残業規制だけをしても残業は減らない

今回は「働き方改革」についてです。まもなく中小企業でも残業規制が始まります。残業はなかなか減っていないようですが・・・。

 

■残業規制があっても残業は減っていない

「働き方改革」が国策となってからかなりの時間が経ちました。
まずは残業を規制するところから始まりましたが、「残業している人は減っていない」ということがニュースになっています。
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<「違反」残業なお300万人 月80時間超>
(2020年1月20日付 日本経済新聞)
『大企業の残業に罰則付き上限が導入された2019年4月以降も月80時間超の残業をしている人が推計で約300万人に上ることが総務省の調査で分かった。労務管理の徹底でサービス残業があぶり出され、部下の仕事量が減ったしわ寄せで管理職の残業が高止まりしている。』

いわゆる「残業規制」は昨年4月から始まっていて、従業員の残業時間は、原則、月45時間、年間で360時間を超えてはいけないことになっています。(特別な場合で、月平均80時間以内、年間720時間)。
罰則規定もあって、30万円以下の罰金、もしくは6か月以下の懲役です。

ただ、今のところ先行して始めた大企業では月80時間超の残業をしている人が約300万人以上もいるとのことです。これは全雇用者の5%に当たるということですが・・・、絶対もっといますね。
今年2020年4月からは中小企業にも適用範囲を広げることになっています。中小企業で働く人は全雇用者の8割以上ですからね。来年の同じ調査ではどんな結果が出ることか、と今から心配になります。

 

■そもそも「働き方改革」の目的は何だったか?

「残業を規制しても労働時間が減っていない」ということがニュースになっているわけですが、それはそうでしょうね。そう簡単には労働時間は減りません。

従前と同じ業務量を、やり方を変えることなく時間だけ減らすのは無理です。強引に時間だけ規制しても、隠れサービス残業を増やすだけですよね。

管理職にしわ寄せが行っているとのことですが、「労働時間を減らせ、人は増やすな、成果も落とすな、やり方は自分で考えよ」と言われたら・・・、病みますね。

そもそも「働き方改革」は、「脱時間給」だったはずです。
報酬は、「時間」ではなく「成果」ではかりましょう、ということです。

労働時間が減っていないというニュースではありますが、働き方改革は労働時間を減らすことが目的ではありません。
限られた時間の中で、より多くの成果を上げられるようにしましょうということです。
つまり、生産性の向上ですね。

 

■なぜ生産性向上が必要なのか?

なぜ、生産性の向上が必要なのか。
いうまでもなく、日本は少子化と高齢化と人口減少がこれからさらに加速するからですね。

国土交通省の資料に、1970年と2050年の日本の人口構成についての資料がありました。
それによると、総人口は1970年と2050年はともに約1億人ですが人口構成が大きく変わります。
(出典:1970年総務省統計局「国勢調査」 2050年国土交通省国土政策局推計値)

まず65歳以上の高齢者。
1970年 733万人(総人口比7.1%) → 2050年 3,841万人(総人口比37.7%)

次に生産年齢人口(15歳~64歳)。
1970年 7,157万人(総人口比69.0%) → 2050年 5,275万人(総人口比51.7%)

高度経済成長期だった1970年は、国民の約7割が働き手でした。
それが2050年には約5割になってしまいます。その分増加するのが高齢者です。1970年とはまったく違った国の姿がそこにはありますね。

より少ない働き手で、より多くのGDP(国内総生産=付加価値の合計)を生み出していかないと、国民の約4割を占めることになる高齢世代を支えることが出来ないわけです。

だから一人一人の働き手が限られた時間の中で、より多くの付加価値を生み出せるようになる、つまり、生産性を意識して仕事をすることを当たり前にしていこう、そういう社会を目指すという国の意思表示が「働き方改革」だと私は理解しています。

また少子高齢化社会では、介護や子育てをしながら限られた時間内で働く人や在宅や遠隔地で働く人も増えます。
会社に定時に来て定時で帰る、という働き方だけでなく、多様な働き方を可能にして一人でも多くの労働力を活用できる社会にならないといけません。そのためにも時間ではなく成果で仕事をはかることを常識にする必要があるわけです。

そもそも労働とは「時間を切り売り」するものではなく、「付加価値」を提供するものです。
これからの企業と働き手にとって大事なのは生産性を上げることです。働き手の労働時間あたりのアウトプットの質と量を上げることです。

生産性高く、より質の高い仕事のアウトプットを出すことが出来る、いわゆる「ハイパフォーマー」の人は、もっと仕事をしてもっと稼ぐ、ということをしてもいいわけです。

働き方改革はいろんないきさつがあって、たまたま残業規制から始めただけです。
生産性を上げずに労働時間だけ短縮したら、付加価値は減ります。会社の利益が減るから、従業員の給料も減ります。国民は豊かになれないし、国の税収も落ちます。
誰も幸せになりませんね。

働き方そのものを変えないといけないのです。

 

■生産性向上は組織全体で取り組まねばならない

今はまだ生産性を上げられていない企業が多いのでしょう。結果として、部下に残業を頼めない中間管理職にしわ寄せがいってしまっているようです。

業務の生産性向上は職場全体で取り組まないといけません。
生産性の上げ方をみんなで覚えないといけません。
かいつまんで言うと、まず、組織的にやるべき仕事を明確にして無駄な仕事を減らす。そしてやるべき仕事の目的とゴールを明確にし、何が成果かをはっきりさせる。ゴールに向けてやるべきタスクを明確にして、タスクの進め方をスケジュールに落とし込む。そして組織全体で時間管理をして、改善度合いを測る、といった感じでしょうか。

そういう生産性の高い働き方が出来る人はこれからの社会で貴重な人財として重宝されるでしょう。仕事の生産性はスポーツと一緒で、意識を変えてトレーニングを続けることで上げることが出来ます。私もまだまだですが、みんなで頑張りましょう。

大変なのは企業です。
生産性向上に取り組まない企業は、付加価値が低い、つまり従業員一人当たりの利益が少ない企業ということになります。従業員はそういう企業で働いていても稼ぐことができません。そういう企業は、いずれ働き手から選ばれなくなります。これから人財の奪い合いになる日本において生産性の低い企業は致命的なのです。

残業させている企業をどう罰するかとか、企業側もなんとかバレなければいい、という話ではありません。

社員を教育するとかITを導入するとか、生産性の高い働き方へ改革していくことに真剣に取り組まないといけません。いずれは、そうして生産性を向上させて、働き手にもその果実を還元できるような企業が生き残ることになるのでしょう。

残業させている場合ではありませんね。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

2020年2月4日 火曜日 18:15 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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