アメリカ、失業率14.7%のインパクトは?

今回はアメリカと日本の雇用の仕組みの違いについてです。
日本もアメリカのように失業率が一気に上がってしまうのでしょうか?

 

■アメリカの失業率が14.7%

この数か月間、新型コロナの影響で世界中の経済が止まりました。
その影響が最も大きかった国のひとつ、アメリカでは失業率が過去最大になりました。
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<失業率14.7%、戦後最悪>
(2020年5月9日付 日本経済新聞)
『労働省が8日発表した4月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、失業率が戦後最悪となる14.7%に急上昇した。就業者数も前月から2050万人減り、過去最大の減少だ。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動がほぼ停止した影響が響いた。米政権は2020年後半からの回復を見込むが、職場復帰が遅れれば経済は長期停滞のリスクがある。』

失業率14.7%というのは戦後最悪の状態です。失業者数は前月の714万人から一気に2,308万人に急増。なんと3.2倍もの増加です。
特に影響が大きかったのが、飲食業(549万人減)と小売業(211万人減)だったようです。お店を開けられないのですから店舗型ビジネスが厳しいのはよくわかります。まさに「コロナ不況業種」ですね。

 

■今回の失業の78%は「レイオフ」

失業率は景気のバロメーターです。普通は失業率が一気に上がると、
そのまま不況となり、なかなか回復できないものです。
2008年のリーマン・ショックの時には失業率が経済危機の前の水準に戻るのに7年かかりました。
しかし、今回もそうなるかというと、まだそこはわかりません。
というのも、後日報道された内容によると、今回の失業者の大半は「恒久的な解雇」ではなく、「一時的な解雇」とのことです。いわゆる「レイオフ」が78%です。経済が回復すればすぐに職場に復帰してもらうというものですね。
リーマン・ショックの時は「恒久解雇」の方が圧倒的に多く、レイオフはわずか10%前後でした。

つまり、多くの事業者が、今の不況を一時的なものと考えているということだと思います。

だから、戦後最悪級の失業率が発表されたにも関わらずアメリカの株価はむしろ上昇しています。
今回、経済の落ち込みは、リーマン・ショック以上で、1929年の大恐慌なみの不況になるという声もありますが、「実は回復は早いのではないか」と受け止めている人が多いということだと思います。

 

■雇用者を守るのは国か企業か

アメリカは、失業率が急激に上がりました。EU諸国でも同様に失業率が上がると思います。

しかし、日本はそんなことにはなりません。
日本の4月の失業率は5月29日に発表されます。QUICK調査によると、
3月が2.5%だったのに対して、4月の予測中央値は2.7%(予測レンジは2.5%~2.9%)という見通しが伝えられています。

これはコロナの被害状況が日本は比較的軽微だったから、というだけではなく、そもそも雇用の仕組みが欧米と日本では違うからですね。

日本には解雇規制がありますから、正規雇用の社員を簡単には解雇できません。だから正社員のほとんどは今も雇用が継続されていますし、今後も急激に減ることはありません。

日本は企業が従業員を失業から守るクッションになっているとも言えます。
残業代を減らしたり、ボーナスをカットしたりすることなどで人件費を調整することはありますが、大量に雇用をカットするようなことはしません。

アメリカは雇用そのものを景気の調整弁に使っています。アメリカの企業は人件費を簡単に削れるために存続がしやすくなっています。そして、国が個人の失業に対する手当を負担することで企業を守っているわけです。

日本とアメリカ、どちらがいいとは言えませんが、仕組みが違うのです。

そんな日本でも、非正規の契約社員やパート、アルバイトで雇用を切られた人が1万人を超えたといった報道がありました。確かに非正規雇用の人たちは解雇規制の外にいます。

だから、日本企業であっても不況の時には非正規雇用の契約を止めることはあります。
ただ、日本は非正規雇用に対して批判的な報道が多くて、「非正規雇用がどんどん増えている」というような印象を持っている人が多いかもしれません。確かに非正規雇用は増えていますが、それ以上に正規雇用は増えています。

2019年の雇用状況は以下の通りです。
正規雇用 3,458万人、非正規雇用 2,162万人、全就業者数 5,620万人

今から5年前の2015年は、
正規雇用 3,278万人、非正規雇用 1,985万人、全就業者数 5,263万人

ですから、
2015年→2019年で、正規雇用180万人増、非正規雇用177万人増と、
非正規雇用以上に正規雇用も増えています。

今回のような経済危機のたびに、「派遣切りだ」とか「非正規雇い止めだ」と企業に批判が集まりますが、そこは企業というより国が国民を支える仕組み(セーフティネット)を必要に応じて整備しておくべき話だと思います。

なんでもかんでも企業が守るには限界がありますから。

 

■萎縮せずにチャレンジを

企業に負担をさせる仕組みは、こういった危機の時に備えて日本の企業が
非正規雇用を増やしたくなる動機にはなりえます。

この不確実性の時代に世界の企業と戦う中で、日本企業がすべての従業員の雇用を守り続けるということが難しくなりつつある現実は認めないといけないと思います。

大企業でも厳しいのに、ましてや経営基盤がぜい弱な中小企業やベンチャー企業は体力が持ちません。その分、非正規雇用とかフリーランスとして働いている人たちに対しても、より安心できるセーフティネットの整備・拡充は必要でしょう。

怖いのはこのまま社会全体が委縮してしまうことです
このコロナ禍の中、企業も人も今は保守的にならざるを得ない状況です。
ただ、人は増やさない、店舗も減らす、投資も減らす、といった具合に全体が萎縮してしまって、誰もチャレンジしない社会になってしまうのは避けたいところです。

チャレンジのない社会では、イノベーションは起きませんし、経済の躍動感もありません。衰退が待っているだけです。

中小企業が多い日本経済の魅力は多様性だとも言われています。
守りも備えも大事ではありますが、チャレンジすることも大事です。

コロナで生き残ったのは大手企業だけ、というのではつまらないですからね。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年5月26日 火曜日 17:49 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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