大企業は交際費の損金算入の特例廃止へ 飲食業界への影響は?

まもなく来年の税制改正大綱が発表されますね。
法人に関する税制に動きがあるようですよ。

 

大企業の交際費、損金算入の特例措置が廃止へ

来年から交際費の扱いが少し変わるようです。
企業がお取引先を接待するための飲食代や贈答品などの購入代は交際費として扱われます。
この交際費は、税法上は経費として認められない、というのが原則です。

ただ、飲食代については大企業と中小企業でそれぞれ経費として認める「交際費の特例」があります。
この、交際費の特例措置の対象から大企業が外れるようです。
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<大企業の交際費、減税措置廃止へ 経済活性化の効果薄く>
(2019年11月9日付 日本経済新聞)
『政府・与党は大企業の交際費支出に適用している減税措置を今年度末に廃止する方向で調整に入る。2014年に企業間交流を通じて経済を活性化する狙いで導入したが交際費は小幅増にとどまっており、大きな効果が上がっていないとの見方が出ていた。廃止で浮く財源は、新規分野への投資を後押しする減税などに振り向ける方針だ。』

現在、交際費の特例は、接待などで使った1人あたり5,000円を超える飲食代のうち半額を経費とすることができます。中小企業においては飲食代の総額の半分か、年間800万円のどちらか多い方を損金に算入できます。

中小企業に対しては、引き続きこの特例措置が延長されるようですが、資本金1億円を超える大企業はこの対象から外れることになります。来年度からは、大企業の交際費はすべて経費として損金算入ができなくなるのです。

さて、飲食業界への影響はどうなのでしょうか?

 

■大企業に交際費を使ってもらって飲食業を下支え、が狙いだったが・・・

実はこの「交際費の損金算入」は、2014年までは中小企業にだけ認められていて、大企業には認められていませんでした。

それが2014年の税制改正で大企業にまで認められるようにしたのは、2014年4月の消費増税(5%→8%)にともなう消費需要の落ち込みを和らげる狙いがあったからです。

交際費は、バブル華やかなりし1990年頃には6兆円を超えていましたが、その後の景気の後退の影響を受けてどんどん減少、2011年には3兆円を割り込むようになっていました。
この交際費の減少が、日本の飲食業の経営を厳しくさせた一因であるのは間違いないでしょう。

零細企業が多い飲食業は約8割が赤字だと言われています。
2014年に消費増税に伴う消費の落ち込みを抑える施策のひとつとして、交際費の特例の対象を大企業にまで広げました。交際費をもっと使ってもらって、収益力の弱い飲食業・サービス業などを下支えする狙いがあったわけですね。

この時、私はこのコラムでこのテーマを取り上げて、このように書きました。
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『国税庁の統計によると、2011年度の交際費総額2.8兆円の内、大企業が使っているのはわずかに6千億。これ今は全額損金不算入ですね。残りの2.2兆円もの交際費を使っているのは資本金1億円以下の中小企業。このうち損金不算入は18%だけ。残り82%に相当する約1.7兆円は損金としています。
もし、来年の税制改正で大企業も交際費を損金に算入できるようになれば、課税所得を減らすことができるわけですから、間違いなく今よりは交際費を使うようになるでしょう。飲食代が増加することになると思います。飲食業界にとっては朗報ですね。』(ハッピーリッチコラム177号 2013年10月15日付)

ハズレました。
実際には大企業は交際費をあまり使いませんでした。
そして施行から6年で廃止ということになりました。

 

■接待がなくなった大企業、政府の狙いを体現している中小企業

日経新聞の同記事によると、2017年度に、大企業が支出した交際費の総額は5,603億円。そこから損金に算入された額は800億円くらいでした。2014年度に比べてわずか0.8%増にとどまっています。

『企業は経費の抑制を続けており、減税措置を理由に交際費を増やすような環境にはないのが実情だ。』(日経新聞記事より)
すでに大企業には「接待で収益機会を増やす」という概念がなくなっているのでしょう。

一方、中小企業は使っています。2017年度に支出した交際費は2兆9662億円。このうちのおよそ9割が特例措置で経費として損金算入されました。

政府は、交際費の特例の延長を要望する理由として次の2つをあげています。

・飲食店などでの接待を促し、法人企業の収益機会を増やすこと。
・より多くの飲食店を利用することにより、消費の喚起を促すこと。

ある意味、中小企業は政府の狙いを体現していると言えますね。
国内外食産業の市場規模は約25兆円です。そのうち法人利用が3兆円くらいあるということです。
これがしぼんでしまったらそれは大変なことになるでしょう。
だから中小企業に対してはこの特例措置を維持・延長します。中小企業まで廃止してしまうと外食産業にも、中小企業の経営にも大きな影響を与える恐れがあるでしょうからね。

 

■代わりに大企業には新分野への投資を優遇

政府は「大企業にもっとお金を使ってもらいたい」と考えています。
交際費は使ってもらえなかったので、代わりにというわけではありませんが、革新的な事業など新分野への投資を促すようです。
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<スタートアップ出資、1億円以上で減税 大企業の投資促す>
(2019年12月7日付 日本経済新聞)
『政府・与党は大企業が設立10年未満の非上場企業に1億円以上を出資したら、出資額の25%相当を所得金額から差し引いて税負担を軽くする優遇措置を設ける。自社にない革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップと協業し、新たな利益の源泉となるイノベーションを起こしやすくする。大企業が自社にため込んだお金を活用するよう促す狙いもある。』

大企業のお金の使い方としてはこっちの方がいいでしょうね。
産業構造の新陳代謝にもなりますし、政府が掲げる成長戦略にもつながっていくでしょう。

大企業の交際費の特例の廃止もこのスタートアップ投資の優遇も、間もなく発表される2020年度税制改正大綱に盛り込まれる見通しです。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

2019年12月10日 火曜日 16:38 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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