使ったQRコード決済――。官民挙げたキャッシュレス化の波が押し寄せている。支払いが便利になる一方で、思わぬ死角も見え始めた。』
この後、記事は、カフェのキャッシュレス支払いだけに特化した実験店舗の例を挙げて、その弊害を伝えます。(以下『』内は同記事より引用)
メリットとしては、
『レジ締めや銀行への入金など1日約2時間分の作業が削減できた。』
一方で、弊害としてコストアップもあると指摘しています。
『一般的にキャッシュレス決済は、代金の約3~5%の手数料を決済事業者に支払わねばならない。せっかく削った人件費も、新たな負担で相殺されてしまうという。』
さらにキャッシュレスについていけない人たちが排除されていると訴えます。
『もう一つはお年寄りを結果的に排除してしまっていることだ。休日、皇居の参観に訪れる高齢者から「なぜ現金が使えないのか」と不満が寄せられるという。』
さらに、これはリスクとしてよく言われていることですが、キャシュレスで個人情報が運営事業者にとられるリスクを指摘します。
『キャッシュレスで便利さを享受する一方で、利用者は決済事業者らにいつどこで、何を買ったかなどのデータを渡している。そのデータがどう使われ、どこに流れているのかに目を光らせないと、いつの間にか個人が「丸裸」にされていることになりかねない。』
『キャッシュレスの「戦国時代」を生きる決済業者は、新たな「ルーラー(支配者)」への道を先に見すえている。』
と、消費者にはよく見えない恐怖をあおります。
『日本のキャッシュレス化は世界と比べると遅れていると言われる。経済産業省によると、現金以外の支払いが占める割合を示す「キャッシュレス決済比率」で日本は20%程度。40~60%台が目立つ世界の先進地より低い。このため、政府は10月の消費増税の景気対策に乗じて、キャッシュレス決済をした場合にポイントを還元するなど、あの手この手でてこ入れを図る。』
と、キャッシュレス推進の背景を簡単に伝えますが、それでも世の中がついていけていないことを指摘します。
『しかし、1日の開始時点で還元を受けられるようになったのは約50万店と、対象とされる中小200万店の4分の1ほどにとどまった。背景には、日本人の根強い現金信仰も挙げられる。』
日本には、『現金信仰』があるからなかなかキャッシュレスが普及しない、としています。
『現金信仰』ですか・・・。みなさんにはそういう信仰ってありますか?
記事を引用した朝日新聞の読者はシニア層が多いと言われていますが、シニア層は皆、キャッシュレスについていけない、情報を取られるのもイヤ、それに現金信仰があるから、といったような思考をするのでしょうか。
いずれにせよ、こういった世の中の変革をよしとしない人たちは、なるほどこういったことが気になるのかと勉強にはなりました。
日本はキャッシュレス化が遅れているのですが、そもそもなぜ世界中でキャッシュレス化が推進されているのでしょう?
まずは、消費者と事業者の利便性の向上がありますね。
キャッシュレスが進んでいる中国では、決済サービスの「アリペイ」のアプリさえあれば、交通機関を利用しての移動からレストランの予約やレジャーチケットの購入、公共料金の支払いに至るまで、ほぼ生活のすべての支払いを済ませることができます。事業者は現金管理をする必要がないし、盗難のリスクもありません。
しかし、国がキャッシュレス化を目指すのは国民の生活利便性だけではありません。社会のデジタル化に対応してグローバルな国家間競争に取り残されないようにするためです。
例えば金融です。
デジタル技術を活用した「フィンテック」の進展で、海外送金や資金決済、小口融資などの分野で様々な新しいサービスが開発されています。「フィンテック」のサービスのベースはお金の動きの電子化、すなわちキャッシュレス化が大前提です。金融は経済の基盤ですから、「フィンテック」の分野で後れをとることは経済後進国になることにもつながりかねない、という懸念があります。
次に、マーケティング。
キャシュレスでの購買行動は電子記録が残ります。いつ、どこで、どんな人が、何を、どれくらい購入しているのか、こういった購買情報をビッグデータとして蓄積して分析することで、的確で無駄のない仕入れと販売が可能になります。また、より確実にヒットするであろう新商品や新サービスを開発することが出来ます。つまり、キャッシュレスの進展が小売事業者の競争力を左右するようになりつつあります。
国家の運営上も、キャッシュレスによりマネーの動きを透明化することは大いに意義があります。アンダーグラウンドなマネーの排除や記録に残らない現金取引による脱税などを防ぐことが出来ます。
このように、キャッシュレス推進は、消費者にとっても事業者にとっても国にとっても様々なメリットがあります。
しかも、特に日本は、労働者人口が減少していく中、国を挙げて社会の生産性を向上させないといけないという課題があります。こういった背景から、日本もキャッシュレス決済の普及を国策として掲げたわけです。消費増税と来年の東京オリンピック・パラリンピックを契機にキャッシュレス化を一気に推進しようとしているのです。
日本はすでにデジタル社会への対応が遅れていて、様々な分野で「GAFA」に代表されるプラットフォーマーの後塵を拝している状況です。さらにキャッシュレス化でも後れを取ると日本企業はもう世界で闘えなくなってしまうのではないかという危機感が、経済界はもとより、国にも当然にあります。
「昔は良かった」的な善良なノスタルジーにひたるのもいいですが、そうこうしているうちに、すごいスピードで進化している世界との勝負に負けてしまいかねません。
それでも、「日本には現金指向がある」と言われます。本当でしょうか。
ただ単に、これまでクレジットカードや電子マネーなどが使えないお店が多かっただけのようにも思います。あるとすれば、それは消費者側にではなく、お店側でしょうし、それは「信仰」というより手数料支払いや所得を完全に補足されることへの「抵抗」だったのではないでしょうか。少なくとも若い世代には「現金信仰」があるとは私には思えません。
ただ、そういう社会システムの変化への抵抗は日本に限らず、諸外国だって多かれ少なかれあったでしょう。もともと、ほんの50年前くらいまではほとんどの支払いは世界のどこだって現金中心だったのですから。
例えば、今、イギリスは7割以上がキャッシュレスですが、10年前くらいまでは6割以上が現金でした。
2012年のロンドンオリンピックを契機にして政府がキャッシュレス化を強烈に主導したそうです。
キャッシュレス化が進んでいるカナダでもアメリカでも北欧諸国でも、最近では中国やインドでもキャッシュレス化は自然に進んだわけではなく、ある程度国が推進してきました。
今回、日本も力技でやろうとしています。それは国際競争力を維持する上で必要だからです。
情報データの流用防止は運用管理のルールを作ればいいだけです。なんとなく変化に背を向けて、抵抗ばかりしているような姿勢はよくないでしょう。すでにフィンテックで遅れを取り、マーケティングで競争力を落としている日本企業をそのまま放っておくわけにはいきませんから。
将来の日本を担う子供たちに向ける顔がありませんよね。変化を恐れずに行きましょう。
今回は以上です。次回もお楽しみに。
2019年10月29日 火曜日 15:52 投稿者:admin
カテゴリ:時事所感