消費増税の反動?GDPが年率6.3%減

今回はGDP速報からみる日本の経済動向についてです。
消費税がやっぱり「悪者」?

 

■消費増税の反動減、GDP年率6.3%減

2019年10月~12月のGDPの速報が発表されました。
「想定以上」とか「想定の範囲内」とか、意見は割れていますが、大きなマイナス成長になったことは確かですね。
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<GDP年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス 10~12月>
(2020年2月17日付 日本経済新聞)
『内閣府が17日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.6%減、年率換算で6.3%減だった。10月の消費増税や大型台風の影響が出て、内需の柱である個人消費が落ち込んだ。世界経済の減速で自動車や機械などの輸出低迷も続き、日本経済は5四半期ぶりのマイナス成長に沈んだ。』

GDPが前年対比でマイナスになるのは5四半期ぶりで、年率換算6.3%のマイナスは前回の消費税率引き上げ直後だった2014年4~6月期の7.4%マイナス以来の大きさ、とのことです。

GDPがマイナス成長になった一番の要因は、やはり2019年10月に行った消費増税でしょうね。
GDPのおよそ60%近くを占める個人消費が前期比2.9%減でした。前の四半期(2019年7~9月)では自動車や家電などが好調で個人消費はプラスでした。つまり、駆け込み需要があって、今回その反動で下がったということでしょう。
住宅投資も同様で、2四半期ぶりにマイナス(2.7%減)になりました。

政府は、消費増税に加えて大型台風と暖冬も影響があったとしています。
企業の設備投資も3.7%のマイナスでしたので、米中貿易摩擦の影響もあったでしょうね。

 

■2020年1~3月で復活するシナリオの現実性は?

政府支出の1.1%増以外、消費も投資も貿易収支もすべてマイナスでした。
特に、投資(前期比3.7%減)と消費(同2.9%減)は想定以上の落ち込みと言っていいのではないでしょうか。

ただ、政府としては今回のマイナスは「想定内」として、「次の2020年1~3月期には再び成長軌道に戻る」と言っていました。

しかし、この停滞はもうしばらく続くかもしれません・・・。
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<世界の企業、回復急減速 5%増益に鈍化 1~3月予想 新型肺炎が打撃>
(2020年2月17日付 日本経済新聞)
『新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が世界の企業業績に影を落とし始めた。純利益は2019年10~12月期に前年同期比16%増と5四半期ぶりにプラスに転じたものの、20年1~3月期は5%増と急減速する見通し。中国は16%減益となる予想だ。日本は製造業を中心に下方修正が相次ぐ。』

おもに新型コロナウイルスの影響ですね。中国経済は完全にストップしています。
昨日、アップルも中国経済の停滞により、2020年1~3月の売上が未達になると発表しました。

企業業績が世界的にマイナス方向に向かっています。
これらを受けて、ネットなどでは「こんなタイミングで消費増税をした政府が悪い」という論調も多く見られますね。

 

■消費を減らしているのは誰?

間違いなく今回のGDPのマイナス成長に消費増税の影響はあったでしょうし、その落ち込みの程度は想定以上だったと思いますね。

政府は、「消費の落ち込みは前回増税時(2014年4~6月期)の4.8%よりも少ない」としています。
しかし、今回は、消費増税後の消費の落ち込みを抑えるためにキャッシュレス支払いのポイント還元などの政策投入を行っていたわけですが、それでも2.9%も落ちたわけです。
だから、夏のオリンピック後にキャッシュレスのポイント還元が終わった後には、さらに消費が落ち込むかもしれませんね。

まーしかし、考えてみれば今の日本では何もしなければ消費は漸減していくでしょうし、それは仕方のないことかもしれません。
日本は、年々、生産年齢人口(15歳~65歳)は減っていて、一方で年々高齢者が増えています。

消費税を上げた時に、消費を減らすのは現役世代よりも高齢世代の人たちです。
もっというと高齢世代の「選択的支出」です。

「選択的支出」とは、車や家電、旅行や外食代、衣装代といった支出のことで、いわば「ぜいたく支出」です。一方、食費、医療費、光熱費、家賃など生活に必要不可欠な支出のことを「基礎的支出」といいます。

今回はまだわかりませんが、前回(2014年4月)の消費増税(5%→8%)の後の2015年度の世代別消費の変化を見てみます。

2015年の「家計調査 世帯属性別家計収支 二人以上世帯」(総務省統計局)によると、
2015年は消費全体では前年対比‐2.3%落ちています。

最も消費が落ちている世代は、「60歳~69歳」で‐3.3%。一番落ちていない世代は「40歳未満」で‐0.7%です。中でも、60歳~69歳の世代の選択的支出が‐3.4%と一番多く減っています。

それはそうでしょうね。
子育て世代は消費税が上がったところでそれほど消費を減らすことは出来ないでしょう。
消費税が上がろうが下がろうが子供は年々大きくなります。習い事はするし、進学もするし、いつもお腹は空いています。消費税が上がったから財布のひもを締める、というのはシニア世代。シニア世代は、車や家電の買い替えを増税前に済ませたり、増税後は旅行や外食を控えたりするのでしょう。

「消費税を上げたら、高齢者の選択的支出を中心に消費が落ちた。だからGDPが落ちた。だから消費税が悪い。消費税下げろ、とか消費税廃止しろ」、という論理は少々短絡的ではないかな、と思います。
消費税を増税しなかったり、廃止したりしたら、これから増え続けるであろう高齢世代の年金や医療・介護の財源はどうするのでしょう。

「金持ちや儲けている企業から取れ」という声もありますが、すでに高額所得者への所得税は年々実質増税になっていますし、相続税も上がりました。企業への法人税を上げたらそれこそ経済的な打撃が大きいでしょう。

GDPの6割近くが消費ですから、消費動向にナーバスになるのはわかりますが、そもそも日本の人口構造上、消費はなかなか増えないのです。必ずしも消費税を下げても消費が増えるとは限りませんしね。

 

■消費税「だけ」が消費を落ち込ませているわけでもない

こういう記事を見ると、消費税だけが消費を落ち込ませているわけでもないのだろうなと思います。
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<衣料・百貨店、4割下方修正 19年度純利益 高齢化対応で遅れ>
(2020年2月16日付 日本経済新聞)
『衣料品メーカーや百貨店の業績下方修正が増えている。2019年度は全体の4割に相当する企業が純利益の会社予想を引き下げた。主要企業の今期純利益の合計額は16年度に比べて4割近く減少する見通し。消費増税や暖冬といった一過性の要因だけではなく、顧客の高齢化やデジタル対応への遅れによってビジネスモデルそのものが揺らいでいる。』

老舗の大手アパレルメーカーとかそれを販売している百貨店の業績が減っているのは、消費増税や暖冬だけが原因ではないのではないか、という記事です。
20~40代の若い世代の消費者はそもそも高額なファッションやブランドにあまり価値を感じていません。
ブランドよりも、ユニクロとかZARAとかしまむらで十分だし、買う場所も百貨店ではなくてアマゾンとかZOZOとかです。

高級ブランドを好む層は高齢化が進んでいるわけですから、この売上の減少は構造的な問題です。消費税や気候変動や新型ウイルスに要因を求めるよりも、業態やブランドをいかに時代にあった形に革新していくかの方が大事でしょうね。

今の若い世代はあまりクルマに乗らないし、飲みにもいかない。持ち家よりも賃貸だし、ショッピングはアマゾンや楽天、ZOZO、もしくはメルカリです。
消費税を下げたら、若い世代は車を買うのでしょうか、飲みに行くでしょうか、デパートで服を買うようになるのでしょうか。

売上が落ちている会社、景気が減速している業界や地方・地域は確かにあります。ただその本質的な要因は何なのか、なにが本当の問題かをよく考える必要はあるでしょうね。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

2020年2月18日 火曜日 16:28 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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